長期休場を乗り越え、復活を!宇良を支える師匠の「気遣い」。

長期休場を乗り越え、復活を!宇良を支える師匠の「気遣い」。

 8場所連続休場を決めた稀勢の里が、まさに剣ヶ峰の“突端”に立たされた。

 場所前の出稽古では、白鵬と胸を合わせるまでに至ってはいたものの、調整不足もあり、今場所も出場を回避。貴乃花の7場所連続休場を上回る“不名誉記録”を更新することとなってしまった。

 進退問題が注目されるが、これもまた来場所以降に持ち越される。場所後の夏巡業での稽古で相撲勘を取り戻し、9月秋場所での復活が切望される32歳の「日下開山」。その剣ヶ峰からは、どんな景色が見えるのだろうか。

長期休場は「徹底的に治させる」方針ゆえ。

 また、元大関の照ノ富士は、6月に両脚の手術をし、この名古屋場所は休場中だ。

 昨年11月の九州場所で関脇に陥落した照ノ富士だったが、膝の故障や糖尿病に苦しみ、十両の地位で土俵に上がった先の5月夏場所では、0勝9敗6休。今場所は幕下まで番付を落としている。

 優勝経験のある大関が幕下まで降下するのは異例のことだが、現在26歳の元大関は現役続行を表明している。

 同じ一門で先輩大関でもあった元魁皇、浅香山親方は言う。

「2年前の巡業で、途中休場して東京に戻ると聞いた時、『早いうちに、ちゃんと治せよ』と話したんだけどね……。う〜ん、ちょっと遅いよなぁ。引退を最終的に決めるのは本人だけど、まだ相撲を取りたい、やりきってない、まだイケる――という思いもあるんでしょう。今、力士寿命が延びているし、30歳過ぎてから力が出る例も多いからね」

 一時はケガで幕下まで番付を落とすも、30歳で大関に昇進した栃ノ心をはじめ、現在、幕内の土俵で活躍する妙義龍や竜電など、ケガから復活した例も多々ある。いずれも「徹底的に治させる」という師匠の方針もあり、長期休場による番付降下を覚悟して“雌伏の時”を堪え忍んだ結果だ。

 一時的に番付を落としても、焦ることなく心を折らず、ケガさえ治れば元の地位――否、それ以上を狙えるという好例でもある。

 それは、ケガに苦しむ後輩力士たちにとって、「光明」をもたらしている。

気になる……長期休場する人気力士の動向。

 そこで思い起こされるのが、アクロバティックな相撲で土俵を沸かせていた異能力士の宇良だ。

 昨年11月に右膝の靱帯を手術。今年初場所から4場所連続休場し、今場所は三段目三〇枚目まで番付を落とした。全休ゆえ、さらに番付を降下させることになる。

 長期休場する人気力士の動向は、誰もが気になるところだ。そんななか、先の5月場所後のこと。弟弟子である美ノ海の新十両昇進会見を、まるで自分のことのように喜ぶ宇良の姿があった。

 一回り体が大きくなり、明るい笑顔を携えていた宇良だったが、師匠の木瀬親方(元前頭 肥後ノ海)は、「まだ相撲は取らせてない。すべて本人に任せているし、師匠としては、ただ美味い物を食べさせるだけですよ(笑)」

 師弟共に、悲壮感は感じさせなかったものだった。

志摩ノ海は休場明け優勝し、関取に昇進も。

 37人もの力士が所属する大所帯の木瀬部屋で、ケガと闘う兄弟子、弟弟子たちの姿を宇良は間近にしている。

 たとえば、現在十両の土俵に上がる、兄弟子にあたる志摩ノ海。

 彼もまた、幕下四枚目の場所で膝を負傷し、5場所連続全休の経験があるが、休場明けの場所で序ノ口優勝を決めて復活。以来2年で関取に昇進している。

 元小結の常幸龍も、同じく連続休場の時を耐えた。今は幕下上位で足踏みするも、虎視眈々と復活を狙っている29歳の苦労人だ。

休場力士に対しての師匠の気遣い。

 木瀬部屋のマネージャーである間嶋智仁氏は言う。

「休場中は、やはり凹むし、不安になってマイナスな感情が出ますよね。

 そこでうちの師匠は、『そんな時こそ英気を養え』と。とにかく『食え! 食え!』といろいろ力士好みの食い物を買って来てくれるんですよ。休場中の1週間で10キロ太った力士もいるほどです」

 休場力士に対しての師匠の気遣いは、他にもあった。

 日々、同僚力士たちの稽古を目のあたりにし、焦燥感は募るもの。力士の本分である稽古ができずに「肩身の狭さ」を感じ、外出ができずに時間を持て余すことからも、電話番などの雑用を引き受け――また、頼られてしまう傾向にあるのだという。

「だから、うちの師匠は実家に帰してくれるんです。『実家の近くにトレーニングジムや治療院はあるか? あるなら、帰れ』と。部屋にいると、ついつい周囲に使われてしまうんですよね。『今は自分のためだけに時間を使え』と師匠は言ってくれるんです。

 宇良も3月には実家の大阪に帰っていましたよ。

 実家で療養していた力士たちが英気を養って、ひとりひとり部屋に戻ってくると、やっぱりお互いに嬉しいものです。37人の兄弟みたいなものですからね――」

「新しく生まれ変わった宇良が期待できるはず」

 宇良は、いまだ稽古場で相撲は取っていない。しかし、ひたすらトレーニングに勤しみ、それまで160キロを挙げていたベンチプレスは、190キロを挙げられるまでになった。握力も「100キロを超した!」と喜んでいるのだという。

 元力士でもある間嶋氏は、力強く言い切った。

「ほかの小兵力士とも異質で、宇良ならではの独特な相撲スタイルがある。あの相撲でより強くなる方法や感覚は、彼本人にしかわからないんですよね。だから師匠も本人に任せている、と言うのだと思います。いつ出場できるようになるかは、今はまだ、わかりませんが――。

 その時は、新しく生まれ変わった宇良が期待できるはずですよ」

文=佐藤祥子

photograph by Kyodo News


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