Bリーグ平均入場者2位は北海道!レジェンド折茂武彦が語る運営術。

Bリーグ平均入場者2位は北海道!レジェンド折茂武彦が語る運営術。

 レバンガ北海道が好調だ。3月にリーグから発表されたB1の平均入場者数ランキングでは、昨季の平均より約1000名多い3716名を記録した(※B1リーグ第26節終了時点での平均入場者数も3726名を記録)。

 これは圧倒的な動員力を誇る千葉ジェッツに続く2位の成績だ。

 3月の理事会では大河正明チェアマンも、「よく立ち直ったとの意見が理事会でも上がりました。今シーズン半期で黒字、集客も好調で債務超過解消の目途が立っています」と評価している。今シーズンはまだ終了してはいないが、2016-'17シーズンのB1平均入場者数全体7位という数字から見ても、着実な成長ぶりがうかがえる。

 さらに来季B1残留に必要なクラブライセンス交付条件もクリアした。

 実は昨年6月期の段階では2億円を超える債務超過を抱え、ライセンスの交付にも時間を要した。しかし、今年は3月中旬に行われたリーグ理事会での資格審査でもリーグ側に提出した資本計画が認められ、今期末で解消できると判断され、一発でB1クラブライセンスが交付された。

経営の“け”の字も知らなかったが。

 さかのぼること7季前の2010-'11シーズン。当時、折茂武彦が所属していたチームの運営会社が経営不振によりリーグ(JBL)から除名処分を受けチームが消滅。それを受け、北海道にプロチームを残すために新たなクラブ「レバンガ北海道」を立ち上げた。折茂はそのトップに就任し、現在も代表を務めている。

「経営の“け”の字も知らず、経営の勉強をしたこともなかった自分が、いきなり飛び込んだわけですからね。恐怖心はありませんでしたが、(経営を)始めてから、“これはちょっとすごい次元のことをやり始めてしまったんだ”ということに気づきました」

 選手としてトレーニングを行う傍ら、スポンサー探しのために北海道中を奔走し、何度も頭を下げた。ときには資金繰りに行き詰まり、私財を投げ打ったこともある。

「あれだけの債務を抱えてしまったのは自分の責任です。私が不甲斐ないばかりにそういった結果を招いてしまった。レバンガを応援してくださる多くの方々に迷惑をかけてしまいました」

 社長業と選手業を並行しながら、過去の苦い経験を糧に組織を立て直し、レバンガを成長著しいチームへと変化させた。

 では、今季観客動員が好調な理由は一体何なのか。折茂からは意外な言葉が返ってきた。

ファイターズ、コンサドーレがある中で。

「周りの方々から、これだけ観客動員数が伸びている理由は何ですか? どんなことをしているんですか? とよく聞かれるのですが、他のクラブと比べてどこかに大きな差があるかといったら、そうではないと思いますよ」 

 これを行なったから観客動員が増加した、という決定打はない。継続的かつ地道な活動で道内における認知度を高め、結果的に観客動員へとつながっていった。

「北海道にはプロ野球・北海道日本ハムファイターズやサッカー・北海道コンサドーレ札幌が根付いていた。最初の頃は、レバンガの存在を知らない道民が多かったのも事実です。そんな中で我々は地域密着を掲げ、少しずつですが様々な活動(子ども達へのバスケット普及など)を行なってきました。また、テレビや新聞、雑誌など様々なメディアで頻繁に取り上げていただき、幅広い方々に知られるようになったことも大きかったですね」

栗山監督、稲葉氏らとのコラボデーも。

 クラブで働くスタッフの意識の向上も観客動員数増の要因の1つだ。

「以前は売上なども含め、目標数値を高いところに設定しすぎてしまった。肝心な、目標を達成するために何をしなければならないのかが徹底されていませんでした。それが一昨季より昨季、昨季より今季といったように徐々に徹底され始め、みんなが目標達成に向けてより本気で考えるようになった。

 ファンの方に何を提供すれば喜ばれるのか、何を求められているのか、そういったことを常に頭で考えながら、試合(ホームゲーム)ごとにアイデアを出し合い、ブラッシュアップして実行したことも寄与していると思います」

 例えば、1月には選手たちが普段ホームで着用する黄緑ではなく、ファイターズのカラー・スカイブルーのユニフォームで戦った。また日本ハムの栗山英樹監督や稲葉篤紀スポーツ・コミュニティ・オフィサーらが試合を盛り上げる「レバンガ北海道×ファイターズコラボレーションズDAYS」が開催された。

 また3月の千葉ジェッツ戦では、「47歳社長対決」と題し、折茂と千葉・島田慎二社長どちらがより多くTシャツを売れるかを競うなど、コート内外で様々なイベントが企画され、ファンを楽しませるとともに、SNS上でも話題となった。

僕たちにできることはまず、やってみる。

 もちろんすべてが成功ばかりとはいえない。ときには失敗にも直面してきたが、それでも決してマイナスには捉えず、むしろ思考をポジティブなものに変換していく。

「自分たちの試みに対し賛否両論あります。失敗、ときにはお叱りを受けることもあります。日々、いろいろなことがあるのですが、それを怖がって守りに入っていては何もできません。だからこそ、とにかく僕たちにできることはまず、やってみるんです」

 さらに、プロバスケットボールクラブである以上、選手たちがコート上で見せるパフォーマンスそのものはもちろん、勝敗や順位も観客動員を左右する。チームが強くなっていくことも折茂は必要な要素の1つだと考えている。

「やはり勝負の世界ですから、勝たないとなかなかお客さんは増えないですよね。今季戦っている東地区は激戦ですが、昨季よりもチャンピオンシップに近づくようなゲーム展開を見せられていることも大きかったと思います。チーム自体も成長しないと厳しくなるでしょう」

“将来ここでプレーしたい”と思わせたい。

 債務超過も解消され、来季は選手の補強などの新たな展開が期待される。

「クラブ的に余裕があるわけではありませんが、代表になった当初よりも見えてきたものもある。これから選手の補強なども考えていかなければなりませんし、選手がバスケットに集中できる環境整備もより行なっていかなければならないと考えています。

 また、今季はホームゲームで様々な演出も少しずつ行なってきましたが、今後は子どもたちに、より“将来ここでプレーしたい”と思わせるようなプレー、そして会場づくり、サービスの提供にさらなる力を注いでいきたいですね。

 まずは当たり前のことを当たり前に、きっちり、スピーディーにこなしていく。今季の反省を踏まえて、来季どうやっていくかはクラブとしてはもちろん、個人としても考えていかなければなりません。シーズンが終了したら、あらためて、スタッフとも個々に面談の場を設け、ヒアリングする予定です。うちのような小さなクラブは一人ひとりが戦力にならなければ難しい分、そこは私自身もケアしていかなければいけないと考えています」

観客動員の目標を現実的にした理由。

 Bリーグ3シーズン目はどんな青写真を思い描いているのだろうか。

「今季開幕前に平均観客動員数の目標を、昨季の2796名から大幅に増やそうとしていたんです。だからストップをかけました。なぜかというと、その数字を達成するための具体的な策が出ていなかったからです。それに、人は大幅に数字を増やしてしまうとあたふたしてしまいますからね。より現実的な数字を目標に設定したほうが、自分たちが何をすべきかが明確になる。

 例えば、仮に平均入場者数が3800名であれば、現実的に次のシーズンは4000〜4500名あたりが目標になってくるでしょう。僕は4000名ぐらいでもよいのかなと思っています。ただ、微増でも、この先、その数字を落としてはダメ。少しずつでも、毎年数字を右肩上がりにしていくことが大切。

 人間は目標を達成しないとメンタルが落ち、モチベーションがなくなる。だからこそ、毎シーズン、観客動員数や売上を伸ばしていくことが大事。同時に、中期、長期的なビジョンもしっかり描いていないと、一気にやろうとするとすべてが壊れてしまいます。

 少しずつでも着実にクラブを大きく、そしてチームを強くしていければ。ただ、今季、現時点ではこれだけの数字を残すことができていますが、来季、同じことをやったら同等の動員を確保できるかはわかりません。ですから、今年やってきたことを継続することはもちろん、さらに進化させて来季に臨むことが大事。毎シーズン、その繰り返しになっていく」

Bリーグ全体を日本に普及していくために。

 選手とクラブ代表、Bリーグ理事と三足のわらじを履く折茂は、それぞれの立場で気を引き締め直す。

「レバンガもそうですが、Bリーグ全体が、これからもっと日本で普及していかなければならないし、選手も経営者も、バスケットに関わるすべての人が考えていかないと。バスケットをよりメジャーなスポーツにすることは、クラブにとってもリーグにとっても、そして選手にとっても意味のあること。そこはブレずにこれからも努力していかないと」

ビジョンを確立させ、向かっていく。

 バスケットをメジャーにすることは、折茂が若い頃から描いてきた夢でもある。

「Bリーグが開幕して1、2年で何かを変えるということは難しいことですが、今後何をしていくかによって、バスケット界が発展していくのか、逆にダメになるのかが決まる。すべてはこれからにかかっているんです。大事なことは、10年後、20年後、このリーグがどうなりたいのかというビジョンを確立させ、それに向かっていくこと。これはクラブに置き換えても同じことが言えると思います。

 例えば本当に我々のような大きな母体がついていないチームにとっては1年、1年が勝負という現実がありますが、そこから目を逸らすことはできません。ただ、先々の明確なビジョンを掲げ、そこに近づく努力をしなければ意味がありません」

 どんな逆境に見舞われても決して屈せず、目の前の現実と向き合ってきた折茂。バスケットボールを愛し、北海道のため、そして道民に愛されるクラブを目指し走り続けてきた日々があったからこそ、今、レバンガ北海道が存在する。

「本当にうちはどん底からのスタートでした。今はようやく他のクラブと並んだというだけ。普通になっただけだと思っています。本当の意味でこれからがレバンガ北海道のスタートです」

文=石井宏美(Number編集部)

photograph by B.LEAGUE

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