データで見えた錦織圭の完全復活!鬼の勝負強さでマスターズ準優勝。

データで見えた錦織圭の完全復活!鬼の勝負強さでマスターズ準優勝。

 大坂なおみのインディアンウェルズ優勝、女子国別対抗戦フェドカップはワールドグループ2部昇格。さらに男子ダブルスではマクラクラン勉(ベン)の活躍など、ここのところ日本テニス界全体に明るいニュースが続いている。

 しかし、そこには長らく日本のテニスを引っ張ってきた主役、錦織圭の名前がなかった。

 だからこそ先日の錦織のモンテカルロ・マスターズ準優勝は、そんなもやもやを一掃する大活躍だったのではないだろうか。テニスファンには、想像より早すぎる完全復活への驚きと喜びと安堵、様々な感情が入り混じって迎えられたはずだ(うれしいことに、クレーコートからはダニエル太郎のツアー初優勝という吉報が続いた)。

BIG4を上回る最終セットの勝負強さ。

 錦織圭というアスリートを語る上で、まず始めに出てくる要素が「ファイナルセットの鬼」とも称される勝負強さだ。ご存知のとおり、ファイナルセットの勝率は歴代1位。あのボルグやマッケンロー、BIG4を上回っている。

 だが、成績不振となった2017年シーズンはファイナルセットで12勝5敗(70.6%)。一見いいように見えるが、75%以上の勝率を誇っていた錦織からすると低い数字だ。そして実際、今年2月にツアー復帰すると、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)とデニス・シャポバロフ(カナダ)に続けてファイナルセットで敗れ、ついに勝率歴代1位の座をノバク・ジョコビッチ(セルビア)に明け渡すことになった。

 だが、モンテカルロでの錦織には、テニスの内容に加えて、この勝負強さが戻ってきた。勝った5試合中、ファイナルセット勝ちは4試合だった。

 1回戦のトマーシュ・ベルディフ(チェコ)は、6年前に同じ大会で敗れた相手。ツアーファイナルズで直接対決したこともある実力者だ。対戦成績こそリードしているものの、錦織の初戦敗退を予想する人も少なくなかった。

 この試合ではベルディフの中盤以降の落ち込みを見逃さず、錦織が総合的に勝ち切った。復帰以降に勝った相手の中では最高ランク。期待も高まった。

チリッチ、ズベレフを立て続けに撃破。

 3回戦のアンドレアス・セッピ(イタリア)戦では、錦織が出だしから完璧なテニスを披露し圧倒したが、いい時間帯を過ぎると今度は試合巧者のセッピのテニスに捕まった。試合の流れが大きく振れる展開となるも、最後に突き放したのは錦織。ファイナルセットに入って立て直し、相手にブレークポイントを与えずに勝利した。

 準々決勝の相手、マリン・チリッチ(クロアチア)はこれまで2人のキャリアの重要な局面での対戦が続いたライバルだ。2セット目途中でチリッチが大会中に痛めていた膝の具合を悪化させ、棄権負けもよぎったがここからチリッチの執念が錦織を上回った。

 一時は錦織の敗北寸前までもつれたが、終盤で相手の横を抜くスーパーショットで流れを掴み、1年3カ月ぶりにトップ10から勝利を収めた。

 準決勝のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)は昨シーズンからATPツアーの主役の一人になっている次世代の王者候補筆頭。昨年には全くいいところなく完敗している相手だ。

 序盤はズベレフの力あふれるプレーに押し込まれるも、1stサーブが入らないズベレフに対して錦織がリターンから主導権を掴みファイナルセットへ。最後もリターンをきっちり深く決めてズベレフのミスを誘った。

トップ10に連勝は準優勝の全米以来。

 各試合を振り返ってみても、ファイナルセットで錦織はいいプレーをきっちり出して勝利を収めている。結果以上に完全復活を印象付ける大会になった。

 マスターズでの準優勝は自己最高タイの成績。1つの大会でトップ10に2連勝するのは、なんとあの全米オープン準優勝の時以来。錦織の成績だと感覚がマヒしがちだが、数字でもけが前と同じ水準まで戻ってきたことが裏付けられた。

 そしてファイナルセット4連勝により、勝率でも歴代1位の座を再び取り戻した。多くの側面から完全復活の太鼓判が押されていると言っていいだろう。

 では、なぜ錦織のテニスはここまで劇的によくなったのだろうか? ここではATPツアーが公開しているスタッツから読み解いてみる。ただしハードコートの試合の詳細な統計は、マイアミマスターズの2試合しかないため、十分な試合数がないことは断っておきたい。

クレーで必須のフォアハンドが向上。

 錦織の長期離脱の原因となったのは手首のけがで、それ以前からフォアハンドの威力の低下が指摘されていた。また、復帰後もフォアハンドの不調が続き、ラリーが長く続くクレーコートのテニスでは、このフォアの向上は重要課題と思われた。

 ハードコートシーズンの試合では、すべてのポイントのうちフォアハンドの簡単なミス(アンフォーストエラー)の割合は、2試合とも13%台。しかし、クレーシーズンに入り、データがあるモンテカルロの6試合では、最も多かったセッピ戦でも10.8%、最も少なかったチリッチ戦ではなんと6.4%に減少した。

 こう聞くと、単にミスを減らすような意識が働いたからではないか、という疑問も生じるだろう。しかしそんなことはない。獲得したポイントのうちフォアハンドで決めたポイント(ウィナー)は、ハードコートシーズンで5.6%だったが、クレーコートでは5.4%とほぼ変わらない。

 クレーコートは球足が遅く、簡単に決まらないサーフェスだ。そう考えると、ミスが減り、自分で決めるポイントが減らないということは、決してミスを恐れた弱気のプレーをしていたわけではないことがはっきりと分かる。そして、フォアハンドが改善し、決定力も戻ってきたことが今回の躍進に繋がっていると推定できるのではないか。

気になるのはサービスゲームの長さ。

 では、悲願のマスターズ初優勝、そして全仏オープン優勝に向けて何が必要か。そこで一つ気になるデータが上がってきた。それは、サービスゲームの長さだ。

 サービスゲーム1ゲームあたりにかかったポイント数を見ると、今年の錦織のツアーレベルでの敗戦5試合のうち、自分のサービスゲームの方が少ない試合はわずか1試合だった。一方勝った9試合では、自分のサービスゲームの方が少ない試合が7試合もあった。つまり、サービスゲームにかかるポイント、時間が短くなると勝率が上がるというものだ。

 ビッグサーブを持たない錦織にとって楽にサービスキープすることは、試合時間を短くさせて体力を温存させ、リターンゲームに集中できるという効果に表れるはず。

 そこで今後、錦織のサービスゲームの組み立て、展開に注目すると面白いのではないだろうか。2週連続で開催されるマドリード、ローマの各マスターズでの活躍から目が離せない。

文=今田望未

photograph by Getty Images


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