アンリが驚嘆するムバッペの素質。「とても19歳には見えない成熟だ」

アンリが驚嘆するムバッペの素質。「とても19歳には見えない成熟だ」

圧倒的なスピードで敵の守備を切り裂くプレースタイル、
若くしてフランス代表のエースと期待されるキャリア。
似た特徴を持つアンリとムバッペは、いつも比較される。
かつて世界の頂点に立った先輩は、後輩の姿をどう見るか。
W杯を前に、Number946号(2018年2月15日発売)の記事を全文掲載します!

 フランス代表は長い間、新しいティエリ・アンリを求めていた。2000年前後、ジネディーヌ・ジダンの時代にフランス代表の前線に君臨した絶対的エース。アンリはクラブレベルでもフランス代表でも一時代を築いた、フランスが世界に誇れるフォワードだった。

 しかしアンリが代表を退いてからというもの、フランス代表の前線に、彼の後を任せられるような選手は出てきていなかった。カリム・ベンゼマも、オリビエ・ジルーも、アンリの記憶が焼きついたフランス人には、どこか物足りなく映った。

 しかし近年、国民が期待を抱く若きアタッカーがようやく頭角を現してきた。

 アントワン・グリーズマンとキリアン・ムバッペ。

 国民が今夏のロシアで最も期待をかけるコンビだ。

EUROでの準優勝に「期待は持てる」。

 1998年、ジダンとアンリのいた夏に掲げたフランス代表最後のワールドカップ。20年を経て、彼らは母国を再び栄光に導けるのか――。

 2年前に行なわれたEUROでのフランス代表の躍進を、アンリは今も複雑な気持ちで思い出す。「何よりも運がなかった」とアンリは振り返る。

 自国開催での決勝で、フランスはポルトガルに延長戦の末に敗れた。

「ポジティブだったのは、未来に向けて希望は持てる大会だったということだ。特に攻撃面ではグリーズマンが貴重なゴールを決めてくれた。中でも大一番の準決勝ドイツ戦で決めた2点は、今も国民の記憶にしっかりと残っている。ロシアでも、チームの鍵を握るのはグリーズマンになるのは間違いないだろう」

 グリーズマンは、フランス代表では4-2-3-1のトップ下としてプレーすることが多い。役割としては、アンリの時代で言えばジダンのような10番的存在になる。もうひとり、アンリが点取り屋として期待するのがムバッペだ。

「落ち着いていて、知性を感じる」

「ムバッペはパリ・サンジェルマンというビッグクラブの中で活躍しているし、代表でも重要な選手になりつつある。このワールドカップで、2人がどれだけの活躍を見せることができるか。今のフランスが抱える最高のタレントが、世界の列強の前線と比べてどこまでやってくれるのかは、楽しみだね」

 1998年、アンリがワールドカップにデビューした時、彼は20歳だった。19歳でロシア大会を迎えるムバッペとほぼ同じ年齢だ。アンリはこの'98年大会以降、フランス代表で確固たる地位を築いていった。

「ムバッペはまだ19歳だ。これから続く長いキャリアを前にしている。ロシア・ワールドカップだけじゃなく、しばらくはフランス代表の攻撃を引っ張ってくれるだろう。彼には世界トップクラスのフォワードになれる素質があると思う。見ていて驚くのが、とても19歳には見えないところだ。経験豊富な、成熟した選手のように私には映る。いつだったか、テレビインタビューの受け答えをしているのを見たことがあった。落ち着いていて、豊かな知性を感じるやりとりだった。個人的にも彼のプレーを見るのは好きだ。信じられないくらいのポテンシャルを秘めているから」

スピードと跳躍力、そして闘争心。

 彼のフォワードとしての魅力を、アンリはどう見ているのだろう。

「最大の長所は、ボールを持った時とオフ・ザ・ボールの時のスピードだ。どんなディフェンダーも、1対1でムバッペに仕掛けられると対応に窮するはず。19歳だがフィジカル的にも完成されていて、かなりの跳躍力を持っている。ドリブルの使い分けを見ると賢い選択をしているし、恵まれたフィジカル能力だけじゃなく、頭もいいと私は見ている。デュエルの際に、怖がらずにぶつかっていく闘争心も気に入っているところだ」

 爆発的なスピードと跳躍力。中央でも、サイドでもプレーできるプレースタイル。褐色の肌も含め、アンリとの比較は避けられないだろう。事実、フランス国内にはムバッペとアンリを比較する見方も多い。

「私と比べられるがムバッペはムバッペ」

「確かに、よく昔の私と比べられる。でもムバッペはムバッペだ。プレッシャーも何も感じず、彼の道を歩んでほしい。きっと素晴らしいキャリアになると思う。また、2000年頃の私とダビド・トレゼゲのコンビを、ムバッペとグリーズマンに見る人もいる。ただ、あの頃とは時代が違う。単純に比較することはできない。私の時代は、試合が現在ほどスピーディじゃなかったからね。私やトレゼゲ、あるいはジダンと比べることはできない。ポジションとしては、確かに似ているけれどね」

 ムバッペと、サポートする役割が期待されるグリーズマンを見るとき、アンリは時代の変化を感じるという。

「グリーズマンは前線ならどのポジションでも対応できるし、9番としても、両サイドでもプレーできる。ただ、私だったらグリーズマンはトップ下で起用する。代表でジルーの後ろ、アトレティコ・マドリーでジエゴ・コスタの後方でプレーしてきたようにだ。ムバッペもいわゆる9番タイプではないし、近年は生粋のストライカーは減る一方だ。

 主要国の前線を見ても、昔ながらのストライカーは数えるほどしかいない。ハリー・ケインとジルーくらいだろうか。中盤にも下がれて、サイドに開いてスペースを作り、守備でも貢献できるタイプの選手が重宝される時代だ。ボールロストしたらできるだけ早く奪いかえすというのは、アタッカーにとって、もはや常識になっている」

アンリが期待する7カ国は?

 ロシア・ワールドカップについて、アンリが期待している国はフランスを含め、7カ国ある。

「ドイツ、スペイン、ブラジル、アルゼンチン、イングランド、そしてベルギーだ。今大会も、強豪国は前線に魅力的なアタッカーを並べている。ドイツのトーマス・ミュラー&ティモ・ベルナー。イングランドのケイン&ラヒーム・スターリング。スペインのジエゴ・コスタ&アルバロ・モラタ。ブラジルのネイマール&ガブリエル・ジェズスに、アルゼンチンのリオネル・メッシ&ゴンサロ・イグアイン。私はベルギー代表でコーチをしているが、エデン・アザール&ロメル・ルカク、それにケビン・デブライネの3人も強力だ。さて、どのコンビがワールドカップを持っていくのか」

コーチとしてベルギーを躍進させる!

 アンリがコーチを務めるベルギー代表の前評判は、近年非常に高い。しかし、これまでのところ確固とした結果につながっていないのが現状だ。

 ロシアでは立ちはだかってきた壁を破ることができるのだろうか。

「今のベルギーにはタレントが揃っている。デブライネにアザール、ルカク、ドリエス・メルテンス、バンサン・コンパニにマルアヌ・フェライニ。確かに過去の大会では準決勝、決勝に到達するにはまだ何かが足りなかった。私は、それは経験だと思う。しかし今ではもう多くの選手がビッグクラブでプレーし、経験も積んでいる。代表選手はチャンピオンズリーグの経験を持つ選手ばかりだ。ロシアでは、これまで到達できなかった場所に進めると確信している」

 フランスのムバッペとグリーズマンに相当する、攻撃の核を担うのはアザールとデブライネになる。

「ロシアでベルギーの命運を握るデュオだ。彼らには、何よりもワールドカップの頃にベストコンディションであるように努めてほしい。右のデブライネに左のアザール。ドリブルとテクニックでは、世界のどの攻撃陣にも引けを取らないクオリティを持っている。また、プレミアリーグでジョゼップ・グアルディオラとアントニオ・コンテの両監督に鍛えられたのか、2人とも戦術理解力が非常に高いんだ。ロシアで主役になる可能性は大いにある。ぜひ期待して見ていてほしいね」

文=豊福晋

photograph by Mutsu Kawamori


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