PL学園から最後のプロ野球選手に?東洋大学・中川圭太は完全に本物だ。

PL学園から最後のプロ野球選手に?東洋大学・中川圭太は完全に本物だ。

 春の「東都」を制したのは東洋大学だった。

 國學院大の粘り、亜細亜大の急追を振り切った勝因は、リーグ戦前から評判になっていた剛腕投手陣だった。

 エース格として大奮投を続けた上茶谷大河(4年・181cm85kg・右投右打・京都学園)に、その奮投を受けて試合終盤を150キロ前後の速球と高速フォークで締めた守護神・甲斐野央(4年・185cm75kg・右投左打・東洋大姫路)、さらに本来なら先発の両軸となるはずだったのがリーグ戦序盤で足首に打球を当てて無念の戦線離脱となった本格派右腕・梅津晃大(4年・187cm92kg・右投右打・仙台育英)がいて、 2016年春のセンバツ優勝投手の村上頌樹(2年・174cm75kg・右投左打・智弁学園)まで控えているという贅沢な布陣だ。

「そうは言っても、まだ働いたのはこの春だけでしょう」

 そんな声も一方からは聞こえてきて、実は私も、少なくても1年2シーズンは好調を維持できて初めて“実力”だという信用の仕方をしているほうである。

1年春からレギュラーのPL出身内野手。

 ならば、中川圭太(4年・180cm75kg・右投右打・PL学園)だろう。むしろ、こちらを推したい。

 入学直後、1年春のシーズンからレギュラーを獲得すると、この4年生の春までの7シーズン、大きな故障もなくコンスタントな成績(通算打率0.293)をあげ、「鬼の東都」でベストナインを4回受賞。5シーズンで3回のリーグ優勝に貢献してきた。

 今春のリーグ戦、中川圭太の実線は一段としたたかになったように見えた。

 2死二、三塁のフルカウントからライトポール付近に着弾した打球がファールになると、次の内角速球を一転レフト線にライナーで打ち返し、別の試合では、初球から相手投手の勝負球のチェンジアップを捉えるとレフトスタンド中段に放り込む。

 先回りして狙い球を待ち構え、正確に捉えるバッティングには、この春のシーズンで“凄み”が加わった。

守備に脆さがないのも中川の美点。

 これだけ「打てる二塁手」だと、守りはだいじょうぶなのか……と懸念されるものだが、中川圭太はむしろ「守れる二塁手」として高く評価したい。

 外野の芝生に入って守れるのは、横の動きと肩に自信がある証拠だ。

 180cmあると、大きく動いた時の球際で、体が浮いてあと1歩及ばない場面が多いが、中川のディフェンスにはそういう“脆さ”がない。

 アウトに出来るエリアはそつなくカバーして、おそらくゴロはイレギュラーするもの……という意識で向き合っているのだろう。打球が跳ねた時の“驚き”が見えず、何事もなかったようにさばいてしまう。

 二盗のベースカバーとタッチプレーの鮮やかさも、忘れずに伝えておきたい。一塁側に逸れたショートバウンドをグラブで吸収したままタッチプレーに持ち込む、流れるような連動の見事なこと、プロ野球選手を見ているようだ。

 実は、PL学園3年春の「中川圭太」の実戦を見ている。対戦相手は失念したが、大阪府大会の舞州球場(現・大阪シティ信用金庫スタジアム)だった。

 PL学園の野球部がなくなるかもしれない。そんなウソみたいな報道が流れた少しあとだった。

 そうはいっても、なんだかんだで存続するのだろう。そうに決まっている……という根拠なき予断と、目の前でノックを受けているPL学園の選手たちの、“あのPL”の末裔たちとはとても思えないような心もとないボールさばきと身のこなしを眺めながら、まさか……というゾクッとした思いを背中に感じて、シートノックが早く終わってくれないかと願ったものだ。

PLナインの中で1人だけ抜きん出ていた。

 そんなPLナインの中で、二塁手・中川圭太は1人だけ抜きん出て上手かった。

 たしか178cm68kgぐらい。スリムなユニフォーム姿とスマートな身のこなしが、今でもまぶたの裏にはっきりと記憶として残る。大学では、右にも打てて小技もできる融通の利くいい「2番打者」になるのでは、と思っていた。

 4-6-3の二塁送球に遊撃手のベースカバーが間に合わない。今のような一発長打の怖さは感じなかったが、それでもセンター前や右中間ならいつでも打てる。そんな、いかにもPLらしい「野球上手」な中川圭太を今でもはっきりと覚えている。

 あってはならない“一大事”が、まもなく現実になろうとしている重苦しさなど一切感じていないように、淡々と、飄々と、きちんきちんと折り目正しいプレーを重ねて、3年の夏はとうとう大阪の決勝まで勝ち進んだのだから、中川圭太自身もすごかったのだろうが、やはり「あのPL」が強かったのだ。

名門の終焉期を彩って、プロへ。

 おそらく、この秋のドラフトで上位で指名されて、PL学園出身の最後のプロ野球選手になることだろう。

 今岡誠(元・阪神ほか)二世。タイプのよく似たPLの先輩を引き合いに出されて、そんな期待のされ方をしているようだが、私には、巨人・坂本勇人のようなリーグを代表する強打の内野手に成長しそうな逸材に思えて仕方がない。

 桑田真澄、清原和博、立浪和義……数えきれないほどの名選手を輩出した「PL学園」だが、私が大切に覚えておこうと思うPLの記憶があるとしたら、それは、華麗な身のこなしと洗練されたプレースタイルで不世出の名門の終焉期を彩った中川圭太の姿かもしれない。

文=安倍昌彦

photograph by AFLO

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