中島翔哉はハリルJ救世主となるか。「僕は海外向き」を証明できた理由。

中島翔哉はハリルJ救世主となるか。「僕は海外向き」を証明できた理由。

 ここ数カ月、欧州はイベリア半島の端から痛快な活躍ぶりが伝えられている。

 ポルトガル1部に所属する日本人アタッカー、中島翔哉。昨夏にFC東京からポルティモネンセに移籍すると、3月11日までに9得点6アシストを記録。ゴール数とアシスト数を合算したポイントでは、現在欧州でプレーする日本人選手の中では、森岡亮太(アンデルレヒト)に次ぐ数字を残している。

 その活躍ぶりに注視するところも増えてきている。今冬には、ポルトガル移籍約半年にしてFCポルトをはじめとした国内強豪クラブや、ドルトムントなど国外有力クラブも獲得に興味を示しているといった現地報道も飛び出した。

「スタッフ間でも翔哉の評価は当然高い」

 さらに、遂にこの男もその存在を無視できないまでになってきている。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督だ。

 中島について、こんなことを述べている。

「最近の中島はおもしろい試合をしている。瞬発力があって、あれほど相手を抜き去る選手はいない。直接彼をチェックするために、コーチを派遣する。これで3度目になる」

 また、2年前のリオデジャネイロ五輪代表監督時代に中島を指導し、現在日本代表コーチを務める手倉森誠氏もこう話している。

「代表に呼ぶか呼ばないかはもちろん監督の選択。ただ、スタッフ間でも今の翔哉の評価は当然高い」

 そんな声も受けてか、日本のサッカー世論では、この3月のベルギー遠征(マリ戦、ウクライナ戦)で中島の代表招集への期待が高まってきている。

Jでは“空気の読めない”タイプだった。

 日本にいた頃から、特異なプレーとサッカー観を貫いていた印象だった。

 組織だったチームプレーや、連係面を優先しがちな日本人。そんな空気感が漂うJリーグの試合において、中島はある意味“空気の読めない”プレーヤーだった。いや、むしろ自ら鈍感ぶりを装ってまで、自分が信じるプレーをやり続けていたと言ったほうが正しいかもしれない。

 ボールを受ければ、ひたすら前に仕掛ける。眼前のDFに怯える素振りはない。隣にはサポートに入る味方もいる。ただ彼らを使うのは、独力突破できなくなってからの最終手段。とにかく前に、縦に進むことだけを考えていた。

 そのプレーぶりには、賛否両論あった。集団で相手を崩そうとしないのは合理的ではないといった指摘が飛ぶこともあれば、誰に遠慮することもなくゴールに一直線に向かうプレーを頼もしいと評価する意見も出ていた。

「やっぱり僕は海外向きなんだと」

 そんなことを本人に聞くと、他人の考えはまったく意に介さないといった素振りで、笑いながらこう返されたことがあった。

「周りのみんなも、サッカーでは僕がワガママだということをわかってくれています(笑)。プレーでも自分が攻めた時には、周りがカバーに入ってくれることもある。もともと、プレーでは他人の指示をあまり気にしない性格なので(笑)。そういう意味でも、やっぱり僕は海外向きなんだと思います」

 昨年インタビューした頃から、自分は海外向きと宣言していた。確かにJリーグのピッチでの彼の姿は、どこか窮屈そうだった。

 それが、今やポルトガルでブレイク。毎週末に届けられる映像を観ても、ボールを持てば気持ちよく前に仕掛け、シュートやパスを繰り出していく中島がいる。そしてそんなプレーを、周囲の味方も違和感なく受け入れている様子だ。

 日本では特異だったプレー観が、欧州で華ひらく。もはや誰にも文句を言わせない。中島がようやく勝ち取った評価である。

ネイマールはミスしても“常に前”。

 自らの道を進み続けるきっかけになった出来事があった。リオデジャネイロ五輪直前に戦った、ブラジル五輪代表とのテストマッチ。

 相手には、ネイマールがいた。

 当時の中島は、自分の特長は自覚しつつもFC東京では試合に絡めないなど、少しプレーに迷いが生じていた時期だったという。

「試合に出れば、ボールを奪われないように意識しすぎて、前に行くプレーができなかったりした。でもあの時のブラジル戦では、ネイマールも結構ミスをするし、ボールも奪われていたんですよ。それでも彼は、絶対に前にしかプレーしていなかった。その自信あるプレーを見て、自分も『これだ』と思いました。自分がしたいプレーを、そこで再確認できました」

スアレスは絶対に前を向いてシュート。

 さらに中島の見聞の幅は広がっていく。普段から常に欧州各国リーグの試合や情報をチェック。その中で、身につけるべき力を持った選手を見つけた。

「バルセロナのスアレスです。自分とはプレースタイルやポジションは違うかもしれない。スアレスはそこまでスピードがある選手ではないし、技術もメッシやネイマールほどない。だけど、ゴールに向かう姿勢と貪欲さは世界でもトップ。ネイマールは突破だったけど、スアレスは絶対に前を向いてシュートまで持っていこうとする。そこは自分にもっと必要な部分。相手をなぎ倒してでもゴールに向かう。そんなプレーをもっとできるようにしたい」

 中島が話した言葉を噛み締めながら、彼の今のプレー映像を観る。

 敵に引っかかってでも連続して突破にかかる。遠いレンジからでも前を向き、シュートまで持ち込もうとする。さらにはペナルティーエリア深部に入り込んで、果敢にゴールを狙うことも。

 ドリブラー、日本語で表現すれば“突破屋”とでも言えるプレースタイルだった中島が、現在ではゴールにも直結した働きが連続できている。これはすべて、「前に」の意識を持ったプレーが、ポルトガルで好結果につながっているからこそだ。

 小柄な体格ながら、体幹が強く簡単には当たりに負けない。そんな耐久性のあるプレーも中島の基盤となっている。きっと、フィジカル強度が低い選手であれば、ハリルホジッチ監督も招集への視野には入れていないだろう。

後ろ向きのベクトルでプレーしない!

 彼の果敢な攻撃性は理解できた。それと同時に課題は守備面と指摘されることも多い。球際でのデュエルを仕掛けることが前提のハリルスタイルに、どこまでマッチできるのか。

 ただ、当の中島は守備に関しても、自分の確固たる考えを持っている。こんなことを話していた。

「日本の守備の考え方は、相手のミスを待つスタイルが多いという印象があります。自分も含めて、ボール奪取力はまだまだ。試合を観ていても、そういう『ミス待ち』のプレーってイライラしませんか?(笑) 僕も自分の映像を観ながら『奪いに行けよ!』なんて思わず声に出してしまうぐらいですから。そこは僕が本当に変わらないといけない部分です。

 守るということは、後ろに下がってゴール前を固めるイメージではなく、僕の中では相手ゴールに近いところでボールを奪うこと。優先順位は、守備の意識も『前から』ですね。引いて守るのは、攻め込まれた後でもできますから」

 だからこそ、ハリルホジッチ監督が日本代表に求める基本スタンスも、きっとすんなりと受け入れられるという。

「日本代表の試合を観ていて、監督の言っていることはすごくわかります。ボールを自分たちで奪うこと、球際で戦うこと、そしてそこからゴールを奪うこと。これはもう、世界では当たり前のプレーです。ヨーロッパでも南米でも、攻撃も守備も後ろ向きのベクトルでプレーする選手はほとんどいない。あとはこれを日本人ができるかどうかだと思います」

 渡欧する直前の時点で、中島はこんな考えを持ってサッカーに向き合っていた。「自分は海外向き」。そう素直に言っていたからこそ、今ポルトガルで伸び伸びと特長を発揮している姿は、何も不思議ではないように映る。

本田とともに“一発”を狙えるタイプ。

 日本代表をめぐっては最近、再び本田圭佑の待望論が出てきている。チーム全体でコレクティブな攻撃がなかなか仕掛けられないハリルジャパンの現状において、シュートやスルーパス、FKといった“一発”を持っているタレントだからこそ、その存在価値が語られている。

 中島も“一発”という意味では期待に応えられる選手だろう。誰よりも前に駆動し、誰よりも果敢に足を振る。窮地の展開をガラリと変える“一発”のプレーと積極性にかけてみるのも面白い。

 ハリルホジッチ監督がメンバー表に「NAKAJIMA」と書き加えるのであれば、きっとそんな狙いが存在するに違いない。

文=西川結城

photograph by Getty Images

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