世界卓球決勝に見た「中国の壁」。日本女子はいつ越えられるのか?

世界卓球決勝に見た「中国の壁」。日本女子はいつ越えられるのか?

 スウェーデン南西部の街ハルムスタッドで8日間にわたって開かれた「世界卓球2018(団体戦)」が5月6日、幕を閉じた。今度こそ「打倒中国」を掲げ、大一番に臨んだ日本代表チームは女子が準優勝、男子はベスト8という結果に。男子は2008年広州大会から続いたメダルが途絶え、女子も目標である決勝進出を果たしたものの、またも中国の壁を越えることができず3大会連続の銀メダルにとどまった。

 一方、中国女子は大会4連覇とともに通算21回目の優勝を挙げ、大会記録を更新している。

 高くそびえ立つ巨大な壁、中国。日本も着実に戦力を上げていることは間違いないが、中国を倒す突破口は見えそうで見えてこない。現在、両者の間にある差は何なのだろうか。今回の世界卓球2018女子決勝に見た、中国の日本に対する戦い方からあぶり出す。

台からやや下がり日本のスピードに対応。

 ボールに豊富な回転をかけパワーで押してくる中国に対し、スピードで勝負する日本の卓球は前陣で台に張り付き、速いピッチで攻撃をたたみかけるのが特長だ。このスピード卓球に対応するべく、中国が取った対策の1つが台からやや下がるプレーだった。

 今回の中国女子代表の中で最もパワーのある丁寧はもちろん、比較的前陣でピッチの速いリュウ・シウェンも同様の対策を取ってきた。前陣速攻型の伊藤美誠(スターツSC)、超高速両ハンドドライブを武器に持つ平野美宇(日本生命)との対戦では、台から少し距離を取り、数本ラリーを続けた後にカウンター攻撃に転じる、あるいは相手のミスを誘う球種やコースを使ってきたのだ。

 この戦術に対して日本はラリーに持ち込まれると不利になるとの意識から、早い段階でポイントを決めようとして強打し、ミスにつながることが多いように感じられた。

 特に2、4番手の2点起用でエースポジションを任された平野は丁寧にもリュウ・シウェンにもあえて「打たされた」印象があり、全力で打ったボールがオーバーしたり、コースを読んで待たれてカウンターを食らったりする場面が少なくなかった。

回転、コースが多彩なサーブで先手。

 よく中国人選手は「1本多く返してくる」といわれるが、優れた攻撃力やディフェンス力だけでなく、こうしたラリー中の駆け引きに非常に長けているのだ。

 平野も途中からは1本で決めようとせず、打球に緩急をつけて相手のタイミングをずらし、ミスを誘ってポイントを奪った。だが、初めから相手をいなすような余裕のあるプレーと目の覚めるような強打を織り交ぜてくる中国の成熟した戦術に、日本との違いを見せつけられた。

 サーブとレシーブにも中国の強さが見えた。中でも3番手で石川佳純(全農)と対戦した朱雨玲のサーブは秀逸だった。派手なラリーに比べ、サーブ、レシーブをめぐる攻防は一見わかりにくいが、彼女のサーブは明らかにバリエーションに富んでいた。

 特に前半は意表を突くタイミングでのロングサーブや、角度をつけてサイドを切るようなフォア前サーブを多用し、石川を翻弄した。そして、石川が徐々に慣れてきた第2ゲームからは巻き込み系のサーブにチェンジ。微妙に回転を変えながら石川のレシーブを封じた。

 聞くところによれば朱雨玲は世界卓球に向けて、男子選手に教えを請うなどして新しいサーブを用意してきたという。それを要所要所で使ったため、石川は最後までサーブとレシーブでいい形を作ることができなかった。

サーブとレシーブで対抗できた伊藤。

 「第一の攻撃」ともいわれるサーブで先手を取れれば、試合を有利に進められることは言うまでもない。ちなみに朱雨玲のサーブ時のポイント獲得率は第1ゲームで100パーセントに達していた。

 一方、1番手の伊藤とリュウ・シウェンとの試合もサーブとレシーブが鍵を握る一戦だった。伊藤は劉のサーブにうまい対応を見せる。強い横回転をかける伊藤のチキータレシーブや逆チキータレシーブを警戒したリュウ・シウェンが、ネット際に落とすフォア前サーブと伊藤のバック側を深く突くロングサーブを繰り出すと、伊藤は特にロングサーブに対して素早く回り込みフォアハンドレシーブをお見舞い。

 さらに自分のサーブ時にはリュウ・シウェンのバックミドルを突くロングサーブで、ミスの少ないリュウ・シウェンから何本もオーバーミスを誘った。

 今大会の伊藤は、日本人選手相手に37戦負けなしだったリュウ・シウェンから勝利をもぎ取った。この快挙の大きな要因は、サーブとレシーブでしっかり対抗できたことにあるだろう。

競り合い、デュースからの強さ。

 また、今大会でも中国は競り合いの場面、特にデュースからが強かった。ただ唯一、サーブとレシーブで先手を奪えた伊藤は、フルゲームの8−10でマッチポイントを握られてから4連続得点を奪い、大逆転に成功している。

 本人が「自分のサーブだったのでチャンスはあると思った。あとはレシーブで1本取れれば大丈夫だと思った」と話している通り、サーブとレシーブに自信があったからこそ競り合いを制することができたのだ。

 競り合いの場面であと一歩及ばなかったのが平野だった。まず2番手の丁寧とは第2、3ゲームでデュースとなり、いずれも落としてストレート負け。4番手のリュウ・シウェンとも第3ゲームで先にゲームポイントを握ってから4連続ポイントでデュースに追いつかれると、さらに2ポイントを落として逆転され、ストレート負けを許した。

 平野も丁寧が窮地で繰り出すしゃがみ込みサーブの回転によく対応し、最後まで得意のチキータレシーブで攻めの姿勢を見せたが、デュースからの丁寧は平野のミドルを絶妙に突く3球目攻撃や、わざと打たせてカウンターを浴びせる巧妙な戦術で平野のミスを誘った。リュウ・シウェンもミドルを上手く使い、平野の武器であるロングサーブも読み切った強打でレシーブポイントを挙げた。

「中国人選手の戦術は細かい」(平野)

 これらのプレーで見えてくるデュースになってからの中国の強さは、自分の得意な技をいかに出すかよりも、相手の嫌がることを徹底的にする、という点にある。

 平野も言う。「中国人選手の戦術は細かい。自分も技術はわるくないと思うが、そういうところで負けないようにしないと中国に勝つことはない」と。

 東京2020五輪で打倒中国、そして金メダル獲得を誓う日本。それまでに中国にリベンジするチャンスは、東京で開催される2019年チームワールドカップと韓国釜山で開催される世界卓球2020団体戦しかない。そこで何としても立ちはだかる中国の壁を越え、大目標である五輪での金メダルという悲願を成就させたい。

文=高樹ミナ

photograph by AFLO


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