桜庭和志手がける格闘技の「団体戦」!『QUINTET』の新しさと無類の楽しさ。

桜庭和志手がける格闘技の「団体戦」!『QUINTET』の新しさと無類の楽しさ。

「これは世界初、人類初の試みです」

 大会審判委員長、日本ブラジリアン柔術連盟会長でもある中井祐樹は、大会のオープニングで言った。

 4月11日、両国国技館で開催されたのは『QUINTET.1』。桜庭和志が運営会社の代表を務める新イベントだ。

 ルールは打撃なしのグラップリング。5人1チームの団体戦、4チームによるトーナメントで、なおかつ柔道で見られるような「抜き試合」形式である。中井の言うように初の試みだけに、中井も桜庭も事前取材では「やってみないと分からない」と口を揃えた。

 試合場はリングでもケージでもなくレスリングマット。軽度の反則、消極的な闘いぶりには「指導」が与えられ、「指導」3回で失格となるルールは選手を「動かす」ためのものであり、レスリング出身の桜庭らしいとも言える。こうした独自性によって、日本では「打撃がないし寝技ばかりで分かりにくい」、「膠着が多い」と言われてきたグラップリングを“見るスポーツ”にできるか。それが今大会の大きなテーマだった。

所の芸術的関節技から立て続けに「一本」。

 結論から言えば、今大会は初心者も含めた観客(ネット中継の視聴者)が充分に楽しめる内容だった。1回戦、決勝トータル17試合のうち、一本決着が10。「引き分けによる星の潰し合いが延々と続く」といった状況にはならなかった。指導の数も計3つで、審判の1人に聞いたところ「指導を出すタイミングがないくらい選手がアグレッシブだった」そうだ。

 1回戦第1試合、桜庭率いるHALEO Dream Teamと石井慧を大将に据えたJUDO Dream Teamの対戦は、最初の2試合が引き分けだったものの中堅の所英男が腕十字を極め、会場のムードを一変させた。

 後転するように倒れこみながら相手の足元に潜る、通称“イマナリロール”から、足関節をフェイントにした腕十字への連携だ。大胆かつ鮮やかな、所らしいサブミッション。ネット上では「クレイジー・スピニング・ブレイクダンス・アームバー」と呼ぶ者も現れた(本人は「ラッキーアームバー」と謙遜していたが)。

 この1回戦は、HALEOチームの副将マルコス・ソウザがJUDOチームの大将・石井慧と引き分けて終了した。この試合は体重差が20kg以上あったため、試合時間は通常の8分ではなく4分。軽量のソウザが石井の攻撃を耐え切って、いわば“心中”したわけだ。クールなイメージの石井が躍起になって攻める姿も新鮮だった。

スペシャリストの圧倒的実力に酔いしれる。

 続くPOLARIS Dream TeamとSAMBO Dream Teamの1回戦はPOLARISチームの勝利。先鋒のクレイグ・ジョーンズと次鋒マーチン・ヘルドが得意の足関節技を極めまくり、3人残しての決勝進出である。POLARISとは、イギリスのプロフェッショナル柔術・グラップリングイベント。ジョーンズはそのチャンピオンであり、コアな格闘技ファンからすれば“待望の初来日”だった。

 POLARISチームは、決勝でも強さを見せつける。先鋒グレゴー・グレイシーがHALEOチーム唯一のヘビー級ジョシュ・バーネットを引き分けで“潰す”ことに成功。次鋒のダン・ストラウスは中村大介、所を極めると副将の桜庭と引き分けた。これで大将vs.中堅の闘いへ。圧倒的不利のHALEOチームはソウザが宇野薫に腕十字で勝ったものの、そこで力尽きた。優勝を決めたのは副将ジョーンズのヒザ十字固めだった。

団体戦・抜き試合では引き分けも“見どころ”に。

 桜庭やジョシュ、所めあての観戦(視聴)で、ジョーンズやヘルド、ソウザを知らなかったという人たちにも、彼ら寝技のスペシャリストは大きなインパクトを残したはずだ。“極めっぷり”で魅了するだけでなく、団体戦における役割自体が個性あるいはフックになるということもある。

「ここで、このソウザって選手が石井と引き分ければ桜庭チームの勝ちだ」と思えば、攻防を見る集中力も高まるというもの。引き分けが単なる不完全燃焼ではなくチームへの貢献になることも。それが団体戦・抜き試合の妙味と言っていい。

 団体戦での闘いは、選手にとっても新鮮だったようだ。

「チームでやると(個人戦と)違いますね、楽しかったり嬉しかったりが」と桜庭。

 宇野は「個人的には何もできなくて悔しいですけど、チームが優勝できたのは嬉しいですね。みんなで勝ち取った勝利というのは初めて味わう感覚です。1人が勝つと、チームとして盛り上がる」とコメントしている。

ジョシュ「我々はUWFチルドレンだから」

 ちなみに入場も全員一緒で、HALEOチームは『UWFメインテーマ』を使用。桜庭によると「周りの人の意見も聞いて、みんなで決めました。僕ら“プロレス同好会”なんで」とのこと。

 ジョシュは「我々はUWFチルドレンだから」。所は大会翌日「格闘技はじめた頃の自分に、Uのテーマで入場できる日が来る。てのを教えてあげたい」とツイートしている。

 もちろん、試合の面白さは、基本的に“選手ありき”。同じ形式・ルールで試合をしても、メンバーによっては膠着、引き分けの連続になる可能性も否定できない。逆に言えば、今大会は選手選考の段階からプロデュースが成功したと言っていいだろう。

選手、関係者の間でも話題沸騰!?

 AbemaTVでの無料中継、UFCファイトパスでの世界配信もあり、QUINTETは選手や関係者にも大きな話題となった。

 RIZINのスタッフが(架空の)代表メンバーをツイート。海外の選手もSNSでチーム編成を考案している。

 元修斗王者で、現在は選手育成、大会運営に手腕を発揮している勝村周一朗は、初心者向け練習試合でQUINTETルールを採用したいと言う。「5人の合計年齢210歳以上とか」の「アラフォーおじさんQUINTET」だそうだ。

 こうした想像や妄想、「こんな選手に出てほしい」、「こんな形でもできるんじゃないか」と考えることも格闘技の楽しさだ。

 新しいやり方で“楽しいもの”を提供し、見る者を刺激する。桜庭はグレイシー一族に連勝していた頃と同じやり方で、大会を作り上げたのだ。

文=橋本宗洋

photograph by Susumu Nagao

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