宇佐美貴史「元気君、リスペクト」原口との悪ガキ両翼でついに覚醒か。

宇佐美貴史「元気君、リスペクト」原口との悪ガキ両翼でついに覚醒か。

 フォルトゥナ・デュッセルドルフにとって、原口元気の加入はこの冬の大きな目玉だった。

 だが、ふたをあけてみれば海老で鯛を釣ったというか、一粒で2度美味しかったというか、カモがネギを背負ってやってきたというか。原口ひとりが加入しただけなのに、宇佐美の状態まで上がってしまったのだ。

 前半戦は鳴かず飛ばずだった宇佐美貴史にとって、どれだけ原口の存在が刺激になっているか。それは結果を見れば一目瞭然。

 2月からの3試合連続ゴール、陰のアシストは原口と断定して間違いない。もちろん原口が海老で、宇佐美が鯛だと言いたいわけではないというのは強調しておきたいのだが、クラブにとっては期待以上の効果だっただろう、と言いたいわけだ。

 バイエルン・ミュンヘンでドイツでのキャリアをスタートさせた宇佐美は、昨夏ついに2部に活躍の場を求めた。その前のシーズンはアウクスブルクで先発5試合、フル出場1試合。戦力として捉えられているとは言えない数字だった。

「90分走りきれる自信がデカい」

 1年間ほとんど試合をしなかったことで、体力の衰えは甚だしかった。

 フォルトゥナ加入当初、本人の言葉を借りれば「リハビリのような状態」からスタート。フンケル監督からは「まあ、半年はかかるだろう」と言われていたそうだが、その予言通り、後半戦に入ってようやくスタートラインに立った格好だ。

 このところ一気に調子が上がっているように見えるが、と取材を切り出すと、意外なテーマから話を始めた。

「そうですね、レーゲンスブルクのときに、スタメンで出れたのがでかくて、その時に最初わりと早い段階で点も取れて。で、『そうか、90分全然いけるな』っていう手応えもあった。技術的な自信というよりは、90分しっかり走りきれるという自信がデカいかなと。結果的にこの間の試合よりも、ザンクトパウリ戦の方が1キロくらい多く走ってて」

途中出場でもキツかったのが一転。

 実際、キッカー誌のデータを見てみると面白い。今季初めてフル出場した2月23日のレーゲンスブルク戦では10.64キロ、続く3月4日のザンクトパウリ戦では11.24キロと距離が伸びている。

 その事実はあるにせよ、驚いたのは宇佐美自身が走行距離を調子のバロメータとして挙げたことだ。まずはシュート数、得点やアシスト、ナイスなドリブルやスルーパスの回数などを気にするのでは、と勝手ながらイメージとして染みついていた。

「それまでは途中からしか出てないのに、それさえもキツかった。途中からって、まじキツいっすよ。そのキツさにも慣れてきたけど、フル出場できたときは『全然良かった、90分いける。体力はまだ残ってたな』という感じ。それが、90分間出ただけでコンディションもぐーんって上がったし、だからこそ、次の試合で1キロ近く多く走れたんやと思います。1試合出ると身体的にはだいぶ変わるんだな、っていう感じです」

 熱っぽく、走る距離とコンディションの変化について語る様子は、以前の宇佐美とは違って見える。本当に意識が変わりつつあるのだと感じさせられる。

「俺はあれほどヤンチャではないけど」

 そんな影響を与えたであろう大きな存在、原口は1つ年上だが、幼い頃から世代別代表などで突出した存在として、互いに知らない仲ではなかった。

 将来を嘱望されていたという点だけでなく、血気盛んで時にヤンチャ坊主、悪ガキたちだったという共通点も感じてしまう。

「(お互いヤンチャだった)だから元気くんともこれだけ仲良くなれたと思いますよ。わかりあえるというか、お互いたどってきた道は違えど、系統、カテゴリとしては一緒で育ってきたかなという。ま、俺はあれほどヤンチャではなかったけど(笑)。ホンマにいい人っすよ、今。リスペクトできるとこしかないっす」

“何食べてるんやろ”と見てみると。

 さりげなく、気づかれないように、だが直接的に宇佐美は原口から学ぼうとしている。

「サッカーに対する姿勢とか、ホンマにすごいなって思いますよね。練習終わった後もだいたいジムにいるし、地道な作業を重ねてる姿も見る。もっと突き詰めていかないとな、という気持ちにさせてもらいましたね。代表で一緒になったときって、あんまりそういうの見る機会がないけど、一緒のチームになると試合に向けてのフォーカスの仕方を見ることが多くなるから。

 食事の時とかもテーブル一緒やから“何食べてるんやろ”とかざっくり見ても、やっぱこう(揚げ物の)衣を剥がしたりとかしてるし、デザートも基本手をつけないし。デザート? 俺は結構好き。でも、そんなバカみたいには食べないっすよ!」

 意識の向上を促すピッチ外での影響もありがたいが、ピッチ内で共存できることは何よりも嬉しいこと。フォルトゥナでは宇佐美は2列目の右に入り、原口は左に入る。これが効果的に機能し始めている。

「左でポジションを取り合うのでなくて、僕は右で作って元気くんに仕留めてもらうっていう。そんなシーンができれば一番かなと思ってたけど、自分も右サイドができる適性がついて、実際に試合でも出ることが多くなってくるかなと思います」

原口も宇佐美のクオリティを認める。

 原口は誰よりも信頼できるチームメイト、でもある。

「俺が来てタカシは変わった、笑うようになったとチームメイトに言われる」と、教えてくれたのは原口自身だった。その原口は、宇佐美をこう見ている。

「アイツの良さはザンクトパウリ戦を見てもわかるように、あのクオリティなわけで。ああいったプレーを気持ちよく出させてあげるチームメイトがいたり、パスが出てくれば、間違いなく活躍できる。

 そしてアイツはすごく守備も頑張ってたし、今まで足りなかった部分も補いつつ、攻撃のクオリティを出している。もっとハードに守備をしつつ、攻撃でクオリティを出し続けたら、変な言い方だけど、俺は勝てないなと。あのクオリティは俺にはないから」

「日本人で両サイドは新しいと思う」

 原口にとってみても、大切なパートナーのような存在だ。

「居残りで2人でシュート練習したりして、“ああ、こういう感覚があるんだ”とかすごく学べるしね。1つ年下だけど、すごく刺激的な存在なので。俺にとってもアイツにとっても、いいんじゃないかな。すごくね、心地よいみたい。アイツも。このクラブですごくサッカー楽しめてるし」

 2人でクラブを牽引するだけでなく、原口はその先も見据えている。

「このクラブを押し上げる上では、俺たちのクオリティは間違いなく必要だと思う。現にね、後半戦はほとんどのゴールに2人が関わっているし、ひとつ良いモデルになれたらって思うんです。日本人がもう1回評価されるためにも、このクラブは注目度もあるし。日本人で両サイドをやっているチームがあるのは新しいと思う」

 フォルトゥナは現在1部昇格を狙える筆頭であり、注目度も高い。その中で日本人2人が主力となって活躍できたら、これほど胸が躍ることはない。

 調子を上げ始めた宇佐美には、プライベートでもこの春大きな喜びが待っている。嬉しそうに話す。

「俺、2児の父になります。俺が一番思いますよ、あの、くそガキが? って。それがね、2人こども持つわけで、しっかりしないと」

 だからこそ、気を抜いて以前の宇佐美に戻るわけにはいかない。ドイツで4つ目のクラブで、ようやくその力を発揮しようとしている。

文=了戒美子

photograph by Getty Images

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