フィギュア世界王者が統計学と医学を。ネイサン・チェン、エール大入学へ。

フィギュア世界王者が統計学と医学を。ネイサン・チェン、エール大入学へ。

 2018年世界チャンピオン、ネイサン・チェンがアイビーリーグ、エール大学に入学することが発表された。5月1日にニューヨークのチャリティイベントに姿を現したチェンに、独占取材を行った。

 米国「スターズオンアイス」の全米ツアーの合間に、マンハッタンで行われたハーレムの子供たちの教育を支援するチャリティ団体「フィギュアスケーティング・イン・ハーレム」のガラパーティーに、スーツとネクタイ姿で顔を見せたチェン。

 その時18歳だったチェンは3月にミラノ世界選手権で優勝し、アメリカ人男子として9年ぶりの世界チャンピオンになっていた。

「でもあれから次々と、色々な優先事項が目の前に現われて、まだ自分が世界チャンピオンになった実感は沸いていないんです。それに、別に違う人間になったわけでもないし」と、相変わらず早口の英語で話しながら、笑顔を見せた。

 優先事項とは、もちろん「スターズオンアイス」の全米ツアーのレギュラーメンバーになったこと。そして4月はじめに、名門アイビーリーグのエール大学から入学許可の知らせが届いたことだろう。

カリフォルニアからコネチカットへ。

 カリフォルニアでトレーニングをしてきたチェンだが、エール大学のあるコネチカット州ニューヘイブンに移住することになる。だが大学にフルタイムで通いながら、スケートのトレーニングは続けていく、という。

「新学期が始まるのは8月の末です。トレーニングは、大学のキャンパスから30分ほどのリンクに通う予定です」

 ラファエル・アルトゥニアンコーチとの関係はこれまで通りで、現地で当座のコーチを探す予定はないという。

「ラファエルがいない間は、1人でトレーニングをすることになるでしょう。コネチカットに移住といっても、年のうち(夏休み休暇など)4カ月はうちに帰れます。あとはラファエルに来てもらい、ぼく自身も行けるときは(カリフォルニアに)通うつもり。まだ正確な授業のコアコースの予定が出ていないので、それがわかったらもっとはっきりスケジュールが立てられると思うんです」

専攻は「統計学」で将来は医大も視野に。

 専攻は何にするのか、と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「統計学を専攻して、同時に医学進学課程(Pre-med)の必須科目も取っていく予定です。統計学はビジネス、医学、教育などあらゆる方面で広く活用できる学問なので」

 将来的には医大に進学したいというチェン。父は医学博士号を取得しており、姉の1人も医大に進学したという彼は、教育を大事にする一家で育ったのだという。

 だが現実的に言って、アメリカの大学は入学より卒業が難しい。まして世界でもトップレベルの大学にフルタイムで通いながら、競技スケートを続けていくことは楽ではないに違いない。過去には、1952年にディック・バットンがハーバード大学に在学しながら2度目のオリンピック金メダルを手にした前例もあるが、今とは時代が違う。

ハーバードに入ったガオは結局引退に。

 近年では、やはり中国系アメリカ人のクリスティナ・ガオ(2012年スケートアメリカ銀メダリスト)が2012年の秋からハーバード大学に入学し、しばらくスケートと両立させていたが、やはり競技の成績は伸び悩んだ。結局ガオは2014年シーズンを最後に学業を優先させるために競技を引退した。

 チェンにとっても、エール大学進学は初めての体験である。

「実際にどうなるかは、とりあえずやってみないとわかりません。学期が始まったら、また色々なことが見えてくると思います」とチェン。

 今のところは、この秋のGPシリーズにも出る予定なのだという。

「おそらくスケートアメリカは必ず出ると思う。2試合目は、スケジュール的にフランス杯が一番可能性が高いです」

「芸術面で新しいことにチャレンジしたい」

 2018年/2019年シーズンの新しいプログラムは、まだ制作していないという。

「スターズオンアイスのツアーが5月いっぱいで終わるので、それから着手していく予定です」

 これまでバレエの素養を生かしたバレエ音楽や、昨シーズンはアップテンポのSPにも挑戦したチェン。

「ルールが変わるので、技術的な内容は嫌でも変わることになるでしょう。(筆者注;今シーズンから男子はフリーのジャンプ要素が1つ減り、制限時間も30秒短くなる)今シーズンは、まだ具体的に決めてはいないけれど、なにか芸術面でこれまでやっていなかったものにチャレンジしたいと思っています」

学業と世界チャンピオンの両立なるか?

 アメリカのスターズオンアイスでは、アシュリー・ワグナーとパートナーダンスの振付もこなした。

 合計3組で演じるグループナンバーで、他の2組はアイスダンサー。そこにチェンとワグナーの2人のシングル選手が加わるという珍しい試みだった。

 子供のころからクラシックバレエを習ってきたチェンは、発表会で舞台に立ったこともある。だが氷上でのパートナリングは初体験だったという。

「氷の上でやるというのは、フロアでやるのと全く違う体験でした。でもアシュリーは、素晴らしいパートナーで色々助けてくれました」

 世界チャンピオンとして迎える新シーズン。エール大学の学業とどのように両立させていくのか、チェンの新たな挑戦がはじまる。

文=田村明子

photograph by Akiko Tamura

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