西野監督へ「リベロ長谷部」の提言。実は名古屋時代は堅守速攻だった。

西野監督へ「リベロ長谷部」の提言。実は名古屋時代は堅守速攻だった。

 もはや、嘆いていても仕方がない。そろそろ無理にでも前を向きたい。

 サッカー日本代表のことである。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が電撃解任され、その生々しい背景話や日本サッカー協会(JFA)への批判など、ここ1週間は悶々とした空気の話題が並びに並んだ。

 しかしロシアW杯が6月にやってくることに変わりはない。時間の猶予もない中で、何ができるか。

 4月12日には、西野朗新監督の就任会見が行われた。技術委員長だった人間が指揮官に就くことに対して大きな批判が飛んでいるが、JFAの組織論に対してモノを言う時間すら、今はもうない。批評も分析も、すべてはW杯が終わってからである。

 ロシアの地で、西野ジャパンはどう戦うのか。注目はそこに集約される。就任会見で、新監督はハリルホジッチ監督が掲げた縦に速い攻撃やデュエルをベースにしたフィジカルサッカーを全否定はしなかったが、日本らしい組織的なプレーや攻撃連係を再度呼び覚まそうとしていることを示唆した。

ぎこちなかった選手たちの復活を。

 そして、選手たちに真っ先に求めるものとして、こんなことを話している。

「(ハリルジャパンから)継承していくスタイルと、さらに選手たちがクラブで見せているような自分のプレーをもっと素直に代表で表現してほしい。ストレートに選手がプレーできる状況を作りたい」

 つまり、ハリルジャパンでは本来のプレーを発揮できていない、ぎこちない選手が多かった。西野監督は技術委員長として、そう見ていたようだ。さらに日本人選手が“らしさ”を取り戻すためには、「技術力を最大限出したり、規律や組織の化学反応をベースにしたサッカー」が必要だと考えている。

 西野監督の戦い方とは。

 その代名詞となるのが、ガンバ大阪時代に見せていた攻撃的なサッカーだ。遠藤保仁という稀有なプレーメーカーを軸に据え、パスを繋いで試合の主導権を握る、強気な攻撃スタイル。ガンバ全盛期を作り出したのは紛れもなく西野体制であり、そこで繰り広げられた戦い方がそのまま指揮官の色として、定着している。

西野監督と「速い攻撃」の意外な関係。

 しかし、「僕は、結構柔軟に戦い方を変える監督というイメージですね」と話す選手がいる。

 かつて、名古屋グランパス時代に西野監督から指導を受けた、現FC東京のFW永井謙佑。西野監督の就任会見翌日、彼に当時の印象を語ってもらった。

「きっと、みんなガンバの時のイメージが強いと思うんです。パスを繋いで、ポゼッションサッカー主体で攻めるというスタイルですよね。ただ、名古屋では守備ブロックを作って、そこからショートカウンターを狙う戦い方をしていました。僕やケンゴ(川又堅碁、現ジュビロ磐田FW)が前に入って、速い攻撃を意識していましたね」

 古くは1996年のアトランタ五輪で、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」を起こしたことでも知られている。当時のチームはアジア予選までは前園真聖や城彰二、中田英寿らを中心に攻撃的なスタイルで戦い抜いたが、五輪本戦では相手との力量差を考え、守備的なスタイルに変化させていた。

フォーメーションは3バックの可能性も?

 フォーメーションについては、ガンバ全盛期の4-4-2システムで相手を圧倒するサッカーのインパクトが強いため、4バックが基本戦術とも見られがちだ。ただ、アトランタ五輪代表や2005年にJ1優勝を果たした当時のガンバでは、3バックを採用している。

 過去を振り返れば、任されたチームの環境や条件に応じて、柔軟にサッカースタイルを変容させていることがわかる。

 ロシアW杯まで時間がない中、閉塞感のある代表チームを変えなければならない。メンタル面に関しては、新たな指揮官と体制で戦うことで、自ずと新鮮な空気が流れ、選手も気分は刷新されるだろう。

 一方、ピッチ内ではより具体的なアプローチが必要である。西野監督が会見で話した内容は、まだ具体性に欠けた文言でもあった。

 ゼロからチーム作りをする時間もない。大幅に戦術のベクトルを切り替えることも現実的ではない。今ある特長と戦力をベースにせざるを得ない、時間的状況。そんな中、それほど大きな変化を伴わないまでも、選手個々もチームも相乗効果で好転する策がある。

 長谷部誠のリベロ起用、である。

リベロ長谷部のバランス感覚は出色。

 所属するドイツのフランクフルトでは、もはやお馴染みのポジション。昨季2016-17シーズン途中から、クロアチア人のニコ・コバチ監督は長谷部を本職のボランチと3バックの中央の両位置で起用している。

 現地の試合も取材したが、3バックに入った長谷部は非常にバランス感覚に長けたプレーをする。

 周囲では体が頑強な選手たちが敵と球際で戦う。もちろん長谷部も局面では激しい争いに身を投じるが、周りで繰り広げられる数々のデュエルの先の展開を予測し、ボールを奪い、拾う。そしてマイボールにして味方に配給するというリズムが良い。

 先を読むポジショニングは彼のクレバーさが生かせるところ。パワーが前面に押し出されるブンデスリーガの舞台で、長谷部が出色の存在として輝ける理由である。

“クラブでのプレー”という方針とも一致。

 一方、これまで日本代表では本職のボランチで長らくプレーしてきたが、率直に言ってここ最近のパフォーマンスは安定感を欠いている。出場試合を振り返っても、昨年11月のブラジル戦や3月のマリ戦、ウクライナ戦ではイージーなパスミスが散見され、守備面でも後手に回る場面も。

 特に球際での競り合いでは、ハリルホジッチ監督が求める1対1の強さや耐久力という面で相手選手に上回られていた。DFの前で敵を止めるフィルター役としては、正直不十分な働きだった。

 長谷部は、西野体制でも主将を任されるだろう。未だにピッチ内外で代えの利かない存在だとも見られている。今の彼にピッチでよりスムーズに力を発揮させるためには、リベロ起用は現実的な策になる。

 それは西野監督が語る「クラブで見せているような自分のプレーをもっと素直に代表で表現してほしい」という言葉とも、合致する起用法だ。

 長谷部を中央に、両脇に日本人選手の中ではデュエルを武器にできる吉田麻也と槙野智章が並ぶ3バック。左右の両ウイングバックには、サイドを上下動する排気量を持つ長友佑都と酒井宏樹が入る。

 攻撃に出る際には長谷部が中盤のアンカーの位置まで上がり、陣形を押し出しながらビルドアップに参加。反対に相手に押し込まれる場面では、両サイドも下げた5バック気味で守る割り切りも必要かもしれない。

人数をかけて守る方法は“アリ”。

 ハメス・ロドリゲスを中心に攻撃陣が流動的にしかけてくるコロンビア、サディオ・マネを筆頭にスピードとテクニックに長けた攻撃が脅威となるセネガル、そして最前線にかけひき上手なロベルト・レバンドフスキが君臨するポーランド。対峙する各国に鑑みても、長谷部を最終ラインに組み込んだ守り方は、“アリ”である。

 まだハリルホジッチ監督が解任される前の時点ではあるが、日本のディフェンスリーダー吉田はこう話していた。

「攻撃はなかなか難しいところはあるかもしれないけど、守備に関しては1週間、10日で詰めてやればオーガナイズできないことはないと思う」

 4バックのライン設定やコンビネーション構築よりも、3バック(5バック)は自陣ゴール前に人数をかけて守るシンプルな形でもあることから、それほど時間を要さない。どうしても守備偏重なイメージはあるだろうが、長谷部の前後の位置取り次第で攻守のバランスも十分取ることができる。

 何より、西野監督も採用経験のある布陣であり、代表の主力選手も適材適所で当てはまる、『長谷部リベロ案』――。

 とにかく時間がない、西野ジャパン。眼前にある材料で、最善の調理ができるか。

文=西川結城

photograph by Getty Images


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