銀の平野歩夢と、金のホワイト。2人だけが知るハーフパイプ新次元。

銀の平野歩夢と、金のホワイト。2人だけが知るハーフパイプ新次元。

 2月14日、フェニックスパークで行われたスノーボード・ハーフパイプ決勝。

 そこで繰り広げられたのは、まさに4年に一度の大舞台にふさわしい、両雄相見える頂上決戦だった。

 その1人は平野歩夢。

 ソチ五輪では15歳、中学生で銀メダルを獲得。以降もXゲームをはじめ、数々の活躍で世界のトップスノーボーダーの1人としての地位を確立してきた。

 2度目となる今回の平昌五輪には、4年前に手にすることができなかった世界一だけを目指し臨んでいた。そして、そのために必要なのは前人未到の4回転の連続技だと見定めていた。

世界一だけを目指して戦った2人。

 今年1月のXゲームでは、フロントサイド(FS)ダブルコーク1440からキャブダブルコーク1440への連続技に世界で初めて成功。4回転の連続技を完成させたことで、平昌の金メダルも手が届くところにいた。

 そんな平野にとって最大のライバルが、ショーン・ホワイト。

 トリノ、バンクーバーと2大会連続金メダル、押しも押されもせぬスノーボードのスーパースターだ。だが、ホワイトはソチでは4位。彼もまた雪辱を期し、世界一を取り戻すことしか考えていなかった。

 世界を代表する2人の英雄は、ホワイトが1位、平野が3位で予選を通過する。

 ただ平野は、予選はあくまでも予選に過ぎないと割り切っていた。

「まだ出していない技も決勝のために残してあります。予選なのでとりあえず通ればいいと思っていました」

 その言葉の通り、連続の4回転は出さずにいた。そして決勝を迎える。

3本のうち2本めまでトップだった平野。

 3本飛んで、最もよかった得点が採用され順位は決定する。

 1本目は平野がミスをして35.25、対するホワイトは彼が武器とするダブルマックツイストなどすべてを成功させ94.25、トップに立つ。

 2本目が始まる。ここも失敗すれば、3本目は追い込まれることになる。

 いや、そう考えるなら……2本目もまたプレッシャーのかかる場面になっていたはずだ。

 だが平野は、期待を裏切らなかった。1つ目、空へと高く飛び上がると、大きな歓声があがる。リップからの高さは5mをゆうに超えていただろう。

 2つ目、FSダブルコーク1440、そして……キャブダブルコーク1440に成功。決勝のためにあたためていた連続4回転技を、オリンピックでは世界で初めて成功させた瞬間だった。

 得点は95.25。トップに立つ。

 ホワイトの2本目は、失敗して得点を伸ばせない。

平野と同じ技を決めてみせたホワイト。

 平野が1位で迎えた3本目。平野は転倒したものの、他に抜く選手も現れず、ラスト、ホワイトのみを残すばかりとなった。

 平野の得点を考えれば、ホワイトにかかる重圧は果てしない。場内からも、この日一番の声援が起こる。

 スタート。

 そこからが圧巻だった。

 1つ目にFSダブルコーク1440、そこからキャブダブルコーク1440に成功。

 平野がこの日のために力を尽くしてきたのと同じ技を、オリンピックの最後の最後、強烈なプレッシャーがかかる場面で、自身初めて挑み、決めたのだ。

 さらにFS540、ダブルマックツイスト、FSダブルコーク1260と決めたホワイトは、ゴーグルを取り、両腕を高く突き上げた。

 97.75。

 王者は土壇場で平野を抜き、栄光を取り戻した。

平昌は「悔しい」だけで終わらなかった。

「ちょっと悔しさはあります」

 試合後、平野は言った。

 ただ、そんな思いばかりではなかった。

「楽しかったです。今まででいちばんの大会でした。自分が今できる範囲の中で全力を出せたと素直に思います」

 その表情は、言葉が偽りではないことを物語っていた。

 平野はソチのあと、フィジカルトレーニングをはじめ、さまざまな角度でレベル向上を図り、その中で世界で初めて連続4回転技をオリンピック前に完成させた。

 そして磨いてきた武器を、オリンピックでも成功させることができた。

 目指してきた世界一ではなくても、注いできた時間を表現することができたからこそ、悔しい、では終わらなかった。

平野の成長がホワイトを進化させた。

 そして平野の成長は、ホワイトの進化の媒介ともなった。決勝3本目、平野に続き連続4回転技を成功させたのは象徴的だ。

 平野が決めた1440のコンビネーションを決め返したホワイト。

 そのパフォーマンスを引き出した平野。

 両者は、共に過去大怪我を負い、そこから世界のトップを争う位置に戻ってきた。いや、戻るばかりでなく、より進化して平昌五輪へと臨んできたのである。

 セレモニーで、ホワイトと平野は互いを称えあう。平野も笑顔を浮かべる。2人だけが知る次元があるようだった。

 ハーフパイプのレベルを一段引き上げた歴史的な瞬間を目にした観客席から、両雄への拍手と歓声がやむことはなかった。

文=松原孝臣

photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

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