SB本多雄一が「最強ボディ」に激変!号泣と猛練習でレギュラー奪取宣言。

SB本多雄一が「最強ボディ」に激変!号泣と猛練習でレギュラー奪取宣言。

「最強ボディ!」

 グラウンドで大声が飛ぶ。野次将軍は松田宣浩だ。

 それは宮崎春季キャンプでの出来事。シートノックの時間だ。ホークスのそれはとにかく活気に溢れている。かつての主将・小久保裕紀が提唱した「アマチュアの手本になる練習を」との志がずっと息づいている。

 なかでも松田や川島慶三が率先してムードメーカーになる。特に松田の声出しはおもしろい。

 強肩捕手の甲斐拓也が投げれば「いいよ! バズーカーーー」。

 柳田悠岐が普通に捕球するだけで「よっ! 会長(今年から選手会長)」と煽て、先輩で主将の内川聖一にも「キャップ、キャップー!」と絡む。そのたびにスタンドがどっと沸いて、明るい雰囲気を作り出すのだ。

「最強ボディ!」

 その声の先にいたのは、二塁手の本多雄一だった。

「ったくもう、ずっと毎回言ってくるんだから(笑)」

 そんな風にボヤきつつも、まんざらでもない表情だ。

「オフの間に体重を4kg増やしました。ホークスでは選手全員がインボディ測定を定期的に行うのですが、筋肉量はプロ入りして最高でした」

 この話がスポーツ紙の記事になり、松田の“ネタ”に加えられてしまったのだ。

本多が逆方向にHRを!!

 その後オープン戦が始まり、3月6日のライオンズ戦(ヤフオクドーム)でのこと。

 2番セカンドでスタメン出場した2打席目だ。レフトへ流し打った打球が、なんと、フェンスを越えていった。

 着弾点は「ホームランテラス」だったとはいえ、本多が逆方向へホームランを打ったのを初めて見た。

昨季は「プロ12年間で一番悔しいシーズン」。

「僕も記憶にない。ヤフオクドームでのホームラン自体が5年ぶり? あー、開幕戦の満塁ホームランですね。打ったのは速いボールでしたけど、差し込まれた感じはまったくなかった。今まで感じたことのない感覚。

 まあ、僕はホームランバッターではないので、一発のことなんてすぐに忘れないといけないですけど、強い打球を打つことはテーマにしています。それに体が変わって、打席に立った時のドッシリ感が今はある」

 体重増はこれまでの取り組みとは真逆だった。

 その前のオフはグルテンフリー、いわゆる小麦断ちを行って体を絞った。キレを作るのが目的だった。しかし、昨シーズンは「プロ12年間で一番悔しいシーズン」になってしまった。出場62試合。打率.213に、盗塁数は3つだけ。自身としては初めて怪我以外での二軍落ちも味わった。

一日中、野球のことを考えてしまうほどの無念さ。

「シーズンが終わってからの彼の無念は、痛いほど伝わってきました」

 神妙な面持ちでそのように語るのは、野球用品メーカー「久保田運動具店」の社員である権藤裕徳だ。

 本多はグラブやスパイクなど同社の野球道具をずっと愛用している。権藤はもう10年以上もホークスに出入りしており、本多とは新人時代からの深い付き合いだ。オフの自主トレにも帯同し、寝食も共にするなど、ある意味では家族以上に長い時間を共有している関係である。

「あれは昨年11月。もう深夜でした。布団に入っていたらスマホにLINEが入ってきたんです。バットの形をこんな感じにしてほしいというリクエストでした。彼は秋季キャンプを免除されていたので、オフに入っている時期です。でも、ずっと野球のことが頭から離れないんだろうなと思いました」

オフもキャンプ期間と同様の厳しい練習。

 また、年の瀬のクリスマスが過ぎた頃も、本多は午前9時から午後4時近くまで日々トレーニングに励んでいた。

 走って、打って、ウエイトトレーニングをして。メニューも費やす時間もキャンプとほぼ変わらなかった。権藤もそれに付き合った。

「真冬の寒い、筑後川の河川敷をひたすら走っていましたね。ジョギングなんかじゃない。ものすごいスピードでした」

 そこに鬼気迫る表情を見たという。

「年明けの嬉野(佐賀)や都城(宮崎)での自主トレも一緒に行きました。今年は用意したボールの数が違いました。例年は30ダースほどでしたが、今年は80ダース。数多く打ち込むためです」

 ボールを集めて拾う時間も惜しんでバットを振りまくった。また、グラウンドを離れた日常でも意識の変化が見られた。権藤が食事に誘うと、以前の本多は決まって「何でもいいですよ」と返していたのだが、今年は自分が口にしたいものをはっきりと伝えるようになった。

後援会のパーティーで号泣した本多。

「そして、忘れられないのが去年の後援会の日です」

 それは権藤以外のほかの出席者からも聞いたのだが、本多は最後の挨拶で号泣しながらマイクの前に立ち、次シーズンへの決意を述べたらしいのだ。

 本多はホークスのお膝元の福岡出身。過去に2年連続盗塁王に輝いた、地元が生んだスター選手だ。パーティーには300〜400人もの数が集まったという。

 昨シーズンが始まる前、本多は迷った末に取得しているFA権を行使せずにホークス残留を決めていた。

「この世界、地元愛だけではやっていけないのは誰しも分かっていることです。だけど、自分が福岡で生まれ育ち、高校(鹿児島実業)と社会人(三菱重工名古屋)では離れましたが、プロ野球選手として福岡にまた戻って来られて今がある。その思いはずっと頭の中にありました。

 それに、これだけすごい声援を送ってくれるスタンドは、すべての球団を見渡してもなかなかない。やっぱり福岡がいい。またこのチームで優勝したい。他の球団でプレーする気持ちにはなれなかった」

 100点満点の「ホークス愛」「福岡愛」にファンが惚れ直したのは言うまでもない。

「感謝という言葉だけじゃ何か違う」

 その大事な2017年シーズンを「一番悔しい」年にしてしまった。後援会パーティーでどんな顔をすればいいのか――本多はかなり悩んだという。

「二軍で練習したり試合に出たりしていた時も、たくさんの応援を頂いた。それが凄く励みになりました」

 その時期に出会った言葉がある。

 報恩謝徳。

 受けためぐみや恩に対して報いようと、感謝の気持ちを持つことという意の四字熟語だ。

 後援会ではその四文字とサインを記したボールを全員に手渡した。

「感謝という言葉だけじゃ何か違う。そして今シーズン、僕がやるべきことは結果を残すこと。今年で13年目。レギュラーは剥奪されたけど、色々な経験もさせてもらった。それも勉強だと思っています。だけど今年はもう一度また、セカンドで試合に出る」

 笑顔で秋を迎えられるよう、かつてない強い決意を胸にし、そして最強の体を整えた。

 ホークスの正二塁手はまだ不確定だ。その地位を再び手繰り寄せることはできるだろうか。

文=田尻耕太郎

photograph by Kyodo News

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