オーストラリア、ケーヒル選出の謎。スポンサー枠疑惑に監督も意味深。

オーストラリア、ケーヒル選出の謎。スポンサー枠疑惑に監督も意味深。

 1年もゴールを決めていなかった選手だぞ!?

 クラブで試合に出ていないのに、どうしてメンバーに?

 スポンサー絡みの選出だ!

 こちら、日本での騒ぎではない。ライバル国、オーストラリアの話である。

 ワールドカップ(W杯)のメンバー選考は、当然ながら一大事だ。選手本人にはもちろん、ファンにとっても。それは世界中で変わりはない。

 オーストラリアは先月、まずは32人の予備登録メンバーを発表。そして、その数日後に26人に絞り込んだ。その選択に、「忖度」との非難の声が上がった。

 渦中の選手は、ティム・ケーヒル。ドイツW杯初戦で2得点を決めるなど、日本戦でのゴールの印象が強く、「日本キラー」とも呼ばれた選手だ。

予選プレーオフでは大仕事をしたが。

 今回のW杯予選でも、シリアとの重要なプレーオフで大きな仕事を成し遂げた。初戦を1−1で終えて迎えたホームでの第2戦。開始6分で先制を許したオーストラリアに、7分後の同点弾で息を吹き返させたのがケーヒルだった。そのままもつれ込んだ延長戦で決勝点を決めたのも、この背番号4だった。

 しかし、その得点は、代表での13カ月ぶりのゴールだった。

 2年前、10代でイングランドに渡った英雄の帰還に、オーストラリアは沸いた。だが、その熱も長くは続かなかった。メルボルン・シティでは徐々に出場機会を失っていった。ピッチでプレーすることを望んだケーヒルは今冬に契約を解除し、再びイングランドを目指した。チャンピオンシップ(実質2部)ではあったが、初めてプロ契約を結んだクラブ、ミルウォールが何かを取り戻させてくれると信じたのかもしれない。

 現実は甘くなかった。

 今季における出場試合数だけみれば、メルボルン時代より4試合増えたが、先発はゼロ。出場時間数は、メルボルンでの94分間を下回る計63分間にとどまった。

協会スポンサーの石油会社が“改名”。

 歌を忘れたカナリアに、国民は拍手を送らない。スコットランドでのこととはいえ、発表直前の試合で決めたハットトリックにより、今季計8得点としたジェイミー・マクラーレンが32人から外される6人に入ったことも、火に油を注いだ。

 いや、油ではなく、ガソリンがぶっかけられたと言った方が適切かもしれない。

「最悪」。SNSでつぶやかれる。

「商業的な理由ではないか」。メディアも率直に問うた。

 オーストラリア・サッカー協会の大スポンサーである石油会社「カルテックス」は、W杯を前にキャンペーンを打った。国内5つのガソリンスタンドの名前を、ケーヒルの名前をもじった「ケーヒルテックス」に変えたのだ。

「彼はすべてにおいて、特別なんだ」

 代表チームの「顔」。自身の不振と同僚の好調、そして、スポンサーを軽んじられない協会の立場。協会トップは「絶対にない」と明言したが、忖度が疑われるだけの材料はそろっていた(率直に質問が飛んだのは、まだ健全さを示しているのかもしれない)。

「彼は特別なケースなんだ。すべてにおいて、特別なんだ」

 メンバー選考したベルト・ファンマルバイク監督のコメントも、何だか意味深に聞こえるものだった。

 だが、当の本人に揺らぎはない。『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙は、「(選出は)僕のデータを見たからだと思うよ」とのケーヒルのコメントを伝えている。

 この地元メディアは、ケーヒルの肉体的データに衰えが見られないとする代表スタッフによる発言を紹介している。そのスタッフは言う。「必ずしも、我々の歴代最高のアスリートではないかもしれない。特定の分野で飛び抜けているわけではないかもしれない」。だが、その肉体は耐性に優れているという。

「30秒、30分であれ、準備ができている」

 オーストラリアの最終メンバー発表は、他の国に比べて少し遅かった。ようやく今月に入り、ロシアに向かう23人の名前が挙げられた。キャンプ地トルコで明かされたリストには、ケーヒルの名もあった。

 オランダ人指揮官は、最年長38歳の選出について口を開いた。

「30秒であれ、30分であれ、私が必要とする時、彼は準備ができているはずだ」

「ティムの状況は、誰もが知っている。彼とは何度か話した。我々の間では、状況は非常に明確になっている」

「ギャンブルだって? いつものことさ」

 W杯出場を決めた後からチームを預かった指揮官は、負荷のかけ方など開幕に向けてのチームづくりについても語っている。

「自分たちがしていることと、どんなリスクがあるかについて、我々はたくさん頭をめぐらせ、話し合いをしている」

「これがギャンブルだって? いつものことさ」

 このコメントが、日本のものではないのが残念だ。

 ペレ、ウーベ・ゼーラー、ミロスラフ・クローゼ。もしもケーヒルがロシアでゴールを決めれば、W杯4大会で得点した、この偉人の列に連なることになる。先発出場は、まずないだろう。だが、ドイツの地での日本戦の2得点も、交代出場から奪ったものだった。

 大会前最後の親善試合となる9日のハンガリー戦、話題をさらったのは初選出の19歳、ダニエル・アルザニのゴールだった。ケーヒルは残り10分で交代出場。今年2度目の代表戦のピッチに立った。

 あとは、本番で力を証明するだけだ。

文=杉山孝

photograph by Getty Images


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索