代表の攻撃に閉塞感が漂う理由は?必要なのは西野監督が方向を示す事。

代表の攻撃に閉塞感が漂う理由は?必要なのは西野監督が方向を示す事。

 閉塞感を生み出す原因、その正体を知りたかった。

 選手各々が持っている武器や魅力がこのチームでは活かされていない。怖さが伝わるプレーができない。

 スイスというレベルの高い相手との一戦だからなのか? 慣れ親しんだ4バックへと布陣を変えたものの、日本代表のサッカーに躍動感が漂ってはこない。1点を追う形での選手交代であっても、その選手を活かすサッカーができない。

 選手交代は監督がチームに強いメッセージを送る手段なのに、チームに変化が起きることはなかった。わずか3試合しかないトレーニングマッチ。スイスは唯一のW杯出場国だ。勝敗以上にその中身が気になった。

「狙いとしてはリトリートを完全にするのではなく、前からうまくハメに行こうという形をとって、失点するまではうまくできていた」

 右アウトサイドで出場した原口元気がそう試合を振り返るが、その時間帯、大迫勇也は苦しんでいた。前からプレスを仕掛けてもうまくかわされる。それをサポートすべき味方がいないため、ひとりですべてを背負っていた。

「練習からずっと前から追うことを意識していたけど、前は行く、後ろは下がるになると、どうしても厳しい。後ろも下がっている意識はないのかもしれないけど。

 そこのかみ合わせがうまくできず、もどかしさを感じた試合でしたね、僕が出ているときは。そこをいかに分担していけるのか、どうみんなでカバーして走る距離を減らして守備ができるのかというのが課題になる。本当にあのやり方のままだと、どの選手がどのやり方をしたとしても30分で死ぬと思うんで。考えないといけない」

 相手との接触で腰を打撲して、前半終了前に交代した大迫はそう語った。

誰がどこへプレッシャーにいくか。

 大迫に代わり出場した武藤嘉紀が、さらに具体的な説明を加える。

「前半は3枚のディフェンダーに対して、大迫くんがひとりで全部追っていた。それだと、やっぱり攻撃に力を割けない。いざボールを取った、裏へ抜けた、そこで力尽きて、できないということほどもったいないことはない。だったら、周りと大迫くんとでやるという風にしていかないといけない」

スイスが仕掛けた単純な日本対策。

 原口に限らず、吉田麻也も失点するまでの守備は良かったと話している。確かにチャンスを作らせることはなかったが、スイスに必死さはなかった。攻守のポイントとなる大迫を抑え、あとはDFラインの裏を狙ってボールを展開し、そのラインを下げさせる。スイスがやっていたのはただそれだけだ。

 日本はサイド攻撃から好機を作ろうとしていたのだろう。しかし、マイボールになってから時間がかかる。クロスを上げるときにはすでにゴール前を固められ、ペナルティエリア内に侵入する選手の数も多くないため、チャンスにはならなかった。

「クロスのときに真ん中にひとりしかいない。それに対して、相手が2人いて、1人が完全にニアにいるから、ニアにも突っ込めない。もう1人入ってきてくれれば分散できるし、ゴールに繋がりやすくなる。

 ガーナ戦は決定力不足と言われてもしかたがないけれど、スイス戦に関して言えば、決定力不足と言われると難しくなる」と武藤が語る。

 西野朗監督が試合後に口にした「決定力不足」以前の問題だったのだろう。足りないのは決定力ではなく、決定機を作る力だった。

乾にかけた「ボールに触れろ」という言葉。

「どんどん、ボールに触れろ」

 後半11分、乾貴士は西野監督からそう指示を受け、ピッチに送り出されている。しかしピッチをワイドに使いたい乾に、パスがなかなか来なかった。

「ボールに触れろ」という言葉は、果たして指示と呼べるのだろうか? そこに戦術的な意図があったのか?

「もっと中に入れということなのかもしれない」と試合後に乾が口にしたが、それが本心だとは思わなかった。中に入ってプレーすれば、自身の武器を発揮できないからだ。彼が抱くイメージはあくまでも、ワイドにピッチを使うことだった。

「攻撃に関しては若干狭くなっていた感じがあったんで、サイドに張った。右で作り、逆サイドに振ってもらえたらフリーのシーンがいっぱいあったし、そういうシーンができればいいなと思っていた。

 みんな中央に固執しすぎる傾向があるけど、フットサルをやっているわけではないので、広くピッチを使わないともったいない。僕が出たらそういうオプションもあるよ、と周りに言っていかなくちゃいけない。まだ時間があるので合わせられると思うし、(右で作って左へ展開するというのを)徹底したい。それを決まり事にするくらいでもいいと思う。それは僕が決めることではないけど、言わないよりかは言ったほうがいいと思う」

大迫もサイドチェンジの使い方に苦悩。

 ワイドにポジションをとることで、ゴール前を固めた相手DFを動かし、ドリブルで仕掛けていく……。そういう持ち味のある乾というカードを切ったとき、監督の頭のなかに、「ピッチをワイドに使う」という絵は描かれていたのだろうか?

 ただ単純に先発選手に疲労が見えたから交代したのだとしたら、乾にかけた「ボールに触れろ」という言葉は、指示ではなく、単なる励ましみたいなものでしかない。

 大迫は攻撃の課題について次のような言葉で表現した。

「どういうボールがほしいとか、どういうふうに自分を活かしてほしいかというところまでには、正直たどり着かなかった。サイドに入ったときにもっと、センタリングをあげてもいいと思う。そこでこねてこねて取られてというのが多かったから。

 そこはみんなにも伝えましたけど。サイドチェンジに入った瞬間に攻撃のスイッチを入れることをもっと意識しないといけない」

本田「早くほしいという議論は折り合わない」

 3人目の動きや連動性などのコンビネーションの質を上げていくことに重点をおくのが本田圭佑だ。しかし攻撃陣の選手のなかには、もっと速い攻撃を望む声もある。そのギャップについて問われた本田は次のように答えた。

「そういう話は選手から直接聞いている。それをどう詰めるかという作業は場面によると思います。だから、早く(ボールが)ほしいという議論は、たとえば岡崎とは10年くらい代表で話をしているけれど、一切折り合うことがない。岡崎はボールをもらいたいわけですよ。フォワードはそういうポジションだから」

 本田が望む連動性を高めることの必要性は言うまでもないことだ。しかし、準備期間は限られている。

「ここからのフェーズは徐々にシビアな会話と、自信の融合がものすごく重要かなと思います」という彼の言葉ももっともだ。けれど、今現在チームが抱えている危機感は、精神論だけでは解決しない。課題解消のために現実と向き合い、より具体的かつ論理的に解決策を見出していくべきだと思う。

監督の存在感が希薄すぎる。

 当然それは本田の仕事ではなく、指揮官の仕事だ。明確なチームコンセプトを打ち出し、選手を導くのが監督の務めだからだ。欧州のチームでは、選手は自身を輝かせようとエゴをぶつけ合うこともいとわない。しかし、最終的な決定権を監督がしっかり握り、チームとしての方向性を示すため、衝突が障害にはならないのだろう。

 材料を揃え、料理するのが監督だ。その作業のなかで、素材の持ち味を最大限に引き出し、同時に複数の素材を組み合わせることで、より良質な一皿を作り上げていく……。だからこそ、選手個々が輝くことができる。

 戦術が複雑化し、組織力が勝敗を左右する現代サッカー。実際にプレーするのは選手であって、監督はそこには立たないとしても、その存在感はピッチに漂っている。それが監督なのだ。

 選手たちを自由にプレーさせるためには、監督がピッチ上でもイニシアチブを握らなくてはならない。

 しかし残念ながら、選手やチームに絶大な影響力を持つはずの監督の姿を、日本代表の選手の言葉から感じることは少ない。それこそが、この閉塞感の正体なのだと思う。

 前監督は強すぎるほど、その存在感を示し続けた。それが反面教師となり、監督は存在感を薄め、選手たちには「自分たちで」という想いが募っているのかもしれない。それでも監督が旗を持ち、向かうべき方向を指し示さなければ、チームは動けなくなる。

文=寺野典子

photograph by Takuya Sugiyama


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