団体戦で見えたフィギュアの最新情勢。カナダ優勝の理由と日本5位の意味は?

団体戦で見えたフィギュアの最新情勢。カナダ優勝の理由と日本5位の意味は?

 2月12日、平昌オリンピックのフィギュアスケート団体戦が終了。日本チームは4年前のソチオリンピックと同じ総合5位に終わったものの、それなりに収穫のある試合となった。

 今回、過去の成績によって団体戦に出場したのは、カナダ、OAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)、アメリカ、日本、中国、イタリア、フランス、ドイツ、イスラエル、韓国の10か国。

 SPの後、トップ5か国がフリーに進出。SP、フリー合計3日間に渡って競われた。

フィギュアの朝スタート開催には無理がある!?

 2月9日初日は、男子とペアのSPから始まった。

 朝の10時から開始というこれまでにないスケジュールだったせいか、男子は全体的に不出来な演技が続出した。

 カナダのパトリック・チャンは、最初の4トウループで転倒し、次の3ルッツに急遽2トウループをつけてコンビネーションにしたものの、最後の3アクセルでも転倒した。

 アメリカのネイサン・チェンは、出だしの4フリップ+2トウループを着氷したが、次に予定していた4トウループが2回転になり、3アクセル転倒と、今シーズン最悪の演技になった。

「開始時間が早かったことは、いくらか影響があったのかもしれない。準備はできていたと思ったけれど、(ジャンプへの入り方で)ちょっと焦りすぎました」と演技後コメントした。

 ロシアのミハィル・コリヤダは冒頭の4回転を2種類とも転倒し、アクセルが1回転半にパンクして最後まで持ち直すことなく演技を終えた。

安定した強さを見せつけた宇野昌磨。

 最終滑走だった宇野昌磨は、出だしの4フリップこそステップアウトになったものの、素早く持ち直して後半の4+3トウループ、3アクセルをきれいにきめた。

 前の選手たちの失敗が続いたことで影響があったかと聞かれた宇野は「ネイサンとコリヤダ選手を見ていましたが、(彼らが)あんな失敗をするところは初めて見た。自分も失敗するのかなと思ってフリップを跳んだけれど、思ったよりこらえることができました」と淡々と答えた。オリンピックだから特別な緊張はなかったという。

 そして、ネイサンらより上にいったことで個人戦への自信がついたかと聞かれると「個人戦と団体戦は全くの別物」と冷静に答えていた。

 最終的には、宇野が103.25で1位、大きなミスなく滑ったイスラエルのオレクシイ・バイチェンコが88.49で2位、2度転倒したパトリック・チャンがそれでも3位というSPの結果となった。ネイサン・チェンは4位、ミハル・コリアダは10人中8位だった。

須崎&木原ペアもベスト演技で日本3位スタート。

 男子の後に行われたペアSPは、日本代表の須崎海羽&木原龍一がほぼノーミスの演技を滑りきって自己ベストスコアを手に。

「このオリンピックという大きな舞台で、今シーズン一番いい演技ができた」と、木原は嬉しそうにコメントした。

 10チーム中8位とはいえ、上の7組はGP大会で表彰台に上るランクのペアばかり。勝てるチームにはしっかり勝って日本チームに貢献した。

 1位になったのは、ロシアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミル・モロゾフだった。

 ラフマニノフ『ピアノ協奏曲2番』の大曲の調べにのって、貫禄のある演技をノーミスで滑り切った。カナダのミーガン・デュハメル&エリック・ラドフォードが2位、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ブルーノ・マッソが転倒1回で3位という結果になった。

 団体戦初日は、カナダ1位、アメリカ2位、そして日本は3位という好調なスタート。

 順位的には日本は男子1位、ペア8位で、男子8位ペア1位だったロシアと同点。タイブレークは、両方のスコアの合計で決定された。

第2日目 女子とアイスダンスで見えた大勢。

 1日間をおいて2月11日、今度は女子SPとアイスダンスのショートダンスが行われた。

 宮原知子は『SAYURI』のSPですべてのジャンプをミスなく降りたように見え、本人も嬉しそうにガッツポーズも出た。だが68.95と思いのほか低い点が出ると、キス&クライに座っていた宮原の表情が凍り付いた。

 冒頭の3ルッツ+3トウループで、どちらのジャンプも回転不足の判定をとられていたことが判明。

「演技自体は良かったので点数とかは悔しいけれど、スタートとしてはまずまずです」

 と演技後にコメントした。

宮原のスコアが伸びなかった理由とは?

 自身も元スケーターで米国の人気スケートライターであるジャッキー・ウォンは、宮原の判定についてこうコメントした。

 まずコンビネーションジャンプについては、

「自分には問題なく見えたが、判定用のモニターで見たわけではない」と控えめに、疑問を提示。

「ただ全体的に、この大会の女子の判定は正確だという印象を受けていた」と付け加えた。さらに、宮原のコンポーネンツが伸びなかった理由について、「怪我から回復してから以前よりも少しリンクの使い方が小さくなった印象。それがコンポーネンツに影響したのでは」と分析した。

貫禄を見せつけ、堂々トップに立ったメドベデワ。

 トップに立ったのは、エフゲニア・メドベデワである。

 これまで見せたことのない厳しい顔でリンクの中央に立ち、しばらく目をつぶってから演技を開始。ステップシークエンスの最後でほんの一瞬バランスを崩したものの、後半のジャンプはすべて完璧に跳んだ。

「ものすごく集中しました。少し集中しすぎていたかも。もう少しリラックスすればよかったかもと思っています」と演技後にコメントして笑顔を見せた。81.06を獲得して自分が持っていた歴代最高スコアを更新した。

 宮原はカロリーナ・コストナー、ケイトリン・オズモンドに続いて4位だった。

アイスダンスの村元&リードは5位と、十分に健闘!

 アイスダンスのショートダンスでは、カナダの、テッサ・バーチュ&スコット・モイアが1位となった。

 日本の村元哉中&クリス・リードは、最後までスピードの落ちない演技で10組中5位と好成績をおさめていた。「落ち着いて最後まで滑ることができました」と村元が安堵したように語っていたのが印象的だった。

 SP4種目すべてが終わった時点で――日本は全体4位で無事フリーへ進出を果たすことになった。

ペアフリーはカナダが堂々の1位を獲得。

 2日目の終わりに、ペアフリーが行われた。

 進出したトップ5カ国のうち、須崎&木原が最初の滑走だった。

『ロミオとジュリエット』のプログラムで、冒頭のサイドバイサイド3ルッツは決まったものの、その後スロウジャンプで2度とも失敗。5組中5位に終わった。

「最初だったのでチームジャパンに勢いを付けたかったが、技の1つひとつで練習でやっていたものが出せなくて、すごく悔しい」と木原が演技後に残念そうにコメントした。

 ペア1位はカナダのデュハメル&ラドフォード。イタリアのマルケイ&ホタレツクが健闘して2位、OARのザビアコ&エンベルトが3位だった。

田中刑事「今日の失敗を生かす」。

 2月12日はいよいよ残り3種目のフリーが行われたが、日本チームは苦戦した。

 男子は田中刑事がフェリーニの『道』のサウンドトラックで、演技を披露。冒頭に予定していた2本の4サルコウがいずれも2回転にパンクするという厳しいスタートになった。

 その後2度の3アクセルなどで懸命にリカバーをはかったものの、4トウループで転倒し、5人中5位という結果に終わった。

「6分間(ウォームアップ)での自信がうまく作れなかった。(サルコウは)踏切で力んでしまった。結果として(チームの)足を引っ張ってしまってすごく悔しいです」そう言葉少なに語った田中。個人戦に向けて「今日の失敗を生かすしかない。もっと自信をもって力強い演技ができるように、作り直していきます」とコメントした。少なくとも、個人戦の前にオリンピックアイスの感触をつかむという収穫はあった。

 パトリック・チャンは冒頭の4トウループを2回ともきれいに成功させて、3アクセルの転倒はあったものの男子フリーでトップになった。1位と分かった瞬間、これまで見せたことのないような笑顔でコーチたちと抱き合った。

女子フリー、長洲未来3アクセル成功。

 女子のフリーは1番滑走の長洲未来が、『ミス・サイゴン』のプログラムの冒頭の3アクセルを成功させて残りもノーミスの演技を滑り切った。オリンピックで3アクセルを成功させたのは、伊藤みどり、浅田真央に次いで史上3人目である。

「8年前(バンクーバーオリンピック)浅田真央ちゃんを見て、自分もそういうすごいジャンプをやりたいと思った。去年ここでの四大陸(選手権)に来て練習でアクセル跳べたので、1年後試合の中で跳べてすごく嬉しいです」と日本語で嬉しそうに語った。

「思い切っていけなかった」と坂本花織。

 坂本花織は『アメリ』で出だしの3フリップから演技を開始。だが着氷がちょっとつまって3トウループをつけることができなかった。その後しっかり立て直して残りを大きなミスなく滑ったものの、普段の彼女らしい勢いに欠けた。ほかの女子が素晴らしい演技が続いたこともあり、5人中5位に終わった。

「タイミングが合わなかった。4分間ずっと緊張していました。最初のジャンプを成功するとだんだん良くなってくるんですが、(失敗をしてしまったため)あまり思い切っていくことができなかったです」と悔しそうにコメントした。

史上まれに見る高レベルとなった女子フリー。

 女子の演技は全体的にレベルが高かった。その中でも抜き出ていたのは、アリーナ・ザギトワである。

 艶やかな赤の衣装で、『ドン・キホーテ』のメロディに合わせ、すべて後半に入れた3回転ジャンプ7度をきれいに着氷。勢いのある滑りで158.08と史上番目に高いスコアを叩き出した。

 前日のSP後、メドベデワはザギトワについて「最大のライバルでも、明日は私のチームメイト」と語った通り、演技を終えた後輩を笑顔で迎え、祝福した。

そして……悲願の団体金を手にしたカナダ。

 最終的に、カナダが優勝して初の団体戦金メダルを獲得した。

 OAR(ロシア)が2位、アメリカが3位となり、表彰台には4年前と同じ3カ国が上がった。

 カナダは、ソチオリンピック2位だったバーチュ&モイアが競技復帰してきた2年前、パトリック・チャンとモイアの間で「次は団体戦で金を狙える」と真剣に目標を定めたのだという。

 ペア、男子、アイスダンスの3種目で2プログラムともトップ選手が出場するという本気度で、念願の金メダルを手にした。

「4年前はみんな個人戦に集中し、団体戦に対してカジュアルにアプローチしてしまったことを後悔していた。ここでチーム全体が力を合わせて成し遂げたことを、誇りに思っています」と優勝会見でスコット・モイアが語った。

文=田村明子

photograph by Asami Enomoto

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