倒したい「邪念」を制してKO防衛。村田諒太、ゴロフキン戦にまた前進。

倒したい「邪念」を制してKO防衛。村田諒太、ゴロフキン戦にまた前進。

 WBA世界ミドル級タイトルマッチが15日、横浜アリーナで行われ、チャンピオンの村田諒太(帝拳)が挑戦者の同6位エマヌエーレ・ブランダムラ(イタリア)に8回2分56秒TKO勝ち。初防衛に成功した。

 終わってみれば実力差が如実に出た試合だった。スタートの村田は無理をせず、相手のパワーやクセを確かめる作戦だった。

「1、2ラウンドは“ポイントいらない”と思っていた。相手は序盤に右を振ってくる選手。KO率が低いといっても、やっぱり100%で振ってくればミドル級だったらダメージは残る。それをもらったら意味がないというか、賢くない選択ですから」

 ところがふたを開けてみると、ブランダムラの分析にかかった時間はわずかだった。村田は初回終盤には早くも攻勢に出て、挑戦者にロープを背負わせるシーンを作る。

右ストレートの感覚をつかめていなかった。

 この日よかったのはジャブだ。最初に出したジャブが挑戦者の顔面をとらえると、すかさずボディへの右ストレートにつなげた。ブランダムラは村田の強打をもらうまいと必死に動いて抵抗する。後退しながらも何とかパンチを繰り出す姿に勝利への意欲を感じさせたが、チャンピオンを混乱させるほどの力はなかった。

 村田は3回に立て続けにワンツーを叩き込んだ。徐々にピッチが上がってきたように見えたものの、この段階で右ストレートの感覚はうまくつかめていなかったという。

「体が開いてから出るという感じがあった。野球で言うとバットを振るタイミング。ピッチャーとの問題ではなく、自分の打つフォーム上のタイミングっていう問題で、そこが合っていなかった」

 これを「途中で修正できた」というのが5回だ。今度はブランダムラのガードをこじ開けるような右を打ち込み、ボディブローにもつなげた。村田の主武器である右の調整が完了してしまったのだから、劣勢のブランダムラはたまらない。

「倒さなかったら判定ばっかりって」

 迎えた8回、村田が外角から打ち下ろしの右を叩き込むと、ロープ際に追い込まれていたブランダムラのヒザが砕けてダウン。立ち上がろうとしたもののダメージは大きく、主審が試合を終わらせた。

 正直なところ「物足りない挑戦者」という印象を抱いたファンもいることだろう。世界初挑戦の38歳は、確かにチャンピオンと比べて非力なイメージは否めなかった。

 それでもなお、いやだからというべきか、今回の試合は村田にとってやりにくい試合だったことは間違いない。

「エンダムとの1戦目、2戦目を見てもらった上で、(つまらない試合をしたら)なんだ村田ってたいしたことないじゃん、倒さなかったら判定ばっかりって言われるじゃないですか」

「邪念」を振り払い、冷静に倒した。

 チャンピオンらしい姿を見せたい。ノックアウトで勝ちたい。村田はそういった思いを「邪念」と表現し、今回の試合に向けては前に出すぎず、冷静に戦うことをテーマに掲げた。リングの上で相手と拳を交えながら、はやる気持ちをおさえよう、おさえようと自らに言い聞かせていたのだ。

 それでも、倒したいという気持ちは「無意識下で働いていた」というが、リングサイドで見守る限り、村田は狙い通りに冷静だった。それを強く感じたのが勝負の行方が見えてきた5回以降だった。

 圧倒的優勢なのに詰め切れず、ズルズルとラウンドを重ねる。倒そう、倒そうと焦り、観客のフラストレーションを感じてさらに焦りが広がる。世界タイトルマッチでこうした負のスパイラルに陥った選手を何人も見てきた。

 村田もまさにこのパターンに陥る危険がありながら、決して焦らず(少なくとも周りにそう感じさせず)、得意のワンツーをしっかり打ち込み続け、自分のペースを貫いた。だからこそ結果的に8回のノックダウンは生まれたのだ。簡単なようで簡単でないことをやってのけた。それが村田の初防衛戦だった。

どうやってゴロフキンにたどり着くか。

 鬼門と言われる初防衛戦を無事クリアし、村田は試合後のリングで、「ゴロフキンを目指してやりたいと思います」とファンにアピールした。

 WBAスーパー、WBC、IBFと3本のベルトを保持するゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)を、村田は“リアル・チャンピオン”と評する。世界チャンピオンが各階級に1人であるなら、現在のミドル級世界チャンピオンはゴロフキンという意味だ。

 となると今後の防衛ロードは、どうやってゴロフキンにたどり着くか、というところがポイントとなる。

 次戦は秋にラスベガスで行うことが既定路線となっており、村田のアメリカでのプロモートを担当するトップランク社、ボブ・アラム氏はロンドン五輪決勝で村田に競り負けて銀メダルだったエスキバ・ファルカン(ブラジル)を対戦相手の候補に挙げた。その理由は「ストーリーがあるから」。

帝拳の本田会長はファルカン戦に難色。

 しかし、これですんなり決まるかどうかは不透明である。

 というのも帝拳の本田明彦会長がファルカン戦に難色を示しているからだ。それなりに知名度のある強豪と試合をして、「ゴロフキンと村田がやったら面白い」というムードを作り、できるだけ早くゴロフキンとの対戦にこぎつけようというのが本田会長の考え。そうなると知名度の低いファルカンでは物足りないということになる。

 ミドル級全体の動向に目を向けても、村田はもっともっと存在感をアピールしたいところだろう。

 トップに立つゴロフキンは5月5日に双璧をなすメキシコのスーパースター、サウル“カネロ”アルバレスと再戦する予定だったが、カネロにドーピング違反が発覚し、試合は中止となった。

 IBFはゴロフキンに対し、1位選手との指名試合を迫り、WBCも暫定王座決定戦を設けるなど、タイトルをめぐる動きは慌ただしい。トップ・オブ・トップを目指す村田の戦いはいよいよこれからが本番だ。

文=渋谷淳

photograph by Hiroaki Yamaguchi

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