「野球人生、どうせあと数年ですよ」西武・高橋朋己が探す完全復活の道。

「野球人生、どうせあと数年ですよ」西武・高橋朋己が探す完全復活の道。

「ずっと“太く短く”が目標だと言ってきたんですけど、このまま辞めるのは、さすがに短すぎるよなぁって思いましたよ、アハハ」

 リハビリ中を振り返り、高橋朋己は豪快に笑う。昨年までの2シーズンは故障とリハビリのため10試合の登板に留まったが、完全復活が近いことをその笑顔が物語っている。

 春季キャンプでは、連日のブルペン入り。1日に30〜50球を投じる。先発投手陣と比較すると少ない球数だが、その代わり、リリーフ登板を見据えて日にちを空けずに投げ込みを続けた。

 実戦登板を想定した全力投球だ。

「春のキャンプは筋持久力をつける時期だと考えています。筋力はウェートトレーニングでつくけれど、それを、今度は投げるときにどう生かすかが大事なんです。そう考えると、こういった実戦を想定した投げ込みと、ウェートトレーニングとは別物。

 この時期に投げるために必要な体力と筋力をアップして、シーズンに入ってからもずっと投げ続けることができる体を作りたいと考えています。たぶん、起用されるなら中継ぎだと思うので、連投もあると予測して練習しています」

 手応えを感じているのか、キャンプでは高橋の明るく、開放的なキャラクターが一層、前面に出ていた印象だ。

チームの守護神からトミー・ジョン手術。

 高橋は2014年、2015年と連続で60試合以上に登板し、2014年にはチーム最多の29セーブポイントを記録。クローザーとしてライオンズの数々の勝利に貢献してきた。

 2016年は開幕を一軍で迎えたものの、高橋を待っていたのは利き腕である左ひじの張りだった。登録抹消のあと左肘内側側副靭帯の再建手術、通称トミー・ジョン手術を受けた。

 靭帯の再建手術はリハビリ期間が長いことで知られている。

「焦りですか? うーん、そこまではないですね。手術してるんだから、まぁ仕方ないかって……。どうせ投げられないんだから、あまり考えても仕方ないという感じでした。ひじの状態を見ながら、投げられたら投げようっていうくらいの感じです」

 あっけらかんと語った。

「前の感覚、もう覚えていないんですよ」

「手術をする前の感覚、もう覚えていないんですよ。1年以上投げていなかったので、西武に入ってきたときのフォームとか、ボールとか、ケガをする前のボールと比較してどうですかと聞かれても、正直言って覚えてないし、わからないんですよね。

 昔のフォームの映像も見ないです。まず、手術する前とは同じ体の状態ではないので、参考にならないでしょう。だから今のボールが俺のボール。過去を追い求めても進化しないですから」

 長いリハビリ期間を過ごすうちに、心境に大きな変化が起きた。自己管理の重要性に改めて気づいたと高橋は振り返る。

「入院中や、リハビリで練習ができないときに、インターネットで検索したり、本を読んだりして、トレーニングや栄養についていろいろと考えました。たとえば、パセリだったらどんな栄養素があって、体のどんなことにいいのか調べました。

 そうすると食事のときに、残すものに対する意識が変わるんです。今まで残していたこのパセリに、そんな大切な役割があるなら、まずくても残さずに食べようと思うじゃないですか」

 故障をするまでの高橋は、「まずいもんは食わない」がモットーだった。しかし、知識が増えれば増えるほど、食に対する意識は変わっていった。

「野球人生、どうせあと数年ですよ」

「野球人生、どうせあと数年ですよ。だったら、その数年は我慢しようという気持ちになった。体重が重くなったけど、体自体は軽いです」

 高橋が言う『体重の増加』は、トレーニングによる筋量の増加によるものだ。ライオンズの中でもずば抜けて豊富なトレーニング知識を持つ菊池雄星に、様々な話を聞いた。

「本当にいろいろなことを教わりました。雄星に話を聞いてみると“こんな練習メニューもあるんだ”と驚くことばかりでした」

 菊池と話をするうちに、高橋がリハビリ中に学び、ある程度まとまっていた考え方に確信が持てる機会も多かったという。

菊池雄星と話し合った練習の重要性。

 菊池は当時を振り返る。

「朋己さんは1年近く投げられなかったですよね。僕も故障で投球できない時期がありましたけど、僕の場合は長くて半年くらい。朋己さんとは深刻さが違います。投手にとって、それは、なかなか大変なことだと思います。ですから僕に伝えられることがあれば、とも思っていました。僕のほうが年下ですけど、いろいろ聞いてくれるので自分の考えを伝えたりしました。

 充実したトレーニングができれば、結果的に故障が減るだろうし、正しいフォームでトレーニングをする重要性や、その人に合ったセットの組み方、何回を何セット上げるかで効果が変わることとか……。そういうことはよく話しましたね」

 長いリハビリ期間を経て高橋は昨シーズン、6月に二軍戦で復帰すると、9月30日には1年5カ月ぶりに一軍登録を果たす。10月1日の日本ハム戦でマウンドに上がったが、「まだ万全ではない状態」(高橋)というピッチングでシーズンを終えた。

牧田が抜けた必勝パターンに食い込むか。

 今年こそ、完全復活をという思いは強い。

「今シーズン、僕は手術をする前のような、ポジションが用意されている立場じゃありません。オープン戦でも結果が求められると思っています。結果を出して、開幕一軍入りをすることが、まずは目標です。どこのポジションで投げるかわからないけれど、“自分はここで投げたい”と言える立場じゃありませんから、あくまで使っていただくという感覚です」

 まずは横一線となった中継ぎ投手のポジション争いに勝つことが目標だと語るが、今年、ライオンズを離れた牧田和久(パドレス)やシュリッダーが担った、必勝パターンでの登板がチームからは期待されているだろう。

「今のボールが自分のボール」

 過去の自分は振り返らない。未来だけを見ている高橋のピッチングに注目したい。

文=市川忍

photograph by NIKKAN SPORTS

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