“韓国のメッシ”は代表入りしたが……。日韓の現状が恐ろしく似る背景とは。

“韓国のメッシ”は代表入りしたが……。日韓の現状が恐ろしく似る背景とは。

 危機感が、ぐっと高まっているところか。

 ロシアW杯に臨む日本代表のことだ。

 大会2カ月前に西野朗監督が就任。本大会までの実戦は3試合のみ。ここまでひとつも勝てていない。おまけに9日のスイス戦の際には監督から「危機ではない」という主旨の発言まで飛び出したという。

 いったいどうすべきなのか。日韓のサッカー文化比較をやってきた立場からいうと、「4-4-2採用」というアイデアは提案できる。韓国は昨年11月にこのシステムでコロンビアに勝ち、今年3月にはポーランド相手に後半45分善戦した。これについては、12日のパラグアイ戦を見て状況が依然としてよくなければ、改めて提案をしてみたい。

 ここでやってみたいことは、韓国との比較から「日本が今、どういう状況か」を照らし出すことだ。キャンプ地オーストリアからの現場レポートとは少し違う視点を。

恐ろしく似ている、日韓代表チームの現状。

 韓国は6月3日に自国を発ち、オーストリア入りした。

 5月28日のテストマッチ・ホンジュラス戦は2−0で勝ち、一時雰囲気はよくなった。代表キャップゼロのまま14日発表の28人リストに加わっていたバルサ育ちのイ・スンウ(ベローナ)の代表デビューが勝利に華を添えた。いっぽうで6万人超収容のテグスタジアムが約半数しか埋まらず、“関心不足“が囁かれもしたが。

 その後、1日に国内最後の親善試合でボスニア・ヘルツェゴビナ相手に1−3と敗れ、重苦しい空気に戻った。現地入りした後も“仮想メキシコ”のボリビアに0−0のスコアレスドロー。

 国内メディアはこんな見出しを打った。

「本大会も目の前なのに……完成度が必要だったボリビア戦、課題だけが満載」(OSEN)。

 18日の大会初戦、スウェーデン戦前の最後のテストマッチは11日に行われるセネガル戦だが、これは事前に決まっていたとおり完全非公開。「SPOTV」の記事がポータルサイトで大きく取り上げられた。

「“隠しに隠す” 秘密のベールに包まれたシン・テヨンコリアの“完成形”」

 昨年7月に就任したシン・テヨン監督のもと、直前までチーム作りの形を探り、なんとか大会に間に合わせる。そのためのスイッチを探す。選手起用に、システム。何かが化学反応を起こすのではないか。そこに微かな希望の光がある。そういった段階だ。焦りは当然ある。「自分たちと世界の距離が開いてしまった」という悲壮感もある。

 似ている。今の日本と韓国の代表は恐ろしいほどに似ている。

 そしてちょっと違うところがある。そこにもまた見るべき所がある。

FIFAランクで61位の日本、57位の韓国。

 最新のFIFAランキングで日本は61位、韓国は57位だった。32カ国の大会出場国中、それぞれ30位と29位。下から3番めと4番めだ。

 3月の欧州遠征以降、結果が芳しくない。5月の大会前最後の国際Aマッチウィークでは、日本が国内で1試合、韓国が2試合組んだ点は少し違ったが、「国内で送り出す雰囲気」は非常に似ていた。壮行試合の意味合いの強かった国内ラストゲームではこんな共通点があったのだ。

日本 0−2 ガーナ
韓国 1−3 ボスニア・ヘルツェゴビナ

 いずれもホームにて、W杯不出場国に、2点差で負けた。しかも大会まで時間のないなか就任した指揮官が「本大会ではっきりと使うか明言しない」3バックを採用して批判を浴びた点までそっくりだ。2試合を現地で取材したが、韓国メディアから「東アジアは、暗いな」と何度も言われた。

W杯の準備段階での日韓比較をしてみると……。

 W杯の準備段階で、悪いことは決して悪くない。

 サッカーの日韓比較の観点から、こう書いてきた。

“準備段階で苦労したほうが、W杯での結果がいい”

 という近年のデータがあるからだ。'02年、'06年、'14年大会では、韓国のほうが本大会での成績が上だった。'02年は言うに及ばず、'06年大会も同じくグループリーグ敗退ながら、勝ち点1だった日本に対し、韓国は4を挙げた。'14年大会で両国ともに1勝も挙げられなかったが、韓国が大会総得点で1点上回った。

 その間、日本は準備段階でアジアカップ優勝、コンフェデレーションズカップでの健闘を見せていた。

 またジーコ監督就任以降は、アウェーで欧州の国に勝つという新たな歴史も築き始めた。同監督時代にチェコに勝ち、ザッケローニ監督時代にはフランス、ベルギーに勝った。

韓国は新監督就任1年半以内で本大会へ。

 韓国はというと、ほとんどの大会の準備期間で監督交代を経験し、新監督就任1年半以内で本大会を迎えている。'06年大会前に至っては、モルディブと引き分け、ベトナムに敗れるショックも味わった。それでも大会では日本の結果を上回ってきたのだ。

 成績不振により監督交代を繰り返し、揉める。近年は4年間ひとりの監督に指揮を任せたことがない。しかし、最終段階でまとまり、ぐっと成長曲線を大会直前に合わせる。結果、安定してきた日本に“追いつき”、少しよい結果を挙げる。

 '02年大会などは前年12月まで韓国国内でまことしやかに「ヒディンク解任」が論じられていた。準備期間が上手くいっていた共同開催国日本の姿に焦っていたのだ。年が明けても、キューバに0−0で引き分ける失態を演じた。しかし、オランダの名将は不調の時期にも選手の体力データをとりつづけていた。これを大会直前の合宿時に選手に見せ、そこで初めて自信をつけさせた。

「いいか。これがヨーロッパのトップ選手のデータで、これがおまえのものだ。ひとつも負けていないぞ!」というふうに。

 これを筆者は「安定性の日本、突発性の韓国」という定義で描いてきた。

日韓ともにベスト16へ……その中身の違い。

“直前の変化がプラス”という点は、2010年の岡田ジャパン時代の話を引き合いに出すまでもない。

 この時、韓国はアジア最終予選を無敗で通過。パク・チソンが代表での成熟期を迎えていた。しかしいざ蓋を開けてみると、直前で「守備的サッカー」という変化を加えた日本の結果が上回った。同じベスト16ながら、日本はパラグアイにPK負け。韓国はウルグアイに90分負け。W杯ではPK負けは記録上ドローだから、日本のほうが上回った。でなくともグループリーグで日本は2勝、韓国は1勝だった。

 ワールドカップは韓国と戦うものでもなんでもない。それを承知でさらにいうと、本大会で日本が同国の結果を上回ったのはこの1回だけだ。

韓国は「どう戦うか」を明確にしたが……。

 だったら西野監督には腹をくくって、本大会で“突発的事故を起こす”気概を見せて欲しい。しかし現地からのレポートでは、そういったものは伝わってこない。それどころか、どう戦うのかも分からない。そこにストレスが溜まる。どう戦うかを隠しているのならまだよいのだが。

 短い準備時間の中、3バックを試した。韓国のシン・テヨン監督も「4-4-2がベスト」との多くの認識のなか、6月1日の国内最終テストマッチで3-4-3を試し、多くの批判を浴びた。しかしこれは「プランB(オプション)」であることを明言しており、「だったらプランAを固めろ」という世論・メディアの反発も明確だった。

韓国代表に最後の最後で入ったイ・スンウ。

 いっぽうこの時期の最終エントリー発表でも「安定型」「突発型」を思わせる一幕があった。

 日本は「おじさんジャパン」と一部で書かれるほどの「安定型」メンバーだった。そこに逆戻りした、というべきか。いっぽうの相対的に安定しているように見える韓国のほうが、さらに「突発性」を求める要素を入れてきたのだ。

 5月末、現地取材でMFイ・スンウ(ベローナ)の話題ぶりを目にした。バルセロナ下部組織で育ち、'16年にバルサBでプロデビュー。トップチームには昇格出来ず、今季からイタリアのベローナに移った。36節のACミラン戦でのゴールがシン監督の目に留まったか、代表キャップ0のまま5月14日の28人リストに加わり、そのまま最終エントリーまで残ったのだ。

 6月1日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では80分に投入されるまでに1−3とリードを許した。スタンドからは「イ・スンウを出せ〜」というファンからの痛烈な叫びが幾度も聞かれた。

 その試合後には、韓国メディアからこんな質問が飛んだ。
 
「やはりワールドカップでは、末っ子世代の活躍が欠かせませんね」

 本人ははにかみながら「先輩たちに学びます」と通り一遍の返事を返すのが精一杯だったが、話題性も十分。日本からの取材者にとっては複雑な思いにさせられる事象だった。

 日本の今回の最終エントリーは韓国との比較でいうと「突発型」と「安定型」がブレた、恐ろしいものでもあった。決して雰囲気だけの話ではなく、'02年大会以降の歴史から言っても「突発事項」を入れるべきだった。つまりサプライズ選出。でなくとも直前の欧州遠征で実績を残した生きのいい選手が欲しかった。

今大会は「挑戦」というより「実験」!?

 とはいえこの今、過去を振り返り嘆くことに意味はない。前回ブラジル大会でいなかったメンバーに「突発性」を期待するしかない。20歳前後の“刺激”、つまり若い選手を選ばなかった、という覚悟をもとに進むよりほかないのだ。

東口順昭(ガンバ大阪/32歳)、中村航輔(柏レイソル/23歳)、槙野智章(浦和レッズ/31歳)、植田直通(鹿島アントラーズ/23歳)、昌子源(同/25歳)、遠藤航(浦和レッズ/25歳)、原口元気(デュッセルドルフ/27歳)、宇佐美貴史(同/26歳)、大島僚太(川崎フロンターレ/25歳)、柴崎岳(ヘタフェ/26歳)、乾貴士(ベティス/30歳)、武藤嘉紀(マインツ/25歳)。

 チームは「おじさんジャパン」「新鮮味がない」といわれるが、23人のうち約半数の12人いる平均年齢26.5歳の(全体よりも約1歳若い)“新人”たちだ。

 そのうち、ハリルホジッチの下で招集機会が少なかったのが、柴崎と武藤。さらに大島は重要な場面で負傷を負い、結果を残すことはできなかった。こういった面々が起こす「突発性」こそがチームの光だ。ベタな話でもあるが、日韓比較の観点からそう思う。

 日本のほうが揉めに揉め、'02年以降前例のない「韓国よりも不安定」という状況で迎える今大会。

「突発性」

 日本もこの扱いをより深く知る大会になる。もはやこういった点で大会を観るよりほかない。これまで「安定型」で戦ってきたなか、今回は極端に「突発性」を考えるべき機会となった。挑戦、というより実験だ。

 本当に叩かれるべきは、仮に敗れ、それが上記のメンバー以外の起用に固執する「安定型」によるものだった時だ。たとえ敗れたとしても「こういう実験をしたが、ダメだった」という蓄積がなされなかった時、「いったい何だったんだ」ということになる。

文=吉崎エイジーニョ

photograph by Getty Images

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