W杯直前に間に合った価値ある勝利。本番でも香川、岡崎、乾を揃えては?

W杯直前に間に合った価値ある勝利。本番でも香川、岡崎、乾を揃えては?

 さて、どうなるだろうか。

 ロシアW杯前最後のテストマッチで、日本代表が価値ある一歩を踏み出した。6月12日に行われたパラグアイ戦で、4−2の勝利をつかんだのである。

 W杯に出場しないパラグアイとこのタイミングで対戦したのは、グループリーグ初戦で激突するコロンビアを想定したものであり、結果も求めたいからだった。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督のもとで決まっていたマッチメイクだが、勝って勢いをつけたいのは西野朗監督になっても変わらない。

 監督交代後はガーナ、スイスに連敗していただけに、この試合が持つ意味はむしろ大きくなっていた。

 今月ヨーロッパ入りしてすぐに、西野監督はスイス戦とパラグアイ戦で23人全員をピッチに立たせると明言した。

 就任からわずか3試合でW杯に挑むことを考えれば、固定したメンバーで戦ったほうがチームは成熟していくはずである。ましてやスイス戦が内容的にも物足りない敗戦に終わったのだから、方針を転換しても批判を受けることはなかっただろう。

 しかし、63歳の指揮官はチーム作りのプランを崩さなかった。このタイミングでバックアップメンバーを起用しておくことで、23人のゲーム勘やゲーム体力をできるだけ近づけたいとの狙いがあったからだった。

前線で披露された見事な連係。

 果たして、西野監督指揮下で初めてスタメンに名を連ねた選手が前半からアピールする。とりわけ目を引いたのが前線だ。

 4-2-3-1のシステムで1トップに入った岡崎慎司、トップ下で起用された香川真司は、ディフェンスの局面で横並びの関係を作り、前線からのチェイシングで相手の攻撃に規制を加えていった。2列目左サイドの乾貴士と右サイドの武藤嘉紀も、彼ら2人に連動していく。

 前線から規制を加えていければ、ダブルボランチの山口蛍と柴崎岳もポジショニングに迷うことはない。最終ラインも押し上げることができる。全体がコンパクトな陣形を保つことで、守備からリズムを作ることができていった。

ピッチ幅を使っての理想的な得点。

 それでも32分に先制され、直後の決定機を乾が逃し、柴崎の直接FKはバーを叩く。リズムに乗りきれないまま前半を終えたが、過去2試合と違ったのはここからだ。

 51分、香川のワンタッチパスを受けた乾が、左サイドからドリブルで持ち込みながらコースを狙った右足シュートを決める。西野監督就任後の初ゴールだ。

 63分には敵陣右サイドでボールを奪い、同サイドのタッチライン際から武藤がクロスを入れ、香川がスルーするように残したボールを乾が右足で冷静に流し込む。

 タテに急ぎ過ぎることなく、それでいて無駄なパスを挟まずに前線へボールを運び、ピッチの幅も使って相手の守備を揺さぶったこの追加点は、西野監督にとってひとつの理想形と言えるものだっただろう。

システムが変わっても、前線は機能。

 2−1とした直後に武藤から大迫へスイッチし、システムは4-4-2に変更される。ただ、2列目の右サイドへポジションを移した香川は、タッチライン際にとどまらずに中央へも動き、大迫との2トップになった岡崎が右サイドへ流れる場面が見られた。

 ボランチの柴崎がリスク管理を働かせ、香川がいなくなった2列目の右サイドに目配せをしつつ、後半から出場した右サイドバックの酒井宏樹が高い位置を取る、といった流動性も披露している。

 岡崎が退いて原口元気が登場した残り15分強の時間は、4-2-3-1へシステムを戻した。前線からのチェイスは、大迫と香川になっても変わることはない。相手の守備にどうやって規制をかけていくのかについて、チーム全体で理解を深めてきたからだろう。

 後半終了直前には、香川にゴールが生まれた。後半だけでも2度の決定機を逃していた背番号10が、ダメ押しの4点目を決めたのはこの試合の締めくくりにふさわしい。守備だけでなくチャンスメイクも冴えわたった彼のゴールは、自身の自信回復につながったはずである。

W杯では空中戦が強い相手がいる。

 気になったこともある。3−1の時間帯に与えた失点だ。

 ペナルティエリア外から決められたミドルシュートは、自陣左サイドの直接FKをきっかけとする。反則をしてでも止めなければならないシーンではなく、むしろリードしている勢いや気の緩みによる雑なファウルだった。

 W杯のグループリーグで対戦する3カ国は、リスタートのキッカーと空中戦に強い選手を揃える。同じ種類のミスは、絶対に避けなければならない。

 ロシアには行かないパラグアイが、高いモチベーションで戦ったとは考えにくい。追いつかれたあとやリードを許したあとの反発力の弱さは、この試合が彼らにとって大きな意味を持つものではないことを示唆していた。勝っても得るものはさほどなく、負けたところで失うものもない一戦だったのだ。

香川、岡崎、乾は状態も連係も向上。

 とはいえ、日本にとっては意味のある勝利だ。

 コンディションが不安視されてきた香川、岡崎、乾は、W杯に合わせて仕上げてきた。

 一人ひとりの仕上がりの良さだけでなく、攻守において息の合ったプレーを見せた3人を、揃って起用しても面白いのではないか。

 左サイドバックの酒井高徳も、タイミングのよい攻撃への関わりで存在感を示した。センターバックの一角でフル出場した植田直通も、人への強さを改めてアピールした。

 ここまでの3試合から判断すると、西野監督は4-2-3-1を戦略の核に据えていると考えられる。そして、候補者は出揃った。

 トップ下は香川か、本田圭佑か。1トップは大迫か、岡崎か。2列目の左サイドは乾か、宇佐美貴史か。ポジションごとの序列がはっきりしないことは、必ずしもネガティブではなくなっている。

 さて、西野監督はどのような判断を下すのか。

 19日のコロンビア戦に向けた期待値が、ついに、高まってきた。

文=戸塚啓

photograph by Getty Images

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索