コズミックフォース、ダービーへ。藤井調教助手が叶えた12年越しの夢。

コズミックフォース、ダービーへ。藤井調教助手が叶えた12年越しの夢。

 5月5日に行われたプリンシパルSを制し、日本ダービーへ向かう最後の切符を手にしたのがコズミックフォースだ。

 以前に紹介した、共同通信杯勝ち馬オウケンムーンに続く2本目の矢を手にしたのは国枝栄調教師。今週末のオークスには最有力と目されるアーモンドアイを送り込む伯楽だ。

 コズミックフォースに関しては、デビュー前から芝で行けそうと感じたと言う。

「すぐ上の兄、アンティノウス(父クロフネ)はダートで走った馬でした。でも、父親がクロフネからキングカメハメハに替わって、手脚の軽い感じのフットワークをみせていた。だからこちらは芝でも大丈夫だと思いました」

 ただ、調教を進めてもビビッとくるものは感じなかったそうだ。

「デビュー前、正直『これは!!』と感じる動きはしていませんでした。ただ、なんでも淡々とこなせるという感じ。悪くはなかったので、秋の東京でおろすことにしました」

新馬戦で感じた「これなら……」。

 昨年10月8日の東京競馬場。クリストフ・ルメール騎乗、芝2000mの新馬戦でデビューさせた。半信半疑な部分もあったこのレースで、結果は3着と好走した。

 この結果を喜んだのは、担当する持ち乗り調教助手の藤井寿雄だ。過去にはマツリダゴッホやダノンプラチナといったGI馬も担当している。

「ゲート試験に合格してすぐに競馬へ行った感じでした。良いモノを持っている馬だとは思ったけど、正直いきなりここまで走れるとは思っていなかったので、喜ばしい結果でした」

 また、国枝はデビュー戦をみて次のように感じていた。

「スタートはゆっくりだったけど、最後は上々の伸びをみせてくれたので、『これなら……』と思えました」

重賞2着をはさんで、関西遠征では5着。

 2人の見解に誤りがなかったことを、コズミックフォース自身がすぐに証明する。デビュー2戦目となった未勝利戦を勝利すると、続いて挑戦したGIII・京成杯でもいきなり2着に好走してみせたのだ。

「少し踏み遅れた分、届きませんでした。もう少し距離があれば差し切れた。そんな内容でしたね」

 国枝はそう言い、藤井も次のように語った。

「勝ったジェネラーレウーノにうまく立ち回られてしまったし、こちらはすぐに反応できない分、残られてしまった感じでした。

 それでも折り合いに不安がないことは分かったし、むしろよく2着まで追い上げたというレース内容。今後が楽しみになりました」

 次なる一戦は関西へ遠征してのすみれS。重賞で善戦したことで、オープン特別のここは期待も高まった。ファンの見解も同様で、1番人気に推された。ところがとくに見せ場もなく、後方のまま5着に敗れてしまう。

「上位勢に一気にシュッと抜け出されてしまった感じでした。すぐにゴールになってしまう阪神の内回りも合わなかったのだと思います」

 そう敗因を分析した藤井だが、そんな中にも光明を見出していた。

「初めての長距離遠征ということで体も12kg減っていたけど、飼い葉自体は残さずに食べていました」

前での競馬に光明を見出した。

 精神面で大人だと感じることができたわけだが、馬体減に関し、国枝は次のような見解を述べ、対処したのだと続ける。

「結果的に目に見えない疲れがあったのかもしれません」

 だから続く一戦までには2カ月半の猶予を持ち、疲れを回復させてから仕上げ直した。

 こうして出走したのがプリンシパルS。レースを前に、国枝は思った。

「状態はまずまず悪くない。すみれSは後方のまま終わってしまったので、今回はある程度、前で競馬をしてくれれば……と思っていました」

 その意を汲んだか、ゲートが開くと好位で立ち回るコズミックフォースの姿が目に入った。

「ルメールが上手く競馬を作ってくれていると思いながら観ていました」

激走から中2週でダービーだが……。

 直線、先頭に立つと、次から次へと後続勢が襲いかかってきた。しかし、イェッツトを振り切るとブレステイキングの追撃もかわし、先頭でゴールイン。ダービーの出走権を掌中に収めた。

「先頭に立ってからは見た目以上に余裕がある感じでした。勝てると思いましたよ」

 そう言うのは騎乗したクリストフ・ルメールだ。一方、その様をみていた国枝は次のように口を開いた。

「よく粘ってくれましたね。こういう形の競馬が向くのだと思います」

 前半のレースラップは59秒2。この流れを自らつかまえにいった。追い込み勢に差されても不思議ではない流れだったが、最後までしのぎにしのいだ。走破時計の1分58秒2も優秀だ。

 ただし、この激走はもろ刃の剣でもある。好時計で走ってから中2週での日本ダービー挑戦。ただでさえ本番での好走歴の少ないプリンシパルS組で、果たしてこの臨戦過程はどう出るか……。

「正直、前走以上に良くするとか、維持するとか、いわゆる成長曲線を人間側でコントロールするのは難しいと思います。もちろん、ベストの状態で出せるよう、万全の策は取りますが、実際にそれに馬が応えてくれるかどうかは分かりません。

 ただ、コズミックフォースの場合、ペットみたいに大人しい気性の馬なので、余計な心配をする必要がないし、実際に手もかかりません。このあたりのアドバンテージはあると思うので、ダービーでもそれなりに走ってくれると信じています」(国枝)

12年前、ダービー出走権を逃した記憶。

 例年皐月賞組が有利なダービーで、コズミックフォースのライバルとなるのは、オウケンムーンだと、国枝は考えているのかもしれない。

 さて、最後に藤井の弁をもう一度、記そう。先述した通り、過去にはGI馬も手掛けたことのあるベテランだが、担当馬が日本ダービーに駒を進めるのはこれが初めてだと言う。

「マツリダゴッホはダービーへの出走権を懸けて青葉賞に挑みました」

 丁度干支がひと回りする12年前の話だった。当時は3着までに出走権が与えられたその前哨戦で愛馬は4着に敗れ、あと一歩に迫ったダービーへの出走権を逃していた。

「ホースマンなら皆が目指すレースです。毎年、18頭しか出られないその舞台に出させていただけるだけでも嬉しいです。あとはベストを尽くすだけです!!」

文=平松さとし

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