本田圭佑はW杯で先発すべきか。本人に聞いた“ズレ”と守備強度。

本田圭佑はW杯で先発すべきか。本人に聞いた“ズレ”と守備強度。

 思わず、耳を疑ってしまった一言である。

「圭佑は、かなり手応えというか、良かったんじゃないですかね」

 現地時間8日に、スイス・ルガーノで行われた強化試合、スイス戦。0−2で日本が敗れた試合後の、西野朗監督の言葉である。

 4-2-3-1のトップ下には、本田圭佑が入った。代表では4年前のブラジルW杯以来の、本職のポジションである。

 率直に言って、本田のプレーは攻守ともに高い評価は与えられないものだった。何かをしようとしていた、その意図や意識はこちらに伝わる動きだった。しかし、出来、精度、そして結果と、どれも到底満足できるプレーではなかった。

直近2試合で見せた低調な出来。

 W杯本番まで、時間がない。あえて、いやここではっきりさせなければならないことがある。

 日本が勝つ確率を少しでも上げるために、ここで本田は先発から外すべきなのではないか。

 なぜ、西野監督は本田をスターティングメンバーで使い続けているのか。先月30日のガーナ戦、そしてスイス戦と、西野体制になっての2試合で背番号4は先発出場している。

 本番まで猶予がない一方で、新体制になって数えるほどしか試合ができないままW杯に突入しなければならない現実もある。だからこそ指揮官は組織の練度を高めたい思いと、選手を起用しては見極める考えの両方で揺れ動きながらチーム作りを進めなければならない。

 その上で、直近2試合で本田を先発テストしたことは十分理解できる。

 ただ、そこで本人が見せたのは、低調な出来だった。

 西野監督は冒頭のコメントに続いて、本田についてこんなことも述べている。

「予想以上に動きも取れていたし、守備に入る意識、連動する意欲もあった」

ボール奪取など守備強度が高まらない。

 日本はスイス戦で、慣れ親しんだ4バックシステムに回帰。前線から相手にプレッシャーをかけながら、全体もコンパクトな陣形を維持する狙いを持ってスタートした。

 スイスは途中、ボランチの1人を最終ラインに落とし、両サイドバックを高めに設定して攻撃のビルドアップを展開した。日本は最前線の大迫勇也と本田が、敵の巧みなパスのつなぎに翻弄されてボールを追い続ける場面が続いてしまった。

 西野監督は、ガーナ戦で試した3-4-2-1でも、低く構えて5バック気味に守る手法ではなく、あくまで前線から敵を捕まえに行く積極的なディフェンスを目指した。ガーナ戦の本田は宇佐美貴史とともに、2枚のシャドーストライカーの位置で出場したが、この時もボールに対する寄せは甘く、高いレベルで戦術を遂行できなかった。

 そしてスイス戦。布陣が変わった中でも、本田と宇佐美は守備強度に課題を残した。

 大迫が左の腰を痛めて前半終了間際に退き、武藤嘉紀が替わって入った。さらに後半早々には左サイドハーフの宇佐美に替わって乾貴士もピッチに登場した。右サイドハーフで先発した原口元気とともに、彼らは普段ドイツやスペインで見せている高い守備意識を披露する。なかなかスイスの柔軟なボール回しを食い止めることは難しかったが、敵に寄せていくスピード、相手にかける圧力の強度は、ボール奪取の可能性を感じさせた。

 掲げたゲームプランと、人選。高い位置で封じる守備を前提にしながら、本田と宇佐美を先発で起用している時点で、西野監督の采配には齟齬が存在している。

今求められるのは効率的な戦い方。

 確かに、本田の守備意識自体は低くはなかった。それは西野監督の言葉からもわかるし、相手に寄せる意識、ボールを追う姿勢は彼も見せている。ただ、決定的に欠けているのが、ボール奪取するためのスピードや強さ。動きが重く、せっかくの意識も空回り状態である。

 陣形をコンパクトにし、組織的に、とにかく選手が連動しながら守備をする。西野監督のチーム作りの方向性は間違っていない。日本人が世界で戦う上で、欠かせないコンセプトである。

 近年の国際大会で、その狙いを体現していたのが2012年のロンドン五輪代表だった。大会直前になっても一向に定まらなかった攻守のバランスを、直前になって攻撃陣の献身的なプレッシングとタイトな陣形を軸に据えた。堅守速攻のシンプルな戦い方でベスト4まで勝ち登った。

 今回もチーム作りに時間はない。細かな連係を積み上げていくことが理想だが、悠長なことを言っていられない。いま、西野ジャパンに真っ先に求められるものは、シンプルかつ効率的な戦い方の形成しかない。

香川が語ったプレッシング意識。

 日本の攻撃陣には、前述の通り守備の強度を高められる選手たちがいる。彼らを生かし、組織的なカウンターをベースに攻撃を展開していく。何度も言うように、残り10日でできることは少ない。やれることは、限られている。

 例えば、スイス戦の大半の時間をベンチで過ごした香川真司である。普段、ドルトムントでは世界トップレベルの強度を誇るプレッシングを繰り返している。彼はスイス戦のプレーをこう見ていた。

「もう少し僕や圭佑くんが入るトップ下だったり、両サイドが高い位置を取れるなら取っていかないといけない。そこで相手にもっとプレッシャーを与えないと。相手が嫌がるようなプレスをもっと僕たちはかけていかないといけないし、そのスイッチは(12日のパラグアイ戦で出場予定の)僕とか岡ちゃん(岡崎慎司)がかけていきたい。そこはもっと、どんどん汗をかいてやらないといけない」

“ボールを受けてから”にミスが。

 過去の取材で本田は、トップ下に入る自身の特徴をこう話していた。

「みんな、トップ下に入った俺をキープ力があるだとか、キックの精度があるだとか言う。でも本当の自分のトップ下の能力は、空間察知力にあると思う。つまり、相手ボランチの背後のスペースをうまく突くとか、相手DF間のギャップを突くところ。そこでの駆け引きは、俺はできる選手だと思う」

 スイス戦、久しぶりにトップ下に入った本田は、目立たないプレーだったが、確かに小さなスペースを探し出して、味方から縦パスを引き出していた。相手選手の間をうまく取るセンスは、あらためて類まれなものを感じた。

 しかし、ボールを受けてからのプレー精度は高くはなかった。トラップミス、ドリブルミス、パスミス。細かいミスが見て取れた。さらにフィジカルの強さを生かしたキープ力も、かつてより陰りがある。簡単に敵に潰されていては、その後のパスやシュート、連係プレーすべてに説得力を欠いてしまう。それこそが彼の生命線だったはずだ。

 本田はスイス戦後、攻撃面の課題として「3人目の動きをもっと増やすこと」や「サイドでも簡単にクロスを上げずに、そこから崩すこと」など、連係に深みが必要な方法を掲げた。

大迫、武藤、乾が描く攻撃の絵は……。

 一方、1トップに入った大迫の意見はこうだ。

「サイドにボールが入った時に、もっとセンタリングを上げてもいいと思う。そこでボールをこねていたところがあったので、そこは(周りの選手に)伝えました。あとはサイドチェンジした時に速く攻めるスイッチを入れることも意識したい」

 大迫に替わって登場した武藤はこう語る。

「もう少しアーリークロスを増やしてもいいかなと。そうするとゴール前で何かが起きる。早い段階で速い弾道のクロスを入れたり、あとはドリブルで縦に抜けきるだけでなく、相手の股を抜いてクロスを入れるとか」

 左サイドラインに張り出してプレーすることが多かった乾も、チームの攻撃をこう見ていた。

「みんな、狭いエリアを崩す攻撃に固執しすぎている。そのへんは練習から言っていかないといけない。逆サイドに振ってもらえればフリーのシーンはいっぱいあった。そういう場面が増えればいい」

 どれも、本田のコメントに呼応した回答ではない。ただ結果として、本田とその他の選手が描く攻撃の絵が、違っているのである。

「俺は選手から直接聞いているので」

 では、当の本田はこの現状をどう考えているのか。果たして、周囲との差異を自覚しているのか。スイス戦翌日、本人に直接話を聞いた。

――率直に聞きたい。マイボールになった時はもっと3人目の動きや連係とか、サイドでの崩しをもっと深めたいと話していた。一方で、そのトライはかなり時間を要するもので、あと10日間でどこまでできるかという疑問点が1つ。あと、他の選手たちからは「早くサイドからボールがほしい」とか、「アーリー気味でも良い」という声がある。正直、本田くんの言っていることと周りの絵がズレているところがある。

「いや、その情報はメディアから聞いている以上に、俺は選手から直接聞いているので。それをどう詰めるかという作業は場面によると思います。だから、早く(ボールが)ほしいという議論は、もちろん中にいる選手で、例えば岡崎みたいな選手がいれば、それは常に彼なんかは僕と10年間ぐらい代表で話しているけど、その議論で一切折り合うことがないまま。岡崎はボールをもらいたいわけですよ。でもそんなもんだし、FWは。

 そういうFWが一発を狙ってという動きをしているから、例えばこの間、僕が長友(佑都)から横パスが来てシュートに持っていけなかったシーンも、あれも(岡崎みたいな)そういう選手がいるから僕ももらえたりもする。全員が同じようなスタイルで足元、足元のプレーになっていたら、僕があそこでもらうこともできない。そこのタイプとの融合だと思っているので。3人目を生かした攻撃は今に始まったわけではない。みんなやり方はわかっている。それをハイレベルの中で点を取るために、緊張感がある中でやらないといけないということ」

「自信を過信に変えていくぐらいに」

――その狙いは理解できるんだけど、あと10日でできるかどうかという肌感覚は?

「肌感覚でいうと、できると思っています。全部が全部できるわけではないですけど、まだまだこの10日間で精神的な準備、コミュニケーションを取ること、実際にピッチでの練習、パラグアイ戦もある。まだまだ良くなると思います。でもそれで良いと思っています。というのも、練習試合では計り知れない本番の緊張感があるので。僕の経験上、僕らが緊張感を持ってディフェンスでバタバタするのと一緒で、相手も結構バタバタするので。そういう意味ではコロンビアやポーランドやセネガルが落ち着いてやれるとも思わないし。

 僕らも得点のチャンスはしっかり作っていけると思う。でも最後は、ボールを蹴る奴がゴールの枠の中に入れないと、やっぱり試合は勝てない。それはリラックスして自信を持ってシュートを打つ奴が本番に向けて、ここからは自信を過信に変えていくぐらいのフェーズだと思っているので。議論して、ネガティブなことも話しましたし、いろんなことをたくさん話してきましたけど、短期間の中で。ここからのフェーズは徐々にシビアな会話と、自信の融合がものすごく重要かなと思います」

交代カードとして出るイメージはある?

 3人目の連係など細かなコンビネーションを、残り10日間で詰められると話した本田。自信を過信にという発言は、追い込まれた選手にとっては必要な精神性かもしれない。ただし、その言葉だけを担保にしてロシアW杯を戦うのは、博打でしかない。

 さらに本田に聞いた。

――本田くんはW杯のグループリーグ3戦を勝ち抜く上で、本番では自分が交代カードとして出ていくイメージは持っている?

「もちろんそういうのも可能性としてはあるし。それに対応もできないと、ホントちょっとしたところで勝敗を分けるので。イメージはしていますね」

――本田くんよりも機動力のある選手が先発から出て、前からの守備でハメていく。そして後半から出てくると。

「もちろん僕がメンバーを決めるのではないので。ただ、選択肢としてはそういう戦い方もあるだろうなというのは、間違いなくメンバーを見ていても思うので。堅守速攻というか、前半と後半で90分間でのプラン。相手によってはそれを変えていってもいいと思う。

 でも3試合あるので、全部同じメンツは無理なので。前回も前々回も交代したメンバーががんばっていることもあるし。まあ、負けていると常にこういうネガティブな議論がどうしても先行してしまうけど、それを1試合でひっくり返せる可能性は(W杯初戦の)19日がすべてだと思っているので」

長友が本田に要求していたこと。

 筆者はこれまで何度も本田を取材してきた。彼がいつ何時でも、ポジティブシンキングを忘れない選手、そして人間であることは百も承知だ。この日も、その後は「脳の中にポジティブなワードを入れていく」とか、「今はチームのことを考えている。でもエゴも必要。チームのバランスのことを考えているけど、バランスを崩した時にサッカーはうまくいく時もある」など、前向きで、“自分”を強く押し出す発言を残していった。

 本田の選手人生、本田圭佑という人間の生き方、ブランディングは、有言実行あるのみである。失敗も数多くしてきた。それを彼は財産とし、糧とする。その度に、熱のある言葉を何度も耳にしてきた。

 目に見える結果、プレーで言えば、今の本田は代表選手としてまったく物足りない。そしてそれを率直にぶつけると、彼は現状を認めつつも、当然反骨心を露わにした。すべて想定内である。

 あとは、彼が自分で語った言葉を実践していくか。それとも、屈するか。ロシアの地で、結果は明らかになる。

 最後に、本番を前に誰よりも危機感を声高にする長友が、こんなことを話していた。

「圭佑なんかもまだまだ走んなきゃいけないし、もっとミスを減らしてくれないとチームは勝てない。彼にパフォーマンスを上げてもらなわいと、このチームは勝てない。僕らベテランが出ている意味もなくなる」

 プライドも大事だ。ただ、今は尻に火がついていると思ってもらっていい。いや、思うべきだ。

 本田圭佑。

 ネームバリューや経験、看板による先発起用など必要ない。今は彼の好きな逆境である。日本の結果につなげ、そこで彼の存在を誇示する。そのためには汗をかき、結果を出すのみである。

文=西川結城

photograph by Takuya Sugiyama

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