オリヴェイラの練習は湘南よりキツイ。闘う集団、レッズが走り始めた。

オリヴェイラの練習は湘南よりキツイ。闘う集団、レッズが走り始めた。

 浦和レッズにオズワルド・オリヴェイラ監督が就任して、2週間が経った。

 リーグとカップ戦が平日と週末に組まれる「15連戦」の真っただ中、“アウトレイジ”大槻毅暫定監督からバトンを受け取り、「試合でオリヴェイラ監督の意図や狙いを落とし込みながら、実戦のなかで選手たちも理解を深めている」(槙野智章)という。

 就任直後に連敗を喫したが、その後は公式戦2勝1分1敗。敗れたリーグ13節の鹿島戦も選手たちの闘争心が伝わってくる充実の内容だった。

 また5月9日のルヴァンカップ・名古屋戦ではオリヴェイラ監督が「鹿島時代に採用していた好きなシステム」という4バックが初めて採用された。

 昨年7月のミハイロ・ペトロヴィッチ氏の解任から、堀孝史氏、大槻氏、そしてオリヴェイラ監督。浦和は10カ月の間に4人が指揮を執る、極めて異例の事態を招いている。

 最大のライバルチームの黄金期を築いた指揮官の招聘には、議論が起きたのも事実だ。当初は、「『鹿島のような浦和』を目指すのか?」と首を傾げる声も聞かれた。

 ただ、67歳の指揮官はこの短い期間で、浦和に欠けていた部分を補い、チーム内に新鮮な風を吹かせ、前向きな雰囲気をもたらしている。

興梠は意外な再会に本音もぽろり。

「まさか浦和でまた一緒にできるとは思わなかった。僕は鹿島時代、オリヴェイラ監督の就任後に試合に出られるようになったのでいいイメージがあります。ただミーティングが長くて、練習がきつい。うれしいけれど、そこは嫌かな(苦笑)」

 鹿島時代にリーグ3連覇をともに成し遂げた興梠慎三は、そのように指揮官との再会について本音を明かす。

 オリヴェイラ監督は指導者として、驚きのサクセスストーリーを歩んでいる。もともとはフィジカルコーチとして、ブラジルで評価を高めた。そして2000年、クラブ世界選手権直前に混乱が起きていたコリンチャンスの監督に抜擢されると、いきなり「世界一」に輝いた。49歳で監督としての人生が始まったのだ。

 ブラジルの複数の名門クラブで指揮を執ったあと、2007年から'11年まで率いた鹿島では、リーグ3連覇('07〜'09年)を達成。5年の間に国内主要6冠のタイトルを獲得した。

 今回は7年ぶりのJリーグ復帰。フィジカルコーチ出身とあって、走り負けない、競り合いで絶対に当たり負けない、という点には変わらずこだわりを持つ。

菊池大介「湘南に戻ったような感覚」

 5月11日の練習では、2対2の“局地戦”でバトルしつつ常に攻守の切り替えが要求されるハードなメニューをこなしていた。

 さらに、そこから8対8のパスゲームに移行。「20本つないだら1点」というルールで連係を深めつつ、ここでも球際での厳しさを求め、なおかつ体力的に一段と負荷をかけていった。

 オリヴェイラ流の練習について、湘南から加入2年目の菊池大介は次のように言う。

「まるで湘南に戻ったような感覚です。それでいて雰囲気もよく、気付いたらとてもハードに追い込んでいる感じ。それが試合につながっている。勝つことで、そういう練習をすることでの達成感や、やり切ったという感覚を味わえるので、やり甲斐を感じます。

 対人やバトルのシーンがある練習が多く、そこでの『負けられない意識』が、試合にも生きていますね」

山田直輝のフル出場も練習のおかげ?

 ただハードワークを求めるだけではない。厳しさのなかに「闘う」姿勢が要求される。

 加えて『オリヴェイライズム』というべきか、1勝することでさらに勝ちたいと欲する、貪欲さが刺激されるという。菊池は続ける。

「湘南のときよりもキツいです、練習の内容は。(名古屋戦の勝利で自信がついた?)自信というより、これを次につなげないといけない。次も勝っていって、自信と言える。その実感を持てるように、続けていくことが重要だと思います」

 就任時からオリヴェイラ流の練習をこなしてきた山田直輝は名古屋戦、埼スタで7年ぶりにフル出場し、勝利に貢献した。彼も言う。

「90分間走り切るための練習を監督がしてくれている。それがハードワークできている要因。いい練習ができているからこそです」

 また練習中の変化として感じるのが、コーチ陣、選手それぞれの対話が多いことだ。

 もちろんまだ体制発足から間もないことも関係しているとはいえ、指揮官を中心にコーチ陣が集まって入念に話し合う光景が見られる。オリヴェイラ監督はフィジカルコーチ、ヘッドコーチ……それぞれにプロフェッショナルとして仕事を任せている印象だ。

明確な役割分担と、それぞれのプロ意識。

 例えば、暫定監督から入閣した大槻氏。

 新体制では、ルイス・アルベルト・シルバ氏とともにヘッドコーチを務め、仙台時代に担当していた分析のスペシャリストとしての手腕をさっそく発揮。試合中、監督と話し合いながら、作戦ボードを使って選手に細かく指示を送る姿がある。

 明確に役割を分担し、それぞれが最高の仕事をする。全てが落とし込まれる現場の最高責任者であるオリヴェイラ監督が、統括し最終決断を下す。互いに要求し合う組織としてのプロ意識もまた、浦和の新しい要素だと感じる。

 スタッフと選手、そして選手間でも対話を重ねることで、槙野智章も「チームで何をすべきかが整理できてきた」と強調する。

「選手同士でも話し合いを重ねながら、監督の求めることが体現できてきています。チームとして、何をしないといけないかを整理できました。あとはしっかり数字と結果を出すこと。チーム全体で、守備と攻撃の共通意識を持ててきています」

「勝つため」から逆算した話術。

 槙野は指導法の新鮮さについて語る。

「『勝つため』。そこから逆算して話してくれます。大槻さんとは違った話術があり、士気の上げ方を持っている方。だから面白いし、違うものを学べてプレーの幅は広がるし、非常に面白いです」

 ちなみに、監督はただ厳しい練習を課すだけではない。元フィジカルコーチだけあって「オフ」にも神経を使う。

 試合2日前の5月11日には、連戦をこなした槙野、宇賀神友弥、橋岡大樹らにオフが与えられた。

「月曜日(7日)に休ませた選手もいます。疲れた体を休めるだけでなく、少しサッカーから離れて、精神的に休ませる意図もある。そこで子供たちとディズニーランドに行くとか、そういった過ごし方をしてもらいたい。試合のみならず、練習からかなりの負荷がかかっている。選手は機械ではなく人間。やはり休むことも必要ですから」

オンとオフの切り替えが間断なく。

 そのようにメリハリの大切さを語るオリヴェイラ監督自身は、走ることでリフレッシュするそうだ。

「長年この仕事に携わりプレッシャーと共生することには慣れている。ただ、どこかでリズムをあえて壊すことで、それを軽減することもできると思っています」

 その日、全体のメニューを終えたオリヴェイラ監督が、羽生直行通訳やウェイリントンフィジカルコーチと話しながら颯爽とランニングをしていた。気付けば1時間。指揮官は練習のときとは異なる柔和な表情を浮かべていた。

 そういえば、練習中に選手たちから笑顔が減った気がする。おそらく、いい意味で。限られた1日の練習の時間でも、オンとオフの切り替えが間断なく要求されている。

 オリヴェイラ監督のもと、人よりひと汗多く。闘う集団、浦和が走り始めた。

文=塚越始

photograph by J.LEAGUE

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