ドラフトに「飛び級」があったら。大学の下級生から候補を選ぶと……。

ドラフトに「飛び級」があったら。大学の下級生から候補を選ぶと……。

 これは、あくまでも私の“妄想”である。

 6月中旬、神宮球場と東京ドームを会場にして、恒例の「全日本大学野球選手権大会」が行われた。 決勝戦で国際武道大を破った東北福祉大が14年ぶりに栄冠を手にしたわけだが、この大会を見ながら考えたことがある。

 苫小牧駒澤大学のエース・伊藤大海投手の奮投ぶりと本格派投手としての素質のすばらしさはこのコラムでもお伝えした通りだが、その快投を目の当たりにしながら、ふとこんなことを考えてしまった。

「この2年生のピッチャー、あと2年間いったい何をするんだろう……?」

 背丈はプログラムに「175センチ」とあるから、今の野球界では小柄なほうだが、立ち上がりから150キロ前後の速球を連発して、思いっきり腕を叩きつけるような全力投球なのに、逆球や抜け球がほとんどない抜群の安定感。構えたミットに80%近くきめられるコントロールは立派にプロ級だ。

 130キロ前後のスライダーに、時折スッと抜いたタテのカーブがアクセントになって、フィニッシュの瞬間、即捕球姿勢をとれる隙のなさは、さすが「駒大苫小牧仕込み」か。打者に向かっていく気力、完投の翌日の連投にも疲れをおもてに見せない「エース」の矜持。

 ケチのつけようがない。

もし飛び級ドラフトがあったなら。

 すでにこれだけ出来上がっているならば、あと2年間の大学野球生活で、いったい何をプラスしていけばよいのか。

 失礼ながらリーグのレベルは、大学でもトップレベルではない。刺激の少ない環境で、残り2年半の時間がムダにならなければよいが……。

 もし卒業後にプロを目指すなら、伸び盛りの「旬」の今がむしろ最高のタイミングなのでは……。

 私の“妄想”は広がっていく。プロ野球に、もし「飛び級ドラフト」があったなら。

 学問との両立も必要だから、高校生はひとまず飛び級ドラフトの対象から外すとして、大学生は4年に達しなくても、それぞれの人生の目的と能力に応じて、早めに“社会”に躍り出ても、ぜんぜんおかしくないではないか。

 大学で達成しようと考えていたことが、たとえば半分の2年間で成し遂げられたのなら、むしろそこを“卒業”のタイミングにするほうが自然ではないのか。

では「飛び級」を制度化するとしたらどんな形?

 妄想が徐々に具体性を帯びてくる。

 無制限にしてしまうと、学生野球とプロの間にいさかいが起こるから、「飛び級」を行使できるのは、1回のドラフトでたとえば“3人”までとしようか。

 まず、選手側から「飛び級」を行使すると申し出る。

 時期はいつがいい? 秋のリーグ戦が始まってからではチーム内に混乱が起きるだろうから「春のリーグ戦終了後のどこか」としよう。

 親と指導者の「同意書」……そうだ、“大黒柱”が途中でチームから抜けるのだから、チームメイトたちの応援と祝福も必要だろう。主将名義の「同意書」こそ取っておかねばならない。

 それに対応して、プロ野球側は各球団のスカウト部門の責任者たちが議論して、手を上げた選手たちの中から、“適格者”の3人を選ぶ。

 選手が秋のリーグ戦に出場するか否かは、チームを含めた選手側の都合にまかせる。

 ドラフトでは、通常のドラフト対象の選手たちと同様の扱いで指名を受けることになるが、ここに何か選手にとっての“リスク”を埋め込んでおかねばならないだろう。手を上げた選手の「本気度」を担保するためだ。

 人より早くプロに進めるのだから、ある程度の“制約”は課しておかねばならない。たとえば、「指名された球団には入らねばならない(拒否権がない)」でもよいかもしれない。

学生の人生に介入するには本気度が必要。

 一方で、プロ側の本気度も担保しておかねば、バランスが悪い。

 ならば、飛び級適格者と認定した選手たちは、必ず「上位」で指名しなければならないとしよう。では、上位とは何位なのか?

 来年まで待てない、再来年など到底待てない! そこまで惚れ込んで学生の人生に介入してまで“飛び級”を使うのだから、本来なら「1位限定」でもよさそうなところだが、制度はあまりタイトに設定してしまうと長続きしない。ここは、「2位まで」ということでどうだろう。

 では、もし、2位までに指名されずに残ってしまったらどうしよう。その時、プロ側に科せられるペナルティーも設けておいた方がいいかもしれない。

 飛び級ドラフトの対象者3人がプロ側の“合意”によって人選されることにすると、特定の球団にペナルティーを科せないというのも、この「ペナルティー問題」を難しくしているようだ。何かよいお知恵があれば、ぜひお貸し願いたい。

選手が途中で抜ける大学にも補償が必要。

 “任期途中”で離脱する大学チームに対する配慮も必要だろう。決して、あと足で砂をかけるような離れ方があってはならない。

「契約金の何割かを、チームに寄付すること」を制度化したらどうだろう。

 すでに、通常のドラフトでプロに進む選手たちに適用している大学チームもあると聞くが、私はよい事だと思う。「心づけ」にするとアングラのお金になって、何かとグレーな噂が付きまとうが、制度化すれば「卒業税」であろう。

 チームの薫陶を受けて成長しプロ入りする選手が、お世話になったチームにお礼をするというのは悪くない。

 いずれにしても、いくばくかのお金を残していって、それを「奨学金目的」に使ってもらうなり、「設備充実」に役立ててもらうなり、“プラス”の費用にあててもらって、自分が早めにいなくなってしまう“マイナス”を補填してもらう。そんなような考え方だ。

 さて妄想ついでに、2018年のドラフトに『飛び級ドラフト』があったら、指名候補にあがる下級生の逸材はいったい誰なのか?

 実際に探してみなくては、この妄想は終わらない。

進路をプロ野球に絞っているならば。

 最初の1人は、苫小牧駒澤大学・伊藤大海(投手・2年・175cm80kg・右投左打・駒大苫小牧高)として、あとの2人はどうするか。

 伊藤大海の次というと、白鴎大学・大下誠一郎(内野手・3年・175cm90kg・右投右打・白鴎大足利高)の名前があがる。

 学生球界トップクラスのスラッガーである。近年、“絶滅危惧種”に近くなっている右打ちの長距離砲。狙ってホームランを打てる怖さもあれば、タイムリーがほしい場面でセンターから右方向へシュアにライナーのヒットが打てる高い“実戦力”も兼備して、西武の中村剛也、山川穂高の活躍でこのタイプの評価は高まっている。

 加えてチーム内での存在感も絶対的で、大下誠一郎は2年生の時からリーダー的な存在だったキャプテンシーも、プロ側が高く評価する理由になった。

 そして3人目。白鴎大学・中村伊吹投手(3年・180cm73kg・左投左打・星淋高)も実力は確かだが、白鴎大から2人というのはバランスを欠く。

 明治大学・森下暢仁(投手・3年・180cm75kg・右投右打・大分商業高)と迷ったが、創価大学・杉山晃基投手(3年・183cm88kg・右投左打・盛岡大付高)でどうだろう。

 今回の“妄想”は、ひとまずこのへんでひと区切りつけておきたいと思う。

 地下資源と同様、必ずしも豊かでない「人的資源」をより有効に活用するために、たとえば「飛び級ドラフト」のような制度が必要になる時期が、もしかしたら、もうすぐそこにやってきているのかもしれない。

文=安倍昌彦

photograph by Kyodo News


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