史上初のGL敗退を喫したドイツ。再建に必要なのはエジルとの別れか。

史上初のGL敗退を喫したドイツ。再建に必要なのはエジルとの別れか。

 まずは、自分の目が節穴だったと認めなければならない。

 グループFの2戦目(対スウェーデン)後に執筆した当コラムで「新リーダーの誕生」、「ドイツの勢いは増す」と言い切った。しかし、ドイツは最終戦で韓国に0−2の完敗。まさかの最下位でロシアワールドカップ敗退となった。史上初めてベスト16進出を逃す失態である。

 一時代の終焉を意味する敗北を受け、ドイツでは様々な議論が交わされている。

 ヨアヒム・レーブ監督の解任論も浮上した。だが、DFB(ドイツサッカー連盟)はW杯前に2022年夏まで契約を延長した指揮官の続投を支持。7月3日、2006年から続くレーブ体制の継続を正式にアナウンスした。

 辞任の可能性を仄めかしていた本人も「DFBからの信頼に感謝している。(ロシアW杯の結果には)私自身の失望も大きいが、再建に向けて、スタッフとともに分析を進めていく」と語り、未来への新たな決意を口にしている。

 指揮官の脇を固めるスタッフも変わらない。レーブがアシスタントコーチを務めていた時代から苦楽を共にしているGKコーチのアンドレアス・ケプケ、チーフスカウトのウルス・ジーゲンターラー、チームドクターのハンス・ビルヘルム・ミュラー・ボールファールト、心理学者のハンス・ディーター・ヘアマンも留任する。

ボール支配率67%がゴールに結びつかず。

 ただ、この体制のままでは発展は難しいとの声もある。

 例えば、『SPIEGEL』紙のペーター・アーレンス記者は「ジーゲンターラーはメキシコのプレースタイルを誤って判断した」と厳しく指摘。これが「レーブとその仲間たちの限界の兆候かもしれない」と警鐘を鳴らす。

 このタイミングで現体制が幕を閉じていたら、2000年代初期に低迷していたドイツを立て直し、世界制覇にまで導いた英雄たちの最後には相応しくなかった。

 レーブと彼の仲間たちに、もう一度チャンスを与えたくなったDFBの心情は理解できる。ただ、課題は山積みだ。まずはプレースタイルを見直す必要がある。ロシアW杯では1試合平均のボール支配率が67%に達しながら、チャンスをゴールに結び付けられず、カウンターへの耐性の低さも露呈した。

主力が高齢化、若返りが必須の課題。

 スペインとは違い、ドイツにパスサッカーの伝統はない。レーブ体制が続く以上、180度の方向転換は考えにくいが、9月から始まるUEFAネーションズリーグでは新たなサッカーにチャレンジするかもしれない。

 プレースタイルの見直しとともに、レーブが推し進めなければならないのが世代交代だ。2014年のブラジルW杯制覇の立役者であり、今大会でも主軸となった2009年のU-21欧州選手権優勝メンバーたちは、4年後に33〜36歳になる。

 これから選手として脂が乗るのは、GKのマヌエル・ノイアーくらいだろう。サミ・ケディラやマッツ・フンメルス、ジェローム・ボアテンク、メスト・エジルに大きな伸びしろは残っていない。

 その1つ下の世代に目を向けても、マルコ・ロイスが29歳で、トニ・クロースとトーマス・ミュラーが28歳だ。19歳のキリアン・ムバッペや22歳のベンジャミン・パバールが躍動するフランス、24歳の主将ハリー・ケインに象徴される若き力が躍進の原動力となったイングランドのように、ヤングパワーを取り込まなければならないだろう。

キミッヒ、ベルナー、サネら才能は揃う。

 幸い、人的資源は豊富だ。すでに代えの利かない戦力となっている23歳のヨシュア・キミッヒを筆頭に、マリオ・ゴメスが「今後10年はエースになりうる」と太鼓判を押すティモ・ベルナー、2017-18シーズンのPFA年間最優秀若手選手賞に輝いたレロイ・サネと超逸材が揃う。

 さらに、若手主体で臨んだコンフェデレーションズ・カップや2017年のU-21欧州選手権を制したタレントたちも控えている。24歳のユリアン・ドラクスラー、23歳のレオン・ゴレツカ、22歳のユリアン・ブラント、セルジュ・ニャブリ、マックス・マイヤーなど若き才能の名を挙げれば、それこそキリがない。

 年内に予定している国際Aマッチ6試合では、こうした若手を積極的にスタメン起用していくべきだろう。とりわけUEFAネーションズリーグでのフランスとの2試合(9月6日にホーム、10月16日にアウェー)は、貴重な経験を積む場になる。

エジルとの別れが再建への一歩なのか。

 DFBのラインハルト・グリンデル会長は、トルコ大統領を表敬訪問した問題(※)に揺れるエジルについて、「メストがどういう行動を示すか見守る。ミスを犯したが、あれだけの功績を残した選手に(代表継続の)チャンスを与えるのは公平なこと」と語るが、歴史的な惨敗を喫した今、実績を重んじた選手選考は不要だ。

 ベテラン重視が敗因となった'98年W杯の轍も踏みかねない。2017-18のアーセナルで不本意なシーズンを送り、ロシアW杯ではスペインの『マルカ』紙から「行方不明」と酷評されたエジルとの別れが、ドイツ代表の再建に向けた意義のある一歩になるかもしれない。

(※=W杯開幕前にエジルとイルカイ・ギュンドガンが、自分たちのルーツであるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と面会。その模様がSNSで公開され、ドイツ国民の反感を買った。ギュンドガンはこの騒動に対するコメントを発しているが、エジルは口を閉ざしたまま。今なお非難の対象となっている)

文=遠藤孝輔

photograph by Getty Images


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