ハマの快進撃支える“恐怖の9番”。倉本寿彦のサバイバル野球哲学。

ハマの快進撃支える“恐怖の9番”。倉本寿彦のサバイバル野球哲学。

 もうショートには未練はないのか?

 この単刀直入の問いに倉本寿彦は、間を置くことも、表情を変えることもなくクールに答えた。

「いや、べつに」

 2015年のルーキーイヤーからショートを守り続けてきた倉本は、今季、阪神から移籍してきた大和に追われる形でセカンドへコンバートされてしまった。

 アマチュア時代も含めほとんど経験したことのなかったセカンドという守備位置に対し、どこか複雑な感情を抱いているのではないかと勘繰ったのだが、倉本は真っ直ぐな視線を向け語ってくれた。

「ショートだけではなく、セカンド、それに(守備固めの)サードに入ることによってプレーに対する幅が広がるし、野球に関しいろいろな考え方ができるようになると思うんです。

 その意味において今後の野球人生を考えると確実にプラスになるはず。ですから“未練”というマイナスの感情はなくて、前向きに取り組んで行こうという思いの方が強いんですよ」

大和の実力を素直に認めている倉本。

 現状をポジティブに捉えている倉本は、二遊間を組む大和の定評ある守備力を肌で知り、その実力を素直に認めている。

「大和さんがショートを守って失点を防いでいるのは事実だし、僕どうこうではなく、そこは絶対にチームのプラスになっていると思います。上手くまわっている今の形がチームにとってすごくいいんだろうなって」

 意固地にならず今ある状況を受け入れ、変化していくこと。それがチームはもちろん、自分にプラスになるのならば何の問題もない。

9番打者の泥臭い活躍でチームは破竹の8連勝。

 倉本がこだわりを捨て大きく変化することを厭わなかったのは、じつは今回が初めてのことではない。

 入団1年目のこと、倉本はフルスイングをして長打を狙うスタイルに強いこだわりがあったのだが、結果が出ないと分かると翌年からはスイングをコンパクトにし、逆方向へ軽打を狙うスタイルに転換した。それが功を奏し、レギュラー獲得へと至っている。

 今シーズンはまだ序盤に過ぎないが、4月16日現在、倉本は打率.300、得点圏打率.500と勝負強さを発揮している。

 恐怖の9番打者である倉本の泥臭い活躍もあり、チームは破竹の8連勝を飾っている。

「今年は“(監督の)判断が早い”と感じている」

 振り返れば昨シーズンの4月は散々だった。打率は1割台に低迷し、なかなか出口が見つからず塗炭の苦しみを味わった。

 しかし、今季は出だし好調。いくぶん安堵しているのかと思いきや、倉本は逆に危機感を露わにした。

「昨シーズンのような成績だったら、きっと試合に出られていないと思います。今年は“判断が早い”と強く感じていますから」

 見切りの早さというべきか、ご存知かとは思うが昨季全試合に出場したレギュラーの桑原将志は、今季調子が上がらず、開幕早々スターティングラインナップから外されている。昨季は一度レギュラーと見定めたらどんなに調子が悪くても起用し続けたラミレス監督であるが、今季は選手層が厚くなってきていることもあり、判断基準が以前とは異なっている。

「それはすごく肌で感じています。隙を見せたらやられてしまう。もし自分の数字が悪かったら絶対に他の選手にチャンスが行くでしょう。だからこそコツコツやっていかなければいけないんです」

他の選手のバットを借りて、合う物を探す。

 このような危機感や競争心があるがゆえ、チーム状況が良いのもうなずける。

 レギュラーであり続けるため、サバイブしていくためには変化、そして進化していかなければならない。現状を打破し、ビルドアップし続けることが大事だと倉本は強く認識している。

 また倉本といえば、他の選手からバットを譲り受け自分にアジャストするものを探しているという話をよく聞くが、今季も4月12日に早くもバットを変えた。後輩の柴田竜拓のモデルだという。

 開幕からバッティングの調子は決して悪くはなかった。だが倉本は変化を求めた。バットを変えれば当然打てなくなる可能性もあり、リスクを背負うことになる。

「常に次の手を打たないと。代えられてしまう」

「正直、今までのバットがしっくり来ていなかったんです。それを思い切って変えたんですけど、いい感じですよ」

 手応えを感じている、明るい表情。そして確信を込め、こう続けた。

「常に次の手を打たないと。成績が落ちたら代えられてしまう。だからこそ思いきってやるしかない。この2〜3年でわかってきたのは、変わらない部分も必要だけど、思い切って変えていくことも大事だということ。その上で、本当に少しでもいいプレーをして、チームのプラスになりたい」

 ラミレス監督は倉本を「“とにかく野球がしたい”という気持ちが誰よりも強い選手」と評している。プレーし続けるためには絶対にレギュラーを譲るわけにはいかない。

 常にファイティングポーズをとり続ける恐怖の9番打者のチームに対する必死の献身は、果たしてどのような花を咲かすことになるのだろうか。

文=石塚隆

photograph by Kyodo News

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