J2新潟にジュビロ黄金期の遺伝子が。鈴木新監督と「カンペーちゃん」。

J2新潟にジュビロ黄金期の遺伝子が。鈴木新監督と「カンペーちゃん」。

 プロ18年目の富澤清太郎にとって、2018年シーズンはわくわくする思いとともに始まった。自分が大きな影響を受けたサッカーとの、予期せぬ遭遇の喜びに満ちていたからだ。

 昨年、千葉から新潟に完全移籍で加入した富澤は、技術に長け、試合の流れを読める頼れるセンターバックとして大いに奮闘。しかしチームはJ2に降格してしまう。

 1年でJ1に戻ることを目指す今シーズン、新たに鈴木政一監督がチームを率いる。チームメートから愛称の「カンペー」、「カンペーさん」で呼ばれて慕われるベテランセンターバックを、新監督も親しみを込めて「カンペーちゃん」と呼ぶ。

「カンペーちゃん、やっぱり恐いか?」

 1カ月半におよぶ長期キャンプの序盤、トレーニング中の一場面だった。合間の小休止に、給水している富澤に鈴木監督が話し掛けた。

「カンペーちゃん、やっぱり恐いか?」

 昨年の試合映像を見た鈴木監督は、守備の改善からチーム再建に取りかかった。選手たちに求めることはとてもシンプルで、ファーストディフェンスで相手の攻撃をしっかりと限定し、ボールサイドを数的同数にする。それから昨年、何度も痛い目に遭ったカウンターを受けないために、両サイドバックが同時に高い位置を取らない。基本的にはこれだけである。

 キャンプ中のワンシーンは、守備の不安からボランチがゴール前に落ちてきてしまう、チームの悪い癖を指してのものだった。

 数的同数であれば、下がってこようとするボランチを後ろから押し出し、ボールに行かせる。ゴール前では各自がボール状況、敵、味方の位置をよく見て判断する。ボールだけになっても、マーキングだけでもダメ。経験豊富な富澤に鈴木監督が意見を求めたのは、守備陣の当時の心理を知るためであり、再興を期すシーズンのチームづくりは、こんな風にして始まった。

名波、服部、福西とヴェルディで同僚。

 富澤がユースからトップに昇格し、東京Vでプロになったのが'01年。まさに磐田の黄金期である。

「デビューしたころの磐田のサッカー、あの質の高さは肌で感じています。本当に強かった」

 その後、黄金期の中盤を支えていた名波浩(現磐田監督)、服部年宏が'07年に、福西崇史が翌'08年に東京Vに加入し、ともにプレーすることになる。そして黄金期の磐田を率いていた鈴木政一監督の下で、今シーズンはプレーする。

「ヴェルディでハットさん(服部)たちがよく言っていた言葉が、今、新潟でサッカーをやっていてすごくリンクするし、納得できるんです。それらは僕が感化され、ずっと求めてきたものであり、僕が教わった先輩方を教えた人が(鈴木)監督なんです」

 思いがけない、めぐり合わせ。ルーツとの遭遇に、ベテランは胸を高鳴らせているのである。

「口酸っぱく『考えろ』と言われた」

 ヴェルディ時代に言われたことでよく覚えているのが、考えろ、だという。

「日ごろから口酸っぱく言われていた『考えろ』というのが、すごく残っています。それがきっかけで、例えばポゼッション練習で3人目の動きを意識するようになったり。単純なことなんですけど。考えながら判断して、選択肢を持って、その中でベストの判断をできるか。それは今、新潟で監督が言っていることにも通じます」

 20代前半、それまでは何も考えず、その日の調子任せでプレーしていたという富澤。考えることを求められて「とにかく必死でした。聞いて、学んで、それをどうプレーに落とし込んでいくか。それで一日一歩でも、半歩でも何とか前進しようとする。ときには後退もしながら、その繰り返しでした。必死だったけれど、そうやって突き詰めるのが楽しくもあった」。

開幕で完成しているチームなんてない。

 かつて、ヴェルディにいながらにして、黄金期のジュビロのサッカーから受けたインパクトは、決して小さくはなかった。その創始者ともいえる指導者との邂逅は、現在の新潟でも、サッカーに必死に取り組む毎日につながっている。

「できたりできなかったりの繰り返しで、チームとしての安定感はまだまだ。監督に求められていることはシンプル。自分たちで判断しなくてはならないけれど、個人レベルで済む話ではなくて、組織としてできないとダメなので。個人個人の判断を、同じ方向性でリンクし合えるようにならないといけない」

 新潟にとって15年ぶりのJ2での戦いは、開幕から2試合を終えて1勝1分けでのスタートとなった。開幕の讃岐戦は控えとしてベンチから試合を見守り、続く松本戦は先発フル出場した富澤は、どちらも難しい試合だったと振り返る。

「僕自身、J2を経験しているからこそ、自分たちの思うようなプレーができなくても勝ち点を取っていくことがどれだけ大切か、よく分かっています。開幕で完成しているチームなんてないですよ。やっぱり完成させたいし、そのためにもその途中で勝ち点を拾っていかないといけない。ベテランといわれる選手たちのメンタル面での役割が重要になってくる」

 田中達也と同じ'82年生まれでチーム最年長の富澤に、ベテランの域に達して、なお成長できそうな予感がうれしいですね、と話を振ると、「言葉でまとめると、そうなるかも。でもね、それ以前に毎日“ああするのがいいのか”、“こうするのがいいのか”ばかりで、とにかく必死です」と、いなされた。

 鈴木政一監督の下、選手もチームも、今年の新潟はこうして変わっていく。

文=大中祐二

photograph by J.LEAGUE PHOTOS

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