国民の心に火をつけるリバプール。CL制覇を実現できる幾つかの理由。

国民の心に火をつけるリバプール。CL制覇を実現できる幾つかの理由。

 CL優勝か――。

 4月半ばのイングランド国内は、にわかにざわめいている。

 プレミアリーグは、首位のマンチェスター・シティが戴冠秒読み状態に入った。そのシティを、リバプールはCL準々決勝で合計スコア5−1で下した。

 プレミア対決を制したリバプールは欧州制覇できるか。サッカー好きな庶民の一大関心事と言えるかもしれない。

 そもそも、リバプールは英国人の琴線に触れるクラブだ。例えば3点差を追いつき、PK戦の末にミランを下した2004-'05シーズンのCL制覇は、「イスタンブールの奇跡」として記憶されている。

 また今から3年前には、1989-'90シーズン以来のリーグ優勝に肉薄。“レッズ”生え抜きのキャプテンだったスティーブン・ジェラードにとって悲願達成のラストチャンスだったこともあり、タイトルを争っていたシティのファンを除く全国民がリバプールの背中を押している、と言われたほどだ。

 加えて、現チームは指揮官がいい。ユルゲン・クロップ監督は攻撃的スタイルを好み、若手の登用を恐れず、笑顔とユーモアを絶やさない。そのキャラクターは、好きにならない方が難しいだろう。

コウチーニョがバルサに去っても一体感。

 クロップ体制3年目のチームに、超ワールドクラスは不在だった。今冬の移籍市場ではフィリペ・コウチーニョをバルセロナに引き抜かれたが、醸し出す一体感を強めながら成長を続けている。

 この流れに「贔屓心」がくすぐられないはずがない。

 リバプールがCLベスト4入りを決めた直後、国内ブックメーカーがつけた優勝オッズはレアル・マドリーとバイエルンに次ぐ3番手扱い。だが、テレビ解説者として「我がクラブ」の準決勝進出を見届けたジェラードは、進行役のガリー・リネカーに「優勝できそう?」と訊かれて、間髪入れずに「イエス」と答えていた。

 リバプールのU-18監督であるジェラードのクラブ愛が強いのは間違いない。とはいえ準決勝でレアル・マドリー、バイエルン、ローマのいずれと当たったとしても、リバプールが勝ち抜ける可能性は十分にある。

 決勝トーナメントに入ってからの4試合でR・マドリーは5失点、バイエルンは2失点、ローマは6失点。バイエルンの堅守は光るが、今季のCLで計23ゴール9アシストを誇る3トップを擁するリバプールとしては、いずれも希望の持てる相手と考えられるからだ。

フィルミーノ、マネ、サラーが絶好調。

 リバプールの前線トリオは、個々の持ち味が異なる点でも頼もしく、相手にすれば嫌なトリオに違いない。中央のロベルト・フィルミーノは、26歳ながら熟練者のごとく得点に絡む一方で、精力的なプレッシングを欠かさない。左サイドのサディオ・マネは、抜群のスピードを持ち、ゴールを目指す姿勢もよりダイレクト。

 そして逆サイドのモハメド・サラーは今季、軽快なフットワークと冷静沈着なフィニッシュでゴールに絡むワールドクラスに大化けした。

 試合を重ねるたびに、3人の呼吸は良くなる一方だ。準々決勝の第1レグ(3−0)では、フィルミーノが敵を脅かした流れからサラーが先制のネットを揺らし、サラーのクロスからマネがヘディングで3点目を奪取した。

 先制を許したリターンマッチ(2−1)でも、サラーとマネが絡んで同点のアウェーゴールをもぎ取っている。そして2点目は、GKエデルソンにプレッシャーをかけようとしたサラーの動きが、バックパスの選択肢を消されたCBニコラス・オタメンディの動揺を招き、間接的にフィルミーノのボール奪取とゴールをお膳立てした。

ここまで39ゴール11アシストの大暴れ。

 とりわけサラーは、相手DF陣にすれば手がつけられない状態だ。第2レグでのゴールの時点で、移籍1年目にしてで公式戦合計39ゴール11アシストの数字は圧巻だ。その数字に裏付けされた自信は、プレミアのFWでも最高レベルと言って差し支えない。

 第2レグでのゴールは一見すると、マネとの1対1を相手GKが防いだ後のこぼれ球を拾って決めただけとも映りかねないが、身を投げたGKの手が届かない位置に回り込み、角度が厳しくなった位置からDFの頭越しにチップキックで決めている。この同点弾は、ゴール前での自信を示す最新例である。

 傍目にはサラーの大活躍が予想外であったことも、周囲がリバプールに心をくすぐられる1つに違いない。昨夏にローマから獲得した際の移籍金3400万ポンド(約51億円)は、巷では高過ぎると言われていた。

 かくいう筆者も、サラーのプレミア再挑戦には懐疑的だった。失敗に終わった2014年のチェルシー移籍当時は純粋な右ウインガー。足の速さはともかく、頭の回転の早さでは競争相手だったウィリアンが明らかに優っている印象があったからだ。

 そこから一転、今季のサラーは瞬時の正確な判断で決定的な仕事を重ねている。

デブライネとのMVP争いはどちらに?

 チャンスメイクに関しては、今季アシスト王争いをリードしている、シティのケビン・デブライネが上という声もある。確かにクロスやラストパスの精度は、観客を唸らせるほどの一級品だ。

 また両者の一騎打ちと目される年間最優秀選手賞争いは、デブライネが有利とも言われている。

 ただ、イングランドにはもう1つ、FWA(記者協会)選定の最優秀選手賞がある。4月末の投票期限を前にしたCL準々決勝で、デブライネを凌ぐ影響力を見せたサラーに気持ちが傾いた記者も多かったのではないか?

 少なくとも筆者は「マジシャン」をもじって「エジプシャン」と呼ばれている、サラーに1票を投じた。

心許なかった守備面にも向上の跡が。

 CL優勝が現実的と見る向きには、シティ戦で見せた守備面も見逃せない。正直、開幕時点では守備力を評価するとは夢にも思わなかった。しかし、3点リードを守った第1レグの終盤、さらにボールを支配された第2レグでの90分間を通して、クロップ率いる積極派集団は受け身の戦いにも対応できることを証明した。

 個人的にはMVPとして、中盤3センターの一角を務めたジェイムズ・ミルナーを挙げたい。SBから前線アウトサイドまでこなせる“マルチ”だが、その才能はセントラルMFとして最大限に発揮されている感がある。

 今季CLでチーム最多の8アシストを記録し、中盤でカウンターの起点にもなっている。中盤の底を務めたジョーダン・ヘンダーソンとジョルジニオ・ワイナルドゥムを上回る重要度だ。

 第1レグでは幾度となく敵の攻撃を寸断し、チームの全3得点に絡んだ。より深い位置で守る場面が増えた第2レグでは、計4度のシュートブロックで貢献した。相手のレロイ・サネをオンサイドにしてゴールを許した場面でも、オフサイドの“誤審”に救われた。

 ミルナーは、勝利の女神が肩入れしているのでは、と思わせる選手なのだ。

ジェラードは「もう2、3人実力者が」。

 今年1月に加入した新CBビルヒル・ファンダイクは、最終ラインに欠けていた安定感をもたらしている。

 リーダーシップの持ち主が加わった4バックでは、デヤン・ロブレンがトップクラスの姿を取り戻し始めている。また左右両サイドバックではアンドリュー・ロバートソン(24歳)とトレント・アレクサンダー・アーノルド(19歳)の若手が出番を増やしている。

 アーノルドは攻撃参加での貢献が買われているが、3月のマンチェスター・ユナイテッド戦(1-2)とクリスタルパレス戦(2-1)で、失点を招くミスを繰り返した。それでもクロップは、シティ戦でアーノルドをサネと対峙させた。第2レグでは前半30分足らずでイエローをもらったが、勝負がついた81分まで使い続けた。

 ただ若手の積極起用は、長丁場のリーグ戦において選手層が不十分であることも象徴している。第33節を終えて首位シティに17ポイント引き離されている3位が、今季プレミアでの実態だ。若手を育てる立場にあるジェラードも、昨夏の段階で「優勝を狙うにはもう2、3名の実力者が欲しい」と言っていた。

CLが獲れれば来季の戦力補強にも直結。

 無冠でクロップ体制3年目に突入した今季は、前半戦で勝ち点を伸ばせず「進化」の程を疑問視する声もあった。それでもチーム状態は向上し、そこに欧州王者の肩書きを加えられれば、今夏の戦力補強に際してアドバンテージとなる。それを踏まえればCL優勝は大ボーナスではなく、是が非でも達成すべき目標とも考えられる。

 イングランドに住む1人として、今季CLにおけるプレミア最後の旗手が、ベスト4をも突破して決勝の地キエフで勝者となるシナリオが完成するのを祈りたい。

 クラブの垣根を超えて国民の心を揺さぶる魅力を持つリバプールが、さらに自信を深め、スケールを増して来季に臨むとなれば、今季はシティが独走した国内リーグの優勝争いも大いに盛り上がることは請け合いなのだから。

文=山中忍

photograph by Getty Images


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