ジョコビッチ戦も「打開したい」。錦織圭の自信を裏付ける変化とは。

ジョコビッチ戦も「打開したい」。錦織圭の自信を裏付ける変化とは。

 ポジティブであることが選手にとってどれだけ大きな意味を持つのか、今の錦織圭を見ているとよく分かる。

 ローマで行われているマスターズ1000大会、イタリア国際の1回戦で、試合巧者のフェリシアノ・ロペスにストレート勝ちした錦織の口はいつになく滑らかだった。

「調子が上がってくれば、この前みたいに決勝に行けたり、グランドスラムだったりマスターズでまた上の方に行けると思う。今は、試合前も楽しみな部分が多い。ランキングが下がって(マスターズは)ノーシードということもあり、チャレンジャーの気持ちで入れる」

 この前とは、4月のモンテカルロ・マスターズを指している。トップ5選手のマリン・チリッチとアレキサンダー・ズベレフを連破して、準優勝。故障からの復帰過程にあった錦織の調子が急カーブで上向いた大会だ。

「トップ10に勝ってこれたのはすごく大きかった。明日当たる(グリゴル・)ディミトロフだったり、トップの選手がそんなに怖くはなくなってきている」

 対戦前に「怖くなくなってきている」と踏み込んでコメントするのは、慎重な錦織にしては珍しい。そして、実際にディミトロフをフルセットで振り切ってしまうのだ。

ディミトロフとの3時間の神経戦。

「紙一重」と錦織が振り返ったように、どちらに転ぶか分からない展開、心臓の弱いファンには怖くて見ていられないような試合だった。

 錦織らしい華麗な攻撃を貫いて得た勝利ではない。ディミトロフは試合序盤こそ両サイドから強打を繰り出したが、次第に軌道の高いボールとバックハンドスライスを多用、錦織の強打を封じようとした。

 さすがの錦織もこれには手を焼いた。どこで強打していくか、お膳立てをどう作るか、どの球を見極めて攻めるか。強打の応酬ではなくても、これは両者が持てる力をすべて出し合う全力の攻防だった。頭の芯がしびれるような3時間の神経戦だった。

全仏での16シード以内も見えてくる。

 それでも、試合後は饒舌だった。

「お互い、いい試合ができたのは、まずよかった」

 クレーコートシーズンに入って、なかなか調子が上がらない年下のライバルを気づかいながらのコメントに、充実感がにじんだ。

 第3シードを破って3回戦進出。うまく勝ち進めば、今月末に開幕する全仏で16シード以内に入る可能性がある。このことがどれくらいモチベーションになっているのか、試合後に聞いた。

「ひそかには思っている。大々的に目標にしてもプレッシャーがかかるだけなので、心の底の底くらいでは考えてはいる。2回戦でディミだったり(マドリードで)1回戦でジョコビッチだったり、結構あり得ないような日常が続いているので、早く上がりたい」

 あまり考えないようにしている、と簡単に答えても許される状況だが、「心の底の底」を明かすという大サービス。つまり、プレッシャーよりチャレンジャーとしてのメンタリティ、「また上の方に行ける」という楽しみが今は優勢なのだろう。

「相手が誰であろうと勝てそう」

 会見では、いつかどこかで聞いたような、こんな言葉も。

「相手が誰であろうと、勝てそうな気は徐々にしている」

 フィリップ・コールシュライバーとの3回戦にも、そんな前向きな気持ちで臨んだことだろう。

 相手は2007年以降、世界ランキング20位台、30位台の定位置をほとんど譲らない、名脇役のような選手である。今季ミュンヘンで準優勝と、クレー巧者ぶりを発揮している。ただ、この日の錦織なら、相手が誰であろうと結果は変わらなかっただろう。

グラウンドストロークが火を噴いた!

 試合開始後の数ゲームで、好調ぶりと集中の高さが見てとれた。ディミトロフ戦のようにハラハラしながら見る試合ではないことが分かった。

 サーブが安定し、サービスゲーム全体で74%と高い得点率をマークした。リターンでも出だしの数ゲームで予測とタイミングが合うようになり、優勢のラリーが多くなった。

 そして、グラウンドストロークが久々に火を噴いた。ボールの伸びと、相手を右往左往させる配球は本来のきらめきを放っていた。

 6−1、6−2の圧勝。1時間3分のひとり舞台だった。試合後は「ミスは少なかったし、ほぼ完璧に近いプレーができていた」。とうとう「完璧」という単語も飛び出した。

 感覚がいいから、いい気分で試合や練習に臨めるのか。精神面の充実が好調なプレーを導くのか。いずれにしても、昨シーズンには見られなかった明るいボディランゲージだ。

 故障による離脱で時間とランキングは失ったが、その分、ハングリーさとテニスを楽しむ気持ちを回復したようだ。

「いつか、できれば明日、打開したい」

 前向きな気持ちと、徐々によみがえる自信、そして勝利への渇きを胸に、準々決勝では対戦成績2勝12敗、現在11連敗中のノバク・ジョコビッチに挑む。

「彼とやるときは、弱いところをつかれる気がする。そういうことができる選手。いつか、できれば明日、打開したい」

 強気の言葉がここでも聞かれた。

文=秋山英宏

photograph by Getty Images


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