都倉賢がミシャサッカーに適応中。「3位の自信と誇りを胸にピッチへ」

都倉賢がミシャサッカーに適応中。「3位の自信と誇りを胸にピッチへ」

 勢いが止まらない。

 コンサドーレ札幌は、2位のFC東京と対戦しスコアレスドローで終わったものの、これで4節から14節まで11試合負けなし。7勝5分2敗、3位をキープしている。

 6節から3連勝した時は、「春の珍事」「単なるラッキー」とその力を揶揄する声もあったが、いつの間にかそんな声は聞こえなくなった。11試合負けなしというのは運だけでは説明がつかず、力がついてきているからことの証拠でもある。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が指揮を執り始めて、まだ4カ月程度。

 難解とも、成熟に時間を要すとも言われたミシャのサッカーをこれほど短期間で形にした選手たちの戦術理解度と適応力に驚くしかないが、エースの都倉賢は「時間が経てばもっとオートマティックに動けるようになる」と、さらなる進化の手応えを感じている。

「このドローにもチームの成長をすごく感じました」

 都倉はそう言った。

相手の出方に応じてスタイルを変更。

 この日、GKを含め最終ラインからしっかりつないでくる札幌の出鼻を挫こうと、FC東京は前線から猛烈なプレッシャーをかけた。プレスをかけてボールを奪う、あるいはそこでミスをしたボールを拾って素早くゴールに迫るように長谷川健太監督は指示していたという。

 戦術に固執し、自分たちのスタイルを貫こうとすると、そこで相手のやり方にハマり、苦戦することになる。

 札幌も序盤は苦しい展開になったが、途中からつなぎ一辺倒ではなく、前に大きく蹴る場面を増やした。相手の出方を見て、臨機応変にスタイルを変えたのだ。これは言葉でいうと簡単だが、なかなか容易にできることではない。

「本当は全部うしろからつなぐことができればいいんですけど、あれだけ前から来られるとね。わざわざ相手の厳しいプレスを受ける必要がないですし、前には僕とジェイがいるんで、競り合いはほとんど勝てる。そこにボランチが寄せてくればセカンドボールを拾える。じゃそうしようという割り切りと頭の切り替えができた」(都倉)

リーグ戦初勝利で大きな変化が。

 この試合、カウンターが鋭い東京を警戒して、ペトロヴィッチ監督は「ボールを失った後、時間とスペースを与えないように攻守の切り替えを早く、球際を厳しくいく」ことを選手に徹底させたという。試合では、そうしたタスクを選手がさぼらずに実行し、Jリーグでも屈指の2トップを完封した。

「共通意識を持ったところは、しっかりみんなでやれている。戦術的にうまくいかない時も焦らず、みんな同じ意識で戦えている。それが今のチームの強さだと思いますね」

 都倉は、笑みを浮かべてそう言った。

 しかし、今シーズンの最初からそういう試合ができていたわけではない。開幕戦は広島に敗れ、2戦目セレッソ大阪戦はドロー、3節の清水戦は1−3で敗れて、3試合目まで勝てなかった。チームに劇的な変化が生じたのは、いつからだったのか。

「チームがガラリと変わったのは、4節の長崎戦で初めて勝って成功体験を共有できた時です。キャンプからミシャのやり方にトライし、それからもだいぶ変わったんですけど、公式戦で結果が出なくて多少、みんな不安に思っていたと思うんです。

 でも、長崎戦でロスタイムにチャナが劇的なゴールを決めてくれて勝てた。その時、試合で結果から得られる自信と、練習で積み重ねられてきた自信の両輪がカチッとハマったし、みんなとチームのベクトルが合った。そこから成長曲線が伸びていきましたね」

 勝つごとにチームは、自信を膨らませた。上位対決で勝ち点を失わずにしっかりと1点を取れたことは秋のシーズンに必ず生きてくるし、そういう戦いができるところに札幌のチームとしての“強さ”が見て取れる。

「アップから悠々と胸を張っていこう」

 都倉は、最近チームメイトの振る舞いにも変化が出てきているという。

「昨年はJ2上がりの選手ががむしゃらに戦うところだったんですが、今はステージが1つ上がりました。それは順位というか環境が人を作るのもあると思うんです。勝てるようになってからロッカーではみんな落ち着いて、静かに集中している。

 ミシャはミーティングでよく『アップから悠々と胸を張っていこう。強いチームとはそういうものだ』というんですけど、3位という自信と誇りを胸にピッチに出ていっている。それって相手には脅威になると思うんです。今までなかったことですし、上位にいられることで変わったことですね」

ボールを持つ時間が増え、90分走りきれる。

 好調なチームにあって攻撃を支えているのがチャナティップであり、都倉賢である。FC東京戦のキックオフ前、都倉は膝をピッチにつき、スタッフにうしろ足を押さえてもらいそのまま前に倒れる動作をしていた。

 ストレッチかと思いきや「すぐにスプリントできるように腿裏に刺激を入れていた」のだという。その効果か、序盤から猛烈なスプリントを見せ、90分間通して運動量が全く落ちなかった。

 また、今シーズンは11試合5得点でチーム内得点トップ、湘南戦、柏戦では終わり間際に決勝ゴールを挙げるなど「試合を決める男」として勝負強さを見せている。

「ビルドアップする時間が長くなっているし、もちろん練習の強度が上がっているのもあるんですが、足がつる選手がいなくなり、90分走っても足が残るようになりました。

 後半に相手の動きがガクっと落ちた中、チームとしてゴールに向かう部分で相手より足が残っているんで、それが僕の決勝点につながっているんだと思います。だから僕がというよりも、チームとして最後に押し込めているから、点が取れている感じです」

「自分の技術が上がったとかではなくて」

 FC東京戦は空中戦が多くなり、ジェイと都倉、チャナティップの3人のユニットで打開する展開は少なかったが、都倉がトップにいる時はシャドーとともにシステマティックに動くことでチャンスも増え、全体のシュートも増えた。

 1試合平均のシュートは12.1本でリーグ1位、1試合平均得点数1.4点はリーグ3位だ。ちなみに昨年の1試合平均のシュート数は9.1本で12位、1試合平均得点数は1.1点でリーグ12位だった。都倉自身のプレーの質も上がってきているように見える。

「攻撃力が上がっているのは、例えば3人の前のユニットはまずポジション取りをミシャに言われて、こういうシチュエーションの時はこうするというのを練習からきちんと決めて、それをピッチで表現できているからです。特に自分の技術が上がったとかではなくて、練習で反復してきたことが試合に落とし込んでできているのがいいプレーに繋がっているのかなと思います」

 本人は謙虚だが、ミシャの戦術を理解することで個人戦術を含め、幅はだいぶ広がったはずだ。それはイコール今後も伸び代があるということだ。チーム目標も当初は残留だったが、ここにきて上方修正されている。

得点王を争うような活躍ができれば……。

「もともとミシャは、『今年は何かのタイトルを取るぞ』と言っていたんです。このまま3位に入ればACLの出場権が得られる。ACLに出られるのは個人としてもチームとしても成長できるとずっと言ってきているし、今この順位でいられているので僕は妥当な目標だと思っています」

 W杯中断明けは、札幌の戦術がより綿密に分析され、よりスタイルを出させないように相手は工夫してくるだろう。

 その中でいかに臨機応変に戦い、かつ自分たちのスタイルを維持していけるか。目標達成は容易なミッションではないが、チームがさらに成長の歩みを止めず、都倉が得点王を争うような活躍ができれば、チーム初のACL出場を掴みとることは十分可能だ。

文=佐藤俊

photograph by J.LEAGUE

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