ガンバ、7戦目の今季リーグ初勝利。クルピ流チーム作りの魅力と懸念。

ガンバ、7戦目の今季リーグ初勝利。クルピ流チーム作りの魅力と懸念。

 荒木友輔主審が4分間のアディショナルタイムを終える長い笛を吹いた瞬間、安堵に似た歓喜がパナソニックスタジアム吹田に広がった。

 ジュビロ磐田の猛攻を耐え抜いた守護神の東口順昭は、感極まってピッチ上にうずくまり、初瀬亮は思わず座り込んでいた。

 シーズン終盤の大一番に勝ったかのようなリアクションが示すように、ガンバ大阪にとって4月11日の7節ジュビロ磐田戦はシーズン序盤の大一番だった。

 前節のヴィッセル神戸戦ではスコアレスで推移した後半のアディショナルタイムに悲劇的な決勝点を献上。土壇場で競り負けたことで、チームは明らかな危険水域に足を踏み入れかけていた。

 この時点の順位に一喜一憂する必要はないが、6節を終わった段階で得た勝ち点はわずかに1。J1リーグ復帰1年目で三冠冠を独占した2014年は6節段階で勝ち点5からの劇的なV字回復を果たしたが、降格した2012年でさえ、6節を終えて勝ち点4を手にしていたのである。

芸術サッカーを好むクルピ監督だが。

「最後まで攻め抜くチームを目指す」

 1月の新体制会見でこう話したように、レヴィー・クルピ監督は攻撃サッカーの再構築を宣言するなど攻撃サッカーの信奉者と見られがちだ。

「私はフッテボウ・アルテ(芸術サッカー)を好む」と公言してはばからない指揮官ではあるが、常に重視するのは攻守のバランスだ。

「サッカーはいかに攻め、いかに守るか。いい攻撃がいい守備を生み、いい守備がいい攻撃を生む」

 現役時代はザゲイロ(CB)として活躍した指揮官だけに、ガンバ大阪をかつてのような

「2点取られるが3点取り返す」スタイルに回帰させるつもりは毛頭ない。

東口は「もっと面白いサッカーになる」。

 リーグ戦では開幕からずっと勝利から遠ざかっていたものの、チーム状態は明らかに上向き始めていた。

 最後尾でチーム全体の流れを見る、東口の言葉はそのバロメーターの1つだ。

「徐々に監督の要求をやれている手応えはある。後は攻守両面でその色を出せればもっと面白いサッカーになっていく。あとちょっとで勝てるところまでチーム状態は上向いて来ている」

 神戸戦こそ無得点で敗れたもののルヴァンカップでは2試合連続で4得点。リーグ戦でもファン・ウィジョが柏レイソル戦とFC東京戦でそれぞれ2ゴールを叩き出すなど、攻撃陣は徐々にエンジンがかかり始めていた。

 一方で、課題は守備時のリスクマネージメントだった。今野泰幸が不在のボランチが泣き所となっており、3月に獲得したブラジル人ボランチのマテウスも、187cmのサイズと左足のキックセンスを持ち味とする攻撃的なタイプ。

 両サイドバックを高い位置に配置し、しばしば三浦弦太とファビオの2枚のCBで対応する形となる最終ラインだけに、ボランチの守備が生命線となるのだが、神戸戦では遠藤保仁が突破され、マテウスはゴール前に帰ることさえ放棄。みすみす失点を許している。

クルピ監督のトレーニングでの指導は……。

「バランスが取れていないのは私の責任。目指すようなサッカーが選手に伝え切れていない」(クルピ監督)

 昨年までの指揮官、長谷川健太監督はポジショニングや、守備での約束事を徹底したのに対し、クルピ監督はほぼ紅白戦形式の練習の中でマークやポジショニングを指摘するのみだ。

 現在も2面ある練習グラウンドでは、時にU-23の宮本恒靖監督が少人数の選手たちに、様々なシチュエーションを設定してポジショニングを浸透させているが、クルピ流はまるで対照的だ。

 だからこそ、選手たちは山口智コーチらコーチングスタッフのアドバイスも得ながら、自発的に守備の改善にも取り組んで来た。

セレッソ時代よりサイド攻撃を重視。

「もうちょっとで勝てる」という東口の言葉は、決して強がりではなかった。磐田戦では課題だったチームが目指す方向性が明確に見て取れた。昨季2敗を喫した際には最終ラインからのロングボールに手こずったこともあり、立ち上がりからハイプレスを繰り出した。

「できる限り高い位置でボールを取りたい、というチーム全体の考えが統一できていた」(遠藤)のだ。4分の先制点につながるCKも、連動したプレスから相手ゴール前に進出したマテウスが得たものだった。

 足下のプレーに難がある藤春廣輝が負傷したこともあり、パスワークにも絡める初瀬亮が神戸戦に続いて左SBで先発したのも大きい。ボールの預けどころが増えると、やはり遠藤がボールに絡む回数も増えていく。

 攻撃では自由を重んじる指揮官だが、セレッソ大阪時代との違いは、よりサイドからの攻めにこだわっていることだ。近年のブラジルサッカーではブロックを形成し、堅守速攻のチームが幅を利かせている。

 昨季まで母国で指揮を執ったクルピ監督は、改めてサイド攻撃の重要性を認識したという。

「攻撃に関しては迫力を出せている場面もあるし、相手のゴール前で決定的な場面も作れている」

 そう語った倉田秋は、明らかに攻撃面での手応えを感じている様子だが、無冠に終わった過去2シーズンとの違いは、頼れるエースFWが台頭したことに尽きるだろう。

遠藤も認めるファン・ウィジョの決定力。

 遠藤は磐田戦後にこう言うのだ。

「決めるべきところで決めるFWがいるのは大きい。チャンスで決めてくれると後ろが楽になる」

 引き分けに持ち込まれてもおかしくなかった磐田戦は、後半終了間際にカウンターから右足を振り抜いたファン・ウィジョの貴重な追加点で勝負あった。得点ランクトップタイとなる通算5点目を決めた韓国代表FWの一撃で、ガンバ大阪は2−0で勝ち切った。

 一昨年は2ケタ得点者がゼロ、昨年は辛うじて長沢駿が10点をマークしたものの、絶対的なストライカーの不在が長谷川ガンバの悩みの種だった。

「去年までは力一杯シュートを蹴っていたが、今年はコースを突く意識を持っている」(ファン・ウィジョ)

 日々の居残り練習で、確実にシュート精度の意識を高めているファンだが、磐田戦では長沢が左腿を負傷。もはや計算が立つFWはファンのみという苦しい状況でもある。

「逆に今は試合が多いほどいい」

 1月から12月までスケジュールがぎっしりと詰まるブラジルサッカー界は、世界指折りの過密なカレンダーで知られる。だからこそ近年は完全ターンオーバーなどで連戦を乗り切る指揮官が増加している。

 しかしクルピ監督は「逆に今は試合が多いほどいい。チームがまず安定することを優先したい」と連戦の中で、連係を深めるつもりである。

「レギュラーの選手たちが充実したいいサッカーをできるようになれば、何人かの選手を入れ替えることが可能だが、我々はまだそういう状態にない」(クルピ監督)

 しかしながら、サッカー選手とて人間だ。90分間、常に体を張りながらハードワークを欠かさないファン・ウィジョに懸念されるのは、疲労の蓄積が招く負傷である。

「底辺対決」となる次節のV・ファーレン長崎戦以降も、重要な戦いを控えているガンバ大阪。ただでさえ手薄な戦力、そしてようやく手にした感があるエースFWを失わないマネージメントが不可欠なのだが……。

文=下薗昌記

photograph by J.LEAGUE


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