親会社が東芝からDeNAにかわっても。ブレイブサンダースの強さの“本質”。

親会社が東芝からDeNAにかわっても。ブレイブサンダースの強さの“本質”。

 プロである以上は、勝たないといけない。

 だが、全ての試合に勝つチームなど存在しない。だからだろう。負けたときにこそ、チームの本質が浮き彫りになる。プロフェッショナルな負け様というものがプロスポーツの世界には存在する。

 今シーズンのCS(チャンピオンシップ)の準々決勝、川崎ブレイブサンダースは千葉ジェッツと1勝1敗とし、前後半5分ずつのGAME3に進んだが、15−22で敗れ涙を飲んだ。

 しかし彼らは負けてなお、強烈な印象を残した。決して白旗をあげない姿勢と、個人よりもチームを優先するカルチャーがあったからだ。

 GAME3はGAME2と同日同会場で、5分ハーフの変則的なルールで行なわれる。序盤は川崎と千葉ともに一進一退の攻防で同点のまま推移した。しかし川崎は前半残り2分前後から終了までで、千葉に連続8得点を許した。

リードすると勝率が圧倒的な千葉に対して。

 千葉は今シーズンの天皇杯で優勝し、Bリーグでも最終的に準優勝という結果を残した。そんな彼らの勢いに、相手チームが心を折られてしまう場面は多かった。しかし川崎は、千葉ファンの熱気が充満する船橋アリーナで、一時は1点差にまで詰め寄る執念を見せた。

 川崎の猛追はレギュラーシーズンでも何度か見られた場面だ。

 対する千葉のスタイルは明確で、エナジーのあるディフェンスからの速攻。第1Qをリードして終えた試合では37勝1敗と圧倒的な勝率を誇っていた。そんな千葉の喫した1敗は、川崎が勝ち取ったものだった。

 CS準々決勝のあと、北卓也ヘッドコーチ(HC)はこんな言葉を残している。

「悔やまれることは、みなさんの期待に応えることができなかったことです。胸を張れるのは……それは選手が素晴らしいプレーをしてくれたということです」

 きれい事に聞こえなかったのは、それだけの姿勢を川崎が見せたからだ。

「あきらめない川崎」を象徴した藤井。

 千葉戦で「あきらめない川崎」を象徴するプレーを見せたのが藤井祐眞だった。試合直後の彼は鼻をすすりあげ、言葉に詰まりながら、チームメイトについてこう語った。

「僕の終盤の判断ミスがチームを悪い方向にいかせてしまったので、そこが一番大きいです。この1年間やってきたメンバーに本当に申し訳ないですし、特にニック(・ファジーカス)と辻(直人)さんには本当に申し訳ない。相手もマークしてきますし、そのなかでその2人がやっぱり、一番苦労や努力をしてきたのに、僕も……サポートしきれなかった……」

 そんな想いが口をついたのは、藤井がゲームをコントロールするPGの立場にあることと無縁ではないだろう。

試合前、キャプテン篠山にかけられた言葉。

 そして藤井は、この試合でアグレッシブなプレーを披露できた要因の1つとして、試合前のあるアドバイスを挙げた。自身と同じPGで、チームのキャプテン篠山竜青からの言葉だった。

 普段は篠山がスタメンでプレーすることが多いが、怪我から復帰して間もないこともあり、千葉とのGAME2とGAME3では藤井が先発することになった。藤井は、悔しいはずの篠山から試合前にこんなアドバイスをもらったという。

「どんどんアタックしていけ! それでゴール下に入ってダメだったら、また(高い位置まで)戻ってくればいいんだ。そのくらいの気持ちで今日はやるんだ!」

 篠山の言葉通り、藤井は「そのくらいの気持ち」がこもったプレーで、勝利まであと一歩に迫る原動力となった。

 藤井だけではない。決してあきらめない姿勢と、個人ではなくチームのために全てを捧げる覚悟。それがチームとして、最後まで途切れなかったのは何故か。

 その問いに明確に答えられる選手がいる。今シーズンを戦った川崎の日本人選手最高齢にして、副キャプテン。前身の東芝時代から数えて8年間、現チームで最も長くプレーしてきた栗原貴宏だ。

「目の前のひとつひとつの試合で、全力を出すこと。当たり前のことですけど、それを表現するのは難しいことです。でも、僕らはみんなで声をかけ合いながらやって来たので、それが形として表れているのだと思います」

 その栗原は、8年間の川崎での戦いに一区切りをつけることにした。「新たなステップ」として、来シーズンは移籍して別の戦いを始めることにしたのだ。

親会社は替わっても、本質は変わらず。

 奇しくもチームの運営母体も、東芝からDeNAへと移ることになる。大きな変化のなかで失われるものがあるのではないか。そんな声もあるが、川崎のカルチャーについて、栗原は胸を張ってこう答える。

「僕が抜けても、(篠山)竜青や辻もこのチームに来てから長い時間が経っているので、大丈夫ですよ(笑)。もちろん何人かの選手は替わりますけど、スタッフも一気に大きく変わるものでもないでしょうし、チームの良さという意味で東芝時代からの良い部分は受け継がれていくんじゃないかなと思っています」

 あきらめない姿勢も、チームを優先するカルチャーも、プロバスケットボールというチームスポーツの世界を戦う組織の本質とも言える要素だ。そんな本質をおさえているという事実は、これから先に大きなアドバンテージとなる。

 そして変わってはいけない軸があるからこそ、東芝からDeNAへと後ろ盾となる会社が移るのにあわせて、前向きに変化を受け入れていけるのではないだろうか。

 本質を抑えたうえでの変化なら、それは進化と呼ぶべきものになるはずだ。

文=ミムラユウスケ

photograph by B.LEAGUE

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