団体戦大会QUINTETが呼び込む“異能”と“個”を超えるチーム力。

団体戦大会QUINTETが呼び込む“異能”と“個”を超えるチーム力。

 格闘技の試合、その面白さはシチュエーションしだいで変わる。

 ある日本人選手が僅差で判定勝ちしたとして、普段なら「やっぱりKOしないと」という不満が聞かれるとしても、それがUFCのタイトルマッチならどうか。僅差の判定だろうが膠着シーンが多かろうが、我々は歴史的快挙に歓喜するに違いない。

 桜庭和志のプロデュースで4月にスタートした新イベント「QUINTET(クインテット)」はグラップリングの団体戦、抜き試合トーナメント。そのためシチュエーションが目まぐるしく変化する。

 その時のマッチアップやチームの星取り状況しだいで「引き分ければOK」の場面も「是が非でも一本」の場面も出てくるのだ。相手のエースと闘うなら、守りきることも「仕事=チームへの貢献」になる。

引き分けの連続でも見応えあり!

 6月9日、ディファ有明で開催された2度目の大会『QUINTET FIGHT NIGHT』はチーム5人の総体重規定を360kgに設定した軽量級トーナメントだ。

 1回戦の1つは所英男率いるTEAM TOKORO PLUS αとTEAM CARPE DIEM(カルペディエム)。

 プロの人気選手を集めた所チームと、強豪柔術道場からの選抜チームが対戦するという「プロのグラップリング・イベント」らしい顔合わせだ。結果は先鋒戦から大将戦まですべて時間切れ引き分けで、カルペディエムが大将戦後の旗判定で勝利。その記録だけを見れば退屈そうだが、実際にはそんなことはなかった。

 所英男、伊藤盛一郎の“魅せる”試合ぶりはここでも健在だったし、足関節技の使い手として世界的に知られる今成正和の試合は「いつ決まってもおかしくない」という緊張感たっぷり。プロ格闘技主体に観戦しているファンは、彼らと一歩も引かず渡り合うカルペディエム勢の実力に驚いたはずだ。逆に柔術に詳しい者は「カルペの面々に取られない所たちってやっぱり凄いんだな」と感じたかもしれない。

48歳の矢野卓見が見せた、驚異の粘り。

 大将戦、所チームから登場したのは48歳の矢野卓見だった。

 大将戦開始時点で所チームは「指導」ポイント1つ分のリード。矢野が岩崎正寛を相手に、ポイント差をキープして終わればチームの勝利が決まるというシチュエーションだ。

「さすがに矢野が勝つのは難しいかもしれない。でも守り切ることならできるかも」

 そんな予感で、超満員札止めの場内は沸き返った。後半は完全に劣勢、矢野は最終的に指導ポイントで並ばれてチームも敗退したのだが、粘りに粘る姿は印象深かった。

 攻防だけを切り取ってみれば「スタミナ切れでグダグダのドロー」、「岩崎も取り切れなかった」となるのだが、シチュエーションがこの試合を好勝負にしたのだ。

想像力を刺激する“U系”チームも。

 所と伊藤は現在の練習パートナー。所、今成、小谷直之、矢野は「ZST4兄弟」と呼ばれ、所がブレイクする前からの盟友だ。

 QUINTETで自身のチームを編成することになり、所が真っ先に思い付いたのが「ZST4兄弟」リユニオンだという。

「自分が取らなきゃいけない試合でしたね。申し訳ないです。でも、このメンバーで闘えたことには大満足です」

 試合後の所は言っている。

 かつて独自のテクニック、試合スタイルから“東洋の神秘”とも呼ばれた矢野。そんな“異能”が48歳にして脚光を浴びるのもQUINTETの魅力だろう。

 もう1つの1回戦でTEAM HALEOに敗れたTEAM U-ZUKIDOは、リーダーの中村大介に加え佐藤光留という“異能”も擁していた。

 チーム名は、田村潔司のもとで育った中村の道場「夕月堂本舗」から。「夕月=U好き」であり、このチームはプロレスリング、UWF、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンをルーツとする選手の集団だ。佐藤はパンクラスMISSION所属にして元DDT王者、現在の主戦場は全日本プロレス、そしてキャッチフレーズは“変態”である。

中村が見せた腕十字はさすがの切れ味!

 佐藤は先鋒戦で徳留一樹に秒殺され、チーム全体もHALEOの中堅までで“全滅”させられた。

 ただ中村が1試合目で見せた腕十字はさすがと言いたくなる切れ味。U-ZUKIDOのように「トータルな実力は分からないけど一発ハマれば」と思えるチームもQUINTETでは“アリ”だろう。

「U系チームが出るならこんなチームもいけるはず」とファンの想像力を刺激してくれるのもいい。

チーム勝利の気分は「甲子園優勝」。

 抜き試合だから1人の負けを他の選手がカバーでき、シチュエーションしだいで試合のテーマが変わる。そこに“異能”が存在感を発揮するスペースが生まれやすいのかもしれない。団体戦でも“個”が光る可能性があるわけだ。

 そしてその“個”を“チーム力”で上回ることができるのも団体戦。

 カルペディエムは決勝でHALEOをチーム全体の指導ポイント差で下している。HALEOの絶対的ポイントゲッター、世界トップクラスの柔術家であるホベルト・サトシ・ソウザを引き分けで“潰した”岩崎は「今回、僕の役目は“最強の盾”だったので」と語った。さらにチームの優勝について「甲子園で優勝したら、こんな気持ちになるのかなと」。

 1回戦、決勝トータルで4試合して3勝1分、圧倒的な実力を見せたサトシは、それでも「もっと強くなりたい」と語った。いつもの個人戦とは、気持ちが「全然違う」と。

「いつもは私だけの勝ち、私だけの負け。でもQUINTETは私が負けるとチームが悲しむから。本当に最後の最後まで攻めました」

 団体戦ならではのシチュエーションだけでなく、団体戦ならではの感情というものも、またあるのだ。

文=橋本宗洋

photograph by Norihiro Hashimoto


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