大坂なおみが「クール」と認める男。西岡良仁、大ケガからの逆襲なるか。

大坂なおみが「クール」と認める男。西岡良仁、大ケガからの逆襲なるか。

 開催中のマイアミ・オープン。錦織圭が3回戦でファンマルティン・デルポトロに2−6、2−6の完敗を喫したことは、2人それぞれの現状を踏まえれば予想できなくもなかったが、それでもやはりショッキングだった。時間はかかる。手首のケガでトータル5年もの間苦しんだデルポトロが、ネットの向こうからその覚悟を説いているように思えた。

 負傷による長期のツアー離脱から復帰後の歩みが、そうトントン拍子といかないのは錦織だけではない。

 昨年のマイアミで膝の靱帯を負傷し、ベッドの上からコートに戻って来るまで9カ月を要した西岡良仁。負傷の直前、絶好調だった昨年3月に稼いだアカプルコでのベスト8の110ポイントとインディアンウェルズ4回戦進出の98ポイントを、1年後のここで立て続けに失ったことで、1月の復帰時に166位だったランキングは現在374位になってしまった。

全豪でシード選手を撃破したが……。

「けっこうヤバいですね。このランキングだとチャレンジャー大会でも予選から出ないとダメだし、アメリカだとワイルドカードもくれない。下手するとフューチャーズまで落とさないといけなくなる。今後、どうやって大会を選んでいくか迷っています」

 インディアンウェルズ1回戦で世界ランク102位のマルコス・バグダティスに敗れたあと、そう話した。ブランクの間も「調子がいいときのイメージのまま止まっている」と驚くほどポジティブだった西岡も、さすがに前途に不安があるらしい。

 復帰後2大会目の全豪オープンでいきなり第27シードのフィリップ・コールシュライバーを破ってみせたときには、この調子なら66位というプロテクト・ランキングを使える間に、もといた場所へかなり近づけるのではないかと思えたものだ。

 プロテクト・ランキングとは、ケガにより6カ月以上戦列を離れた場合、最後に出場した大会から3カ月間の平均ランキングを、実際のランキングとは別に保有し、復帰後にそのランキングを使って大会エントリーができるというシステムだ。1年以内の離脱の場合、使用できるのは復帰から9カ月間、また上限は9大会とされる。

デルポトロも1042位に落ちながら活用。

 このシステムを復活の足がかりとした選手の1人が、一昨年のデルポトロだった。2009年、20歳のときに全米オープンを制したデルポトロは、2010年に右手首を故障。3年もの時間をかけて完全復活したかと思った矢先、2014年に今度は左手首の手術に追い込まれた。

 2015年は2大会しか戦えず、2016年の復帰時にはノーランカーに等しい1042位――そんな状況からの再々出発だった。それをたった10カ月ほどで38位まで戻すのだが、この間にプロテクト・ランキングを使って4大会に出場。上限の9大会をフルに使う必要がなかったのは、グランドスラムを含む8つのツアー大会でワイルドカードを与えられたからだ。

 そこが西岡クラスの選手が置かれる状況とは決定的に違う。西岡は本人も言っている通り海外でのワイルドカードは期待できず、日本開催の大会数は乏しい。

『66位』が有効な大会は残り4つ。いきなり大物と対戦するリスクはあっても「できれば大きな大会で使いたい」という。あとはチャレンジャーの予選からでもフューチャーズからでも這い上がっていくしかないが、「予選3試合戦ってから本戦となると、体がもたない」とつぶやく。

 170cm、64kgという小さな体で、左利きとスピードという持ち味を最大限に生かしながら、我慢に我慢のラリーを重ねて1ポイントをもぎ取る西岡のテニスは、確かに大変なエネルギーを要する。これが自分の戦い方だという信念に支えられているといってもいい。

バグダティスも認めたすばしっこさ。

「不意を突かれたときの一歩目が出てこない」「まだダウンザラインへの展開が思い通りにいかない」「フォアの感覚が完全には戻ってこない」など、次々と出てくる“イメージとのギャップ”に悩まされている今は堪えどころだ。

 しかし、決して西岡の良さが失せているわけではない。インディアンウェルズの試合後にコートに現れたインタビュアーは、開口一番、「皆さん、今日は数ある娯楽の中からテニスを見に来て正解でしたね!」と発した。

 元トップ10プレーヤーで全豪オープン準優勝者でもある32歳のベテラン相手に、それほどおもしろい試合だったのだ。去って行く西岡の耳にそれが届いたかどうかわからないが、プロのテニスプレーヤーへの最高の賛辞の1つだっただろう。バグダティスもまた、「彼はすばしっこくて、どんなボールも拾ってくるから本当にタフな試合だったよ」と髭面の汗を拭った。

杉田祐一が認める「元気溌剌」ぶり。

 そんな西岡のテニスは、ファンのみならず身近な日本の選手たちにも多くの刺激を与えてきた。たとえば昨年ブレークした杉田祐一は、以前こんな話をしたことがある。

「2014年のアジア大会のときに西岡のテニスを間近で見て、いい選手だなと思いました。本当に楽しそうに、元気溌剌という感じでプレーしていたので。その頃の自分は、どうしたら勝てるのかという方法ばかり考えていたので、純粋に自分の力がどこまで通用するのか知りたくなったというか、そう思っていた昔に戻ったような気持ちでした」

 ちなみにその仁川アジア大会では、西岡が金メダルを、杉田は銅メダルを獲得した。

ニシコリじゃなくてニシオカ、超速い!

 また、2年以上前の話だが、大坂なおみに好きな男子選手を聞いたところ西岡の名前を真っ先に挙げた。

「前にどこかの大会で、たまたまスコアボードに、ニシ……なんとかという名前を見つけて、なんでケイ・ニシコリがこんな小さな大会にいるの!? と思って覗いてみたら、ニシコリじゃなくてニシオカだった。知らなかったけど、その選手はすごく足が速くて、ネバー・ギブアップのスピリットを持ってて、とてもクールだった」

 あとで聞いたのだが、西岡は大坂からツイッターを通じてメッセージをもらったことがあるという。

「『超速い!』みたいな(笑)。『あなたみたいに動いてみたい』って書いてあったから、『僕は君みたいに速いサーブを打ってみたいよ』って返しました」

 体格的に恵まれていなくても、大ケガをしても、いつも明るく笑い飛ばしてみせた西岡の復活へのチャレンジは、“らしさ”を失わない限り日本のテニスをまたさらに元気づけるような気がする。

文=山口奈緒美

photograph by Getty Images


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