西武・金子侑司はきっかけを探す。「打つ自分をイメージできなかった」

西武・金子侑司はきっかけを探す。「打つ自分をイメージできなかった」

「今年はもうお立ち台に立てないんじゃないかと思っていましたよ」

 試合後、記者に囲まれた金子侑司は安堵したような笑顔で言った。6月3日の阪神タイガース戦で2安打2打点と活躍し、ヒーローインタビューを受けたあとのことである。

 一昨年のパ・リーグ盗塁王。昨年は左足の故障で出遅れたものの、5月以降はレギュラーとしてシーズン90試合に出場した金子だったが、今年は開幕から極度の不振に陥った。

 金子は振り返る。

「とにかく、ヒットを打つ自分を全然イメージできないくらいダメでしたね。開幕直後にあれだけ打てなかったのはプロに入って初めてだったので、焦りました。4月は試合に出ている選手、全員が打っていたので……」

 3月、4月と好調だったライオンズ打線には、ずらりと3割バッターが並んだ。そのオーダーのいちばん最後、金子の打率だけが1割台という異様な光景が続いた。ライオンズ打線が打ちまくり連勝を続ける中、1人だけ取り残されたような感覚を味わったのではないだろうか。

 誰とも目が合わないよう視線を足元に落としたまま、無言でロッカールームに消える日もあった。

右と左で打率には2割近い差が。

 特に昨年までと違うのが、スイッチヒッターである金子の左打席と右打席の打率の違いだ。昨シーズンまでは、わずかではあるが左打席の率のほうが高かった。しかし今シーズンは左打席が1割8分6厘であるのに対し右打席は3割4分8厘と、2割近い差がついている。

 左が118、右は23と打席数には大きな差があるものの、5月26日の北海道日本ハム戦で放った8回同点本塁打のように、勝負強さを発揮するのも右打席が多い。余計にその差が大きく見えてしまう要因になっている(数字はいずれも6月10日現在)。

「ここまで左で打てないというのは全く予測していませんでした。開幕するまでは特に左がうまくいかないとか、そんなことはなかったんですけど、急に何かが狂ってしまった感じです。

 同じスイッチヒッターの松井稼頭央さんが気にかけて、いろいろ話をしてくれたり、もちろんバッティングコーチや辻監督も気にかけてくださって『ここをもっとこうしたら』という具体的な指導もしていただくんですけど、なかなか状態が上がってきませんでした。コーチも僕のことを考えてくださって押し付けはしないので、こればかりは自分で考えて乗り越えないとだめだと思っています。自分でなんとかしないと、この世界は誰も助けてくれませんから」

 左打席の状態については、まだ課題を克服中だと言う。

「何でもいいからきっかけが欲しい」

 それでも徐々に復調の兆しは見えている。5月26日に放った8回同点ホームランは、思い切り振り抜いた一打。迷いを断ち切りたいという金子の思いが詰まった一発に見えた。

「どこかで踏ん切りをつけなきゃいけないと思っていたし、あとは何でもいいからきっかけが欲しいとは思っていたんですけど。ただ、あの試合で、少しはヒットを打つ感覚を思い出せたかもしれません」

 本塁打を放ち、その直後に西武ファンの待つレフトの守備位置に走るときは「本当にうれしかった」と素直に感情を言葉にした。

「まだまだ復調したとか、そんな風に言える段階でも成績でもないです。今は一試合、一打席に集中して、自分のできること、やるべきことを考えてガムシャラに精いっぱいやるだけです。

 この成績でもずっと使ってもらっているので、何とかその恩を返していきたい。序盤、なかなか塁に出ることができなくて、でもその少ない機会の中でいくつか盗塁できた。それは周りの選手が助けてくれているからだと思いました。感謝しています。だからこそ、何とか、これから結果で返していきたいと思う」

俊足に不調なし、を地で行く。

 本人が振り返るように、打撃が奮わなくても、金子の俊足はチームの重要な戦力となっている。

 6月3日の阪神戦、ヒットで塁に出ると「けん制はほぼない」というチームの分析のもと、金子は大胆にリードを取った。結果、相手投手の動揺を誘い、けん制球が大きく逸れて進塁。貴重な得点につながった。

 2015年に守備・走塁コーチに就任して以来、佐藤友亮コーチはずっとこう語っている。

「走塁や盗塁、けん制でアウトになっても、きちんと理由があり首脳陣を納得させる説明ができるならアウトになったことで選手を責めません」

「走る場面には必ず理由と意図がある」

 佐藤コーチは今シーズンの金子の脚力を高く評価している。

「侑司(金子)に関しては、昨年は理由を聞いても頭が整理できていなくて、きちんと走った説明ができないこともありましたね。いろいろと考え過ぎて、考えが固まらないうちに走ってしまうことはありました。でも今年に関しては、走る場面には必ず理由があるし、意図がある。すべて納得できる走塁です」

「バッティングで貢献できないので、脚だけはなんとか貢献したい」とシーズン序盤、語っていた金子だが走塁の技術や戦術理解力などは年々、成長していると佐藤コーチは太鼓判を押す。

 金子は語る。

「打てないときは、何とか守備や走塁でがんばろうと思っています。そしてこれからも自分のやるべきことをやって、取り返したいですね」

 遅れを取り戻すべく、中盤戦に向けてスパートをかける。

文=市川忍

photograph by Kyodo News

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索