珍しい展開の皐月賞を完全勝利。エポカドーロが乗った2つの流れ。

珍しい展開の皐月賞を完全勝利。エポカドーロが乗った2つの流れ。

 ひとつのレースのなかに、激流と緩流の2つの流れが生じた。勝者は、緩流に乗った伏兵だった――。

 第78回皐月賞(4月15日、中山芝2000m、3歳GI)を、戸崎圭太が騎乗した7番人気のエポカドーロ(牡、父オルフェーヴル、栗東・藤原英昭厩舎)が優勝。新種牡馬オルフェーヴルにとっても、地方からJRAに移籍して6年目の戸崎にとっても初のクラシック制覇となった。2着は9番人気のサンリヴァル、3着は8番人気のジェネラーレウーノ。1番人気のワグネリアンは7着に終わった。

 6番のアイトーン陣営が逃げ宣言をし、16番ジュンヴァルロの大野拓弥は「途中からハナに立ってもいい」とコメントしていた。そのほか、7番エポカドーロ、8番ケイティクレバー、そして10番ジェネラーレウーノが逃げ切り勝ちを経験していた。

道中、馬群が真っ二つに。

 これだけ前に行きたい馬が多いときは、ハナ争いが激しくなってハイペースになるか、逆に、どれが行くかわかっているので、意外と流れが落ちつくかのどちらかになる。

 今回は、その両方の流れが生じた。

 道中、馬群が真っ二つに分かれる珍しい展開になった。

 ハナに立ったアイトーンと、差なくつづいたジェネラーレウーノ、ジュンヴァルロの3頭はハイペースで進んだ。

 それらから大きく遅れた第2グループの先頭、つまり4番手につけたのがエポカドーロだった。道中、前の3頭とエポカドーロの差は最大で10馬身ほど、時計にすると2秒ほどになった。この第2グループは、追走が楽な緩めの流れになった。

 戸崎が望んでいたとおりの展開だった。

「何頭か前に行く馬がいるので、先生(藤原調教師)と相談し、その後ろのポジションで行ければと思っていました。馬は落ちついていて、返し馬から違いました。道中も力強かったです」

前が潰し合い、直線の入り口で追いつく。

 先行した3頭に大きく離されても不安はなかったという。

「前が1頭で逃げているのなら楽だったかもしれませんが、けっこう激しくやり合っていたので、たぶんキツいだろうな、と思っていました。後ろにも相手はいるので、前後を見ながら進めました」

 前半1000m通過は59秒2。稍重発表だったが、朝方までの雨の影響で「道悪」と表現する関係者がいたほど、やわらかく、緩い馬場を考えると速い流れだった。第2グループのそれは61秒台前半だった。

 前の3頭が後ろの13頭を大きく離すという展開が、4コーナーの中間地点、ラスト400mほどまでつづいた。

 4コーナーを回りながら後続が一気に差を詰め、直線入口で、エポカドーロが3番手のジュンヴァルロに並びかけた。ここでようやく2つの流れがひとつになった。

戸崎「馬には余裕がありました」

 馬場の真ん中からエポカドーロが豪快に伸びる。ラスト200m地点ではまだ前に2頭いたが、勢いの差は決定的だった。

 ラスト100mあたりで内の2頭を並ぶ間もなく抜き去り、同じ第2グループの先団から追い込んできたサンリヴァルに2馬身差をつけてゴールした。勝ちタイムは2分00秒8。

「ぼくは一杯一杯でしたが、馬には余裕がありました。レースを使うたびに成長しています」と戸崎は笑顔を見せた。

 3着には、先行した3頭のうちの1頭、ジェネラーレウーノが粘り切った。

 4着は後方から追い込んできた2番人気のステルヴィオ。手綱をとったクリストフ・ルメールは「ペースが上がらなかったことで苦しくなった。直線での反応はよかったが、前が止まらなかった」と悔しがった。

 5着は3番人気のキタノコマンドールで、ここまでがダービーの優先出走権を獲得した。

緩流と激流の両方を都合よく利用。

 藤原調教師が「あそこまで前と離れていると、単騎で逃げていたようなもの」と話したように、エポカドーロは、ゆったりした流れを引っ張って、後ろの馬たちの瞬発力を封じ込めた。

 と同時に、先行グループを射程に入れたラスト400mあたりからは、前に行った3頭がつくったハイペースを利して差し切った、とも言える。

 つまり、エポカドーロだけは、緩流と激流の両方に乗って、それぞれの流れを自らに都合よく利用したのだ。

 戸崎の冷静なタクトに従い、エポカドーロが力を出し切った。なお、オーナーのヒダカブリーダーズユニオンにとっても、生産者の田上徹氏にとっても、初のクラシック制覇となった。

ダノンプレミアムがいたとしても……。

 次走の日本ダービーで、この馬だけに権利のある二冠獲得を狙う。

「もともと距離が長くなるとどうかなと思っていましたが、2000mをクリアしたし、何といっても乗りやすいという強みがある。ポジションをとりに行っても、そのあと折り合うんです」と、戸崎は、2400mでの自信をうかがわせる。

 藤原調教師も「お母さんが短距離馬で、体型的にもどうかなと思うので、いろいろな工夫をし、ダービーに向けてリスタートします。ポテンシャルがあるので、それをどう生かすかだと思います」と表情は明るい。

 エポカドーロにとって理想的な展開になったがゆえの戴冠だったことは確かだが、恵まれたから勝てたわけではない。

 もしダノンプレミアムが出ていたとしても、この緩い馬場と、特殊な展開のなか、エポカドーロを凌ぐパフォーマンスを発揮できていただろうか――そう思わせるほどの強さだった。

 間違いなく、ダービーの有力候補だろう。

文=島田明宏

photograph by Yuji Takahashi

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