プロクラブ宣言に超高額チケット。バレーの異端児・ヴォレアス北海道。

プロクラブ宣言に超高額チケット。バレーの異端児・ヴォレアス北海道。

 2018年2月25日、旭川市総合体育館にて行われた2017/18V・チャレンジリーグII男子大会にて、ヴォレアス北海道がリーグ参入初年度での優勝を決めた。

 ヴォレアス北海道は2016年に、北海道を拠点とする初めてのプロバレーボールチームとして誕生した。初参戦となった2017/18V・チャレンジリーグIIは、V・プレミアリーグをトップカテゴリーとする日本のバレーボール競技においては、3部に当たるリーグである。

 しかしヴォレアスは、初年度から外国人のエド・クライン監督を採用し、全日本経験がある選手を獲得するなど、その動向がバレーボールファンの間で大いに注目を集めていたチームだ。今回のリーグ優勝は、話題性だけではなく実力も兼ね備えたチームであることを証明する結果となった。

 最初に目を引いたのが、ヴォレアスが自ら「プロバレーボールチーム」と名乗っているところだ。

 これまで日本のバレーボールリーグに参加してきたチームは、ほとんどが企業を母体とする団体で、いくつか存在するクラブチームも「地域密着型スポーツクラブ」や「企業複合型スポーツクラブ」と形容されている。

 自らプロと名乗るチームは、記憶する限り1990年代後半に活動していたオレンジアタッカーズ以来で、男子チームでは初めてだろう。

きっかけは、北海道のバレー人口減少。

 ゼネラルマネジャーの池田憲士郎はこう語る。

「あまり深い意味はなかったんですが、要は“本気だよ”ということですね。プロフェッショナルって、そういうことじゃないですか。選手の中にはプロという雇用形態の選手もいますし、そうでない選手もいます。ただしチームはプロフェッショナルとして活動していこうという思いです」

 前身である建築設備会社IDFからバレーボールチームを分離、法人化したのが2016年のこと。発足のきっかけは、北海道におけるバレーボールの競技人口の減少だった。道内にはバレーボール強豪校が多く、大勢のトップリーガーを輩出しているが、近年は少年少女の競技者が激減しているという。

「小学校、中学校のバレーボールチームがどんどん減って、野球、サッカー、バスケットに子供たちが流れていく印象でした。やはり、子供たちにとってトップカテゴリーのチームが地元にあることは極めて大きい。すぐに人気に直結するんだなと実感しました」

 北海道コンサドーレ札幌や、北海道日本ハムファイターズ、レバンガ北海道のようなシンボルチームを、バレーボールでも作りたいという目標ができた。

従来の方法で成功したクラブはほぼない。

 池田は続ける。

「ヴォレアスを発足した2016年法人化、2017年株式化したばかりのころは、身の丈にあった方法でやっていました。従来のチームのように、少しずつ成績を上げて、何年かかけてVリーグに昇格していこうと考えていたんです。当時は資金力もないし、ノウハウも自信もなかった。だからそれでいい、弱くてもみんなに愛されるチームになろうと思っていて、実際に過去にはそういう発言もしていました」

 しかし心境の変化が起きた。

「あるとき、これって出口のないトンネルなんじゃないかと思えたんです。従来の方法で、成功した事例はほぼないといっていい。

 たとえば広島カープのように、何十年もかければ実現するかもしれない。しかし、それでは運営の体力がもたない。既存の各競技団体のクラブチームや、バレーのクラブチームが苦戦しているのを見たときに、大きく変えていかなければだめだと思いました」

 これまでにないチームを生み出す。その発案をもとに池田と、パートナーであるプロデューサー兼デザイナーとの2名でシンボルマークやロゴデザイン、スローガンなどチームのコンセプト作りから考えた。

 欧州に長く息づくスポーツの文化を思い描きながら、ディスカッションを重ね、構想を練るうちに「スポーツが地域の文化になるためには、ブレないコンセプトが必要」という結論に達する。こうして北海道に初めて、プロのバレーボールチームが誕生した。

プレミアの優勝決定戦より高いチケット。

 もうひとつ話題となったのがホームゲームのチケットの価格設定だ。

 ヴォレアス北海道の観戦チケットはSS席が10000円。S席が8000円。最も価格の低い2階自由席で2500円(すべて前売り価格)。Vプレミアリーグ優勝決定戦のチケットでも最高額が9800円であるのに対し、3部リーグの試合としては大胆な価格設定である。池田は説明する。

「ライブエンターテイメントのひとつとして考えたときに、まず、映画館で映画を鑑賞する価格を参考にしました。映画館で見る映画と、生で観戦する試合を比較して、いちばん安いチケットを映画館より少し高い価格にしました。あとは、嵐のコンサートはいくらくらいだろうとか、これよりは高いはずだとか、いろいろな分野のチケット料金を調べました」

 その結果、チケットの価格が決まった。チケット代金を発表した直後は、前例のない価格設定に「高すぎる」という意見も多く寄せられた。しかし、ホームゲームを1試合、2試合と進めるうちに、チームに届く声は変わっていった。

どのカテゴリーでも今の価格を維持。

「おかげさまでいちばん高い席ほど先になくなるんですよ。来てくださったお客様にも、価格以上の価値があると言っていただいています。高いかもしれないけれど、その席に座る優越感とか、“このチームを応援しているんだぞ”という仲間意識も徐々に生まれてきているのかなという印象を受けています」

 現在、V・プレミアリーグのチケット販売は、親会社が福利厚生の一環として団体購入する“チーム券”に頼る部分が多い。そのため、「何が何でもチケットを売らなければならない」という危機感は希薄になりがちだった。

 となれば、チケットを売る工夫をする必要もない。そういった現状に危機感を覚え、今秋から開幕する新リーグ「V.LEAGUE」に向けて、Vリーグ機構と各チームはビジネス化を目標とした構造改革を進めている最中である。

「今後、ホームゲームが増えても、そして、どのカテゴリーに昇格しても基本的に今のチケットの価格を維持したい。それこそ、トップリーグになったからといって、そのときに値上げするのもどうかと思いますから。そのあたり(トップリーグ昇格)までも見据えて、我々は価格設定をしています」(池田)

「お金をだしてください」とは頼まない。

 チーム運営の核ともいえる活動資金の集め方に関しても、これまでにない道を開拓しようと試みていると説明する。

「スポンサー集め、イコール資金集めのようなイメージになるのですが、それも日本のプロスポーツが成長しないひとつの理由だと思っています。企業さんに頼りがちというか、頼るしか方法がないという固定観念がある。そこを変えようと考えています。

 実は、企業さんに“お金を出してください”とお願いしたことは、ほぼないんですよ。その代わりに、双方にメリットのある事業提案をして、ビジネスとしてとらえてくださいとお話ししています」

 協賛社にとってのメリットが広告や福利厚生だけでは、業績次第でスポーツから離れる企業も現れるからだ。

新リーグの参加チームが決まるのは3月末。

「企業にとってもメリットがあるよう、僕らから事業を提案して、“ヴォレアスのおかげで経費が削減できたのだから協賛は続ける”と社員に向けて説明できるような、長期的なパートナーシップを目指しています」(池田)

 提案する事業内容については現在、4〜5パターンのノウハウを持ち、今後も同じスタンスで協賛社を開拓していく計画だと語る。

 ヴォレアスはV・チャレンジリーグIIで優勝を飾ったが、今シーズンは入れ替え戦の開催はない。昨年12月に行われた新リーグ発表記者会見の時点では、「新規参入するチームは一律、S3のライセンス(3部リーグ)からスタートする」とVリーグ機構は明言している。

 ビジネス化を謳う新リーグで、ヴォレアス北海道は旋風を巻き起こすことができるだろうか。3月末の参加チーム最終決定に向けて、そのリーグ編成に注目が集まる。

文=市川忍

photograph by VOREAS HOKKAIDO

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