シアラーが語るケインとサラー。「私の記録をさらに超えて欲しい」

シアラーが語るケインとサラー。「私の記録をさらに超えて欲しい」

点取り屋は点取り屋を知る。プレミア通算260点を
誇る英雄は、自らの年間記録を破った後輩を讃える。
さらに注目を集めるエジプトのスピードスター、
中国「爆買い」への懸念まで、縦横に論じてくれた。
W杯を前に、Number946号(2018年2月15日発売)の記事を全文掲載します!

 ハリー・ケインのプレースタイルは、現役時代の自分に少し似ていると思うし、テディ・シェリンガムを連想させるところもある。まず、ボールを足元に収めるプレーであれ、フィニッシュの場面であれ、ほとんどの動作がとてもこなれている。それに空中戦も強い。だからヘディング、ロングレンジのシュート、至近距離と、あらゆるパターンでゴールを決めることができる。おまけにケインはフリーキックからでもゴールを狙える。これは大きな特徴だ。

 そもそも彼は、点取り屋にとって必要不可欠な「嗅覚」と気持ちの強さを持っている。試合でゴールを決められなかった時にはフラストレーションを感じるし、一旦ゴールを決めると2点目、3点目と、さらに貪欲にゴールを挙げようとする。それこそが点取り屋のあるべき姿なんだ。

 ケインは2017年、私が持っていたプレミアリーグの年間最多得点記録を塗り替えた。22年間破られなかった記録だが、個人的にはすごく嬉しいよ。自分を超えていくのは、やはりイングランドの選手であってほしいと思っていたからね。

昨年はメッシ、ロナウド並みに点を獲った。

 さらにケインは昨年、クラブと代表を通算すると57ゴールを決めて、リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドの存在さえ脅かした。これは仮定の話だが、プレミアで10年間プレーし続ければ、私が持っている生涯得点記録、260ゴールさえ超える可能性があると思う。

「今後、10年間プレーし続ければ」という言い方をしたのには理由がある。遅かれ早かれ、レアル・マドリーやバルセロナのようなクラブが触手を伸ばしてくるからだ。

 だからこそスパーズは2〜3年以内に確実にタイトルを獲得する必要がある。そうなれば、ケインはスパーズこそ自分の居場所だと改めて確信するはずだ。

 逆の場合には、今後の身の振り方を考え始めてもおかしくない。今の彼はどんなクラブにも移籍できるからだ。

ソン・フンミンやデル・アリにも恵まれ。

 ケインがかくも好調を維持できているのは、チームメイトに恵まれている側面も大きい。たとえばデル・アリ。彼は優れたスキルを持ったMFだが、セカンドストライカーとしてもプレーできる。しかもイングランド代表でもコンビを組んで、互いの能力を引き出せるようになった。

 韓国代表のソン・フンミンもポリバレントな選手で、アリと同じようにケインをサポートする。さらにスパーズでは、クリスティアン・エリクセンまで攻撃に絡んでくる。サポーターの間では、ケインを含めた彼ら4人は、「ファブ・フォー(最高の4人)」と呼ばれている。こういう環境があるからこそ、ケインは自分の持ち味であるFWとしての懐の広さを、さらに活かすことができるようになっているんだ。

サラーで見逃せないのは運動量だ。

 現在のプレミアでは、モハメド・サラーも熱い注目を集めている。彼は去年、ローマからリバプールに移籍したのを機に、一気に才能を開花させた。今シーズン、ほとんどの試合でコンスタントにゴールを決めてきたのは、まさに驚異的だ。

 能力的には、まずスピードがあるだけでなく運動量も豊富で、もちろんテクニックのレベルも高い。右ウイングのポジションからカットインして、左足でゴールを狙うパターンが得意だが、いわゆる「トップ下」でプレーすることもできる。「エジプトのメッシ」と呼ばれる所以だろう。

 彼は'17年、アフリカの年間最優秀選手に選ばれたし、エジプト代表でも5ゴールを決めて、7大会ぶりのW杯出場を果たす原動力にもなった。うまく波に乗れれば、自分の存在をさらにアピールできるだろう。

 その意味でも、常日頃、クラブチームでいかに地道にステップアップしていけるかが鍵になってくる。まずはプレミアの試合をしっかり戦い抜き、リバプールをCL出場圏内に導いていく。それが彼の使命だ。

 彼はこれまで多くのクラブを渡り歩いてきたが、個人的にはアンフィールドに腰を据えて、できるだけ長くプレーしていってほしい。それはリバプールのためだけでなく、彼自身のためにもなると思う。

オーバメヤンの課題はメンタル面だった。

 ピエール・エメリク・オーバメヤンも、様々なクラブでプレーしてきた選手だ。特にドルトムントでは、144試合で90以上のゴールを決めている。この決定力の高さは天性のスピードに負うところが大きいが、身体能力の高さだけを要因に挙げるのは適切さを欠くと思う。フィニッシュのタッチが良くなければ、得点にはつながらないからだ。彼はゴール前での冷静さという点でも超一流だし、ハードワークも厭わない。だからこそどんなチームでもゴールを量産してきたのだと思う。

 ただしオーバメヤンに関しては、メンタル面の不安定さも指摘されてきた。ゴールを決めた直後に、子供じみたマスクを被って物議をかもしたこともあるし、練習に遅刻することも珍しくないらしい。28歳でベテランの域に入りつつあるのだから、精神的に落ち着いてきてもいい。

 その意味でも、冬にアーセナルに移籍したのは、プラスに働くかもしれない。ベンゲル監督は、プレー以外の部分でも選手にディシプリンを求める。自分を良い意味で律することを覚えれば、オーバメヤンはFWとしてさらに飛躍できるはずだ。

ジェズスのポリバレントさは悩みのタネ?

 現代のFWには、ゴールを決めるだけでなく、様々な局面やポジションでプレーできる能力も求められる。ガブリエル・ジェズスもポリバレントな選手だ。

 セレソンに若くして名を連ねているだけあって、決定力の高さは折り紙付きだ。それでいて彼は、中央からワイドに流れていくプレー、セカンドトップ、ウイングや攻撃的MFまでこなすことができる。

 ただし彼の場合は、こういう特性がクラブ側にとって悩みのタネにもなっている。

 ジェズスは昨シーズン途中、マンチェスター・シティに移ってきたが、ペップ・グアルディオラでさえも、適性を見極めるのに苦労しているような印象を受けた。

 とはいえ、この問題は時間が経てばいずれ解消されていくだろう。むしろ不安材料になっているのは、怪我の多さだ。

W杯でスターになれる可能性はある。

 彼はシティに移籍してから、何度か故障に悩まされてきた。私自身、イングランドのスタイルに適応できるだけのフィジカルの強さを持っているのだろうかと、疑問に思ったこともある。だからこそ彼には、怪我の多さをなんとか克服して、さらに才能を伸ばしていってほしい。私は単純に彼のプレーを見るのが好きだし、今年のW杯では、大会のスターになれる可能性も秘めているからだ。

 その意味でも、シティに移籍してきたのはいい選択だったと思う。グアルディオラは若い選手を育てていく手腕に関しては定評がある。またクラブ側は週給10万ポンドで、'23年までの長期契約をオファーしたという噂も流れている。

 シティのようなクラブから、それだけ評価されるというのはすばらしいことだ。彼は第二の故郷になったイングランドで、才能を伸ばしていってほしい。

モデストはフランスでも即戦力級だが。

 最後はアントニー・モデスト。彼の存在を知ったのは、フランスリーグからブラックバーン・ローバーズにレンタルされた時だった。もともとブラックバーンは、私も現役時代にプレーしていたクラブだったし、ペナルティエリア内で堂に入ったプレーを披露する姿に、感心した覚えがある。

 その後、彼はホッフェンハイムやケルンでもプレーして一気に注目を集めた。私は彼がさらにステップアップを狙うんだろうと思っていたが、なんと中国の天津権健と長期契約を結んでしまった。

 能力だけを見れば、彼はフランス代表でも即戦力として通用する。ロシア大会でも活躍できるだろう。だが代表に招集されたという話は、やはり聞こえてこない。

 もちろん、最終的に決断するのはモデスト自身だ。魅力的なオファーに惹かれたのも理解できる。だがそれで本当に満足なのだろうか。点取り屋としてさらに高みを目指したいのなら、ヨーロッパに戻ってくるしか選択肢はないと思うのだが。

(翻訳・田邊雅之)

(Number946号『アラン・シアラーが語るハリー・ケインとモハメド・サラー。「私の記録をさらに超えて欲しい」』より)

文=デイブ・ハリソン

photograph by Getty Images


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