トランプ大統領の意に沿わない選手達。NFLで国歌演奏中の片膝は不敬なのか!?

トランプ大統領の意に沿わない選手達。NFLで国歌演奏中の片膝は不敬なのか!?

「フットボールチームのフィラデルフィア・イーグルスをホワイトハウスに招待したが、残念ながら少数の選手しか訪問しないので、今回のイベントを中止にすることにした。国歌演奏中にロッカールームに留まるのは、片膝をつくのと同じくらい不敬だ。ソーリー!」

 6月4日、ドナルド・トランプ大統領がブチ切れツイートをすると、トランプ支持者たちが一斉に選手たちをバッシング。それに対し、イーグルスの一部選手がSNSを使って反撃するなど、場外バトルが再燃している。

ホワイトハウス訪問は1865年が始まり?

 今回のトランプ氏のブチ切れツイートの後、ホワイトハウスの広報担当が「イーグルスによる政治活動だと認識している」とさらにチームを批判。

 賛成派、反対派の様々な意見が飛び交ったのだが、アメフトチームがホワイトハウスへの招待を受けないというだけで、大統領がこんなに感情的になるのはいかがなものだろう……そう思った人が多かった。

 参加の意志がある関係者や選手がいたのなら、少数であっても招待する――という選択肢があったにもかかわらず、結局このNFLの選手たちをホワイトハウスに招待するというイベントを「アメリカ国歌を流して、アメリカを祝う式(Celebration Of America)」と当てつけの式典に変更したことを大人げない、という人もいた。

 ちなみにアメリカではリーグ優勝したプロや大学チーム、五輪やパラリンピックの代表選手がホワイトハウスに招待されるのが習わしになっている。

 米国のスポーツ局ESPNによると1865年に当時の大統領、アンドリュー・ジョンソンがアマチュア野球チームを招待したことが起源と言われているが、政権や大統領との意見や考え方の相違がある場合などに訪問を欠席する選手はこれまでも存在した。

政治的な信念でホワイトハウス訪問拒否の選手も。

 保守グループ『ティーパーティ』のメンバーだったNHLのティム・トーマスはオバマ前大統領への不支持を表明し、ホワイトハウス訪問を拒否。

 またNFLのニューイングランド・ペイトリオッツのスター選手のトム・ブレイディはブッシュ大統領時代はチームメイトと訪問したが、2015年(オバマ政権)、2017年(トランプ政権)の時は「家族の都合」でホワイトハウス訪問を欠席。だがその当日、ショッピングをしている場面をファンに激写されている。

 現政権になってからの顕著な例としては、平昌五輪フィギュアスケートの米国代表で同性愛者であることを公表したアダム・リッポン、スキーのガス・ケンワーシーやリンジー・ボン、フィギュアスケートのネイサン・チェンなどは大会前に訪問を拒否し、4月27日に行われた式には参加していない。

 NBAのプレーオフに出場していたクリーブランド・キャバリアーズのレブロン・ジェームズは、大統領がイーグルス訪問を中止にしたことに関しては「驚きはない。いつもの彼らしい行動。プレーオフでどちらが勝っても、どちらのチームもホワイトハウスに行かないと思う」と発言。

 プレーオフを制したゴールデンステート・ウォリアーズのステフィン・カリーも「レブロンに同意する。去年から自分の考えは変わっていない。訪問するか決める選択肢、発言する権利は我々にあって、それはとてもパワフルなこと」と応じている。

国歌演奏中に片膝をつくのは不敬なのか?

 トランプ氏は「国歌演奏中にロッカールームに留まるのは、片膝をつくのと同じくらい不敬だ」と述べた。

 これは2016年8月にサンフランシスコ49ersのコリン・キャパニックが白人警官の非武装の黒人に対する銃撃行為や暴力などが相次いだことに抗議するため、試合前の国歌演奏中に片膝をついたことが事の始まりだ。

キャパニックを「あばずれの息子」と呼ぶ大統領。

 昨シーズンもキャパニックの意志を継いだ選手たちは国歌演奏中に片膝をついたり、腕を組んで人種差別に抗議し、試合前の大きな注目ポイントになっていた。

 そういった選手たちの行動に対しトランプ大統領は激怒。

 キャパニックを「あばずれの息子」と呼び、彼を真似て片膝をつく選手に対して「愛国心がない。国歌や国旗に対する不敬だ」と主張。

 そして選手やチームオーナーたちを攻撃し始めた。

「片膝をつく行為=愛国心がない」にはならない!?

 アメリカではスポーツの試合前に国歌の演奏と国旗掲揚が行われるのが習わしになっている。

 これはプロ以外の試合でも行われるが、その歴史は第一次世界大戦に遡る。戦争中に愛国心を高めるためにMLBのワールドシリーズで国歌演奏と国旗掲揚を行ったと言われている。

 リベラルな発想の持ち主は「片膝をつく行為=愛国心がない」と結びつけていないし、選手をサポートする人も多い。しかし戦争経験のある人や家族に軍の関係者がいる人は「不敬だ」と声をあげる。

 ちなみにトランプ氏はイーグルスの選手がホワイトハウス訪問を辞退したのを、NFLの新規則(後述)と結びつけているようだが、過去2シーズンで国歌演奏中に片膝をついたイーグルスの選手はいなかったという。 

片膝をついた場合はチームに罰金という新規則。

 世論やトランプ氏に対する「忖度」なのか、NFLは5月下旬に国歌演奏時に選手が起立しなかった場合、チームに罰金を科すという新規則を発表。起立したくない選手は国歌演奏が終わるまでロッカールームにいてもいいという条件もつけられている。

 試合よりも「片膝をつくか」に注目が集まることをオーナーやチームが嫌うのは当然だが、リーグとして規則にするのは少々過剰反応な気もする。また選手たちの抗議への問題の本質をすり替えていることも大いに気になる。

 そもそも国歌演奏中に片膝をついたのは「人種差別への抗議」のためだった。スポーツ選手は政治や社会問題に関わるべきではない、と思う人もいるかもしれないけれど、将来を担う子供たちの助けになりたい、注目を集める立場の自分たちが主張すべきだ、と考える選手が増えている。

 NFLのシーズン開幕まであと3カ月。

 今シーズンも抗議の意志を見せて片膝をつく選手がいるのか、違った形で差別への抗議をするのか、注目していきたい。

文=及川彩子

photograph by Getty Images

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