遠藤のブレイクを予想する根拠。大相撲の「上位定着から3〜5年」説。

遠藤のブレイクを予想する根拠。大相撲の「上位定着から3〜5年」説。

 近年の大相撲は、閉塞感というキーワードで語られることが多かったように思う。

 その閉塞感の中心に居たのは白鵬だった。白鵬が多くの場所で優勝し、優勝を争う力士も限られていた。好調な時は日馬富士が競り、その後鶴竜が台頭し、そして稀勢の里はいつも大事な相撲を落としていた。

 白鵬の素晴らしさに感嘆しながらも、怖いことに素晴らしさに我々は慣れてしまう。次の刺激を求めていたことも事実だ。

 当時大関だった稀勢の里への期待が膨れ上がったことや、大砂嵐、逸ノ城といった番付を駆け上がってきた力士をクローズアップする動きが顕著だったのには、こうした背景も影響していたように思う。

 上位陣の顔ぶれが固定化していることで、大相撲がここ数年変わっていないような印象を受けている方も多いと思う。だが、それは上位の話だ。少し目線を変えると、まったく異なる大相撲がそこにはある。

 一番分かりやすい例だと、小兵力士の躍進が挙げられる。

 近年は力士の大型化が進み、速くて強い相撲が主流になる中で130キロ台の日馬富士でさえ小兵と言われるようになっていた。

 だが最近は、石浦(116キロ)や照強(113キロ)が関取として奮闘している。今場所では100キロに満たない炎鵬が、入門から1年で十両に昇進した。彼らは大きな力士が相手でも闘えるという1つの潮流を作りだしている。

 他にも嘉風に代表される30代半ばのベテラン力士の活躍や、栃ノ心や宇良、阿武咲のように長期休場を選択肢とすることなど、これまでの大相撲にあまり無かった変化も見られるようになってきた。

かつてのエレベーター力士たちが。

 そして、もう1つ。最近の大相撲を語る上で重要な変化を紹介したい。

 高安、嘉風、玉鷲、そして栃ノ心。

 彼らの共通点、お分かりだろうか。それは、かつて番付を上下するエレベーター力士だったということだ。さらに彼らは、その状態から自分の殻を破り、上位でも勝てる力士になったということである。

 長らく相撲を観ているが、かつてこのような力士は稀だった。誰が居るだろうかと記憶をたどっても、あまり思い出せない。

これは、かなり夢がある話である。

 エレベーター力士というのは基本的にそうそう変わるものではない。上位で勝てる力士は最初から勝てるし、通用しない力士は通用しない。だからこそ、番付を駆け上がる力士は駆け上がるし、上位総当たりのところで安定する力士は安定する。

 そして、エレベーター状態を脱することはほとんどない。関脇や小結が1場所だけという力士が多いのは、つまりそういうことである。

 だがその潮流が、ここ最近変わってきている。かつてのエレベーター力士が、続々と上位で勝てるようになっているのだ。

 上位の壁に跳ね返されてきた力士が自分の相撲を磨き、トライアンドエラーを重ねて勝てるようになる。これは、かなり夢があることだと思う。

 最近で言えば千代大龍がここに含まれるし、番付を落としているが宝富士や勢や魁聖も上位で結果を残せるようになった力士だ。これだけ多くの力士が殻を破っているとすると、次は誰かと期待してしまう。

上位に定着してから3〜5年の力士を探すと。

 そこで傾向を探ろうと彼らの成績を振り返ると、面白いことが分かった。彼らの多くが、上位に定着してから3年から5年で勝てるようになった、ということである。

 たとえば高安は4年。玉鷲は3年。栃ノ心は大怪我を間に挟んで上位で勝てるようになるまで5年かかっている。

 理屈を考えてみると、上位の顔触れはここ数年そう変わっていないのだから、横綱や大関の相撲に慣れ、傾向が分かり、分析が出来るまでこれだけの歳月が掛かるということではないかと思う。

 では、上位に定着してから3〜5年の力士となると、果たして誰が居るのだろうか。すると実に面白い力士が浮上してきた。

 そう。遠藤である。

 遠藤はデビューから7場所、ほぼ1年で番付を駆け上がり、2014年に上位に定着した。今年は2018年だから、4年である。ここ数年、実に多くの力士達が番付を駆け上がってきたが、その中でも遠藤は最も大きな期待を受けた力士ではないかと思う。

 遠藤は、端正なマスクとスケールの大きな取り口が大きな魅力だ。そして何より一度土俵に立てば「何かやるのではないか」という期待感に満ちた力士だ。

遠藤は格上相手の勝率が非常に高い。

 この「何かやるのではないか」の源泉も、データの中に答えがあった。

 遠藤は、格上力士を相手にした場合の勝率が非常に高いのだ。

 ここまで遠藤は上位総当たりに近い場所を7場所経験している。絶不調だった1場所を除くと、対横綱の勝率は20%とそれほどでもないが、対小結関脇の勝率は43%、そして対大関の勝率はなんと56%である。

 しかも遠藤は、上位を相手に自分の相撲を取りきって勝つ。仮に負けても、可能性を相撲の中に見出せる。相撲の中に明確な意図が見え、無策のまま敗れることは無い。

 そういう相撲の内容に対して、そして結果に対して「何かやるのではないか」という雰囲気を感じるのではないかと思うのだ。

 遠藤は横綱や大関が相手でも勝てる力士ではあったが、15日をトータルで見ると負け越すことも多い力士だった。先の7場所で遠藤は6勝9敗が3回、そして7勝8敗を3回経験している。小結関脇、大関と互角に渡り合いながら遠藤に三役経験が無い理由は明らかだ。

 平幕相手での勝率が低いのだ。

 上位総当たりに近かった6場所で、対平幕の勝率は49%。なんと大関を相手にした場合よりも勝てていない。三役定着を目指すのであれば負けられない相手に星を落としてしまうのである。

 高安や豪栄道に勝っても、平幕に勝っても、1勝は1勝だ。取りこぼしが多い、というよりも相手に会心の相撲を取られてしまうところもひとつの特徴だ。遠藤の懸賞金の多さが、皮肉にも相手力士のモチベーションを高めてしまっているという話もある。

腐らず努力を重ねれば、4年後には花開く。

 前みつが取れると強いのだが、取るまでに土俵を割ってしまう。そして突き押しから前みつを取るという新戦法を試している間に大怪我をして、精彩を欠くようになってしまった。

 しかしそこから試行錯誤を経て、下位では確実に勝てるようになってきた。そして先場所は前頭5枚目で9勝6敗。その中には鶴竜戦の金星も含まれている。遠藤は進化して戻ってきたのだ。

 諦めずに、腐らずに、正しく努力を重ねれば4年後に花は開く。石の上にも三年と言うが、諺の世界の話ではなく現実の話として受け止められたら、多くの力士の勇気になるのではないかと思う。

 例えば、琴勇輝。

 例えば、千代鳳。

 そして、照ノ富士。

 怪我をして本来の相撲を取り戻せずに苦しむ力士のためにも、遠藤には期待したいのだ。

文=西尾克洋

photograph by Takeshi Honda/JMPA

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索