川崎相手だと、上海上港でも守る。公式戦2連敗は「心配する必要ない」。

川崎相手だと、上海上港でも守る。公式戦2連敗は「心配する必要ない」。

 J1王者が敗れたACL開幕戦を見ながら湧き上がったのは、「フロンターレ、大丈夫か」といった懸念などではなく、「あの上海上港でもフロンターレに対しては守ってくるんだ」という驚きと、「相変わらずスロースターターだなあ」という苦笑だった。

 川崎フロンターレにとって3日前の富士ゼロックススーパーカップに続く、公式戦2試合目。2月13日にホームに迎えたのは、昨年のACL準決勝で浦和レッズと激闘を演じた上海である。フッキやオスカルといった元ブラジル代表選手を擁し、攻撃力はアジア屈指――。その上海を、川崎が押し込んでいた。

 注目の攻撃陣は、1トップに昨季のJ1得点王にしてMVPの小林悠。右サイドハーフは家長昭博で、トップ下に中村憲剛。そして、FC東京から復帰した大久保嘉人が、左サイドハーフに入った。

 試合が動いたのは23分、左サイドからのクロスをエウケソンにトラップされ、ボレーシュートを叩き込まれた。マークに当たった谷口彰悟が、序盤の接触プレーでコンタクトを落とすアクシデントの中で許したゴールだった。

 川崎に逆転のチャンスがなかったわけではない。33分にエウシーニョのクロスから中村が放った渾身のヘディングと、70分に大久保のスルーパスから家長がふかしたシュートが決まっていれば、結果は違うものになっていたはずだ。だが、このまま0−1で敗れ、川崎はスーパーカップに続き、公式戦2連敗になった。

スロースタートはいつものこと。

 もっとも、川崎のスロースタートは例年のことで、念願のリーグチャンピオンに輝いた昨季でさえ、シーズン序盤は勝ち切れない試合が続いた。

「昨年も同じようなスタートだったけど、悩みのタネの質が全然違いますね」

 そう語るのは、中村である。例えば、昨季のACL開幕戦である水原三星。この試合でも川崎は1−1のドローに終わり、勝点3を掴めなかった。

「昨年の水原戦は攻撃の部分がまるで噛み合わず、これはヤバいなと思っていた。それと比べて、今の問題はちょっとしたこと。イメージをすり合わせれば、解決できる」

憲剛と大久保のズレも、時間が解決する。

 そのちょっとした問題のひとつが、ビルドアップのメカニズムだ。

 大島僚太とエドゥアルド・ネットの2ボランチに対し、上海はオスカルとオディル・アフメドフがマークに付いた。そのため、トップ下の中村がヘルプに中盤の底まで下がり、3対2の数的優位を築いた。

「そうすれば絶対に取られないから、今度は空いたトップ下に誰かが入って、それで空いたスペースにまた誰かが入って、というのを繰り返せば、いくらでも崩せると思うんだけど……」

 中盤の底に落ちた中村にかわってトップ下に入るのは、左サイドハーフの大久保が適任だろう。実際、沖縄キャンプで大久保は、味方選手をパスで繋ぐ役割を買って出ていたが、上海戦では異なる考えがあったようだ。

「前に人が少なすぎた。俺まで下がると後ろが重くなるから、あえて下がらなかった」

 両サイドバックが常に高い位置を取れれば、前に人が少なすぎることもなく、大久保も攻撃の組み立てに加われたことだろう。だが、両サイドバックにも事情がある。なにせ対面はフッキとウー・レイという強力なウインガーなのだ。

 特にこの試合の上海は、オスカルを起点に両サイドからカウンターを仕掛けようとする狙いが明白だった。サイドバックがウイング然として高い位置を取り続けるわけにはいかなかったのだ。

 ただ、こうしたイメージのちょっとしたズレは、実戦を積むことで解決できるもの。71分に中村に代わって出場した阿部浩之も「そんなに心配する必要はない。去年のはじめと比べたらマシかなと思います」と、冷静に分析していた。

フッキを完封した登里の守備。

 一方、唸らされたのは、フッキに対する完璧な対応だ。

 左サイドバックの登里享平がフッキのドリブルのリズムを見計らい、ボールとの間にその小柄な体をいったい何度滑り込ませて奪い取ったことか。

 その際、大島や大久保がプレスバックして挟み込んだり、コースを切ったりして登里の守備をサポートしていたことも見逃せない。

 映像を見るなど、フッキ対策をチームとして準備していたことを、登里が明かす。

「昨年に引き続き、スカウティングのところをチームがしっかりとやってくれた。その情報のおかげで上手く守ることができました」

W杯イヤーの特殊日程も、川崎には有利。

 また、わずか5分ほどだったが、終盤に投入された大卒ルーキー、守田英正にも触れておきたい。エドゥアルド・ネットに代わってボランチに入ると、中盤でのパスワークに加わったあと、何度もゴール前に飛び出して、相手を撹乱していた。この力強い動きに阿部も「パワーのある選手が入って、さらに前に出られるようになった。あれをもう少し早くからやりたかったですね」と讃えた。

 守田は飛び出しだけでなく、バックステップで視野を確保しながらポジションを取り直し、相手の間に入ってパスを受けるなど、川崎のビルドアップに参加するために必要なものを短期間でどんどん身に付けている。

「苦手なことなので自主練で必死に取り組んでいますけど、まだまだです」と謙遜したが、中村は「球際も強いし、守れてさばける選手はそんなにいない。意識も能力も高い」と太鼓判を押している。スタメンを飾る日も遠くはなさそうだ。

 もちろん、ホームゲームであり、勝てるゲームだっただけに、もったいない敗戦だった。だが、何試合か積み重ね、崩しのイメージが噛み合い、パススピード、判断スピードが戻ってくるにつれ、調子が上がるのが川崎にとっては例年の光景だ。

 今季は夏のロシアワールドカップの影響で日程が前倒されているため、2月20日のACL第2戦を含め、リーグ開幕前に公式戦を3試合こなすことになる。それは、エンジンが掛かるのが遅い川崎にとって、アドバンテージになりそうだ。

文=飯尾篤史

photograph by Yusuke Nishiumi

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