錦織圭、松岡修造以来のベスト8!ウィンブルドンで似る2人の言葉。

錦織圭、松岡修造以来のベスト8!ウィンブルドンで似る2人の言葉。

 そこは、23年前と同じ場所だった。錦織圭とは切っても切れない間柄の松岡修造さんが、日本男子として62年ぶりのウィンブルドン・ベスト8入りを果たした『13番コート』は、今日錦織がそれ以来のベスト8に到達した『2番コート』の場所にあった。

 ウィンブルドンは過去10年の間に劇的に改築が進み、2009年、かつての13番コートが4000人収容のスタンドを持つ新2番コートとして生まれ変わったのだ。

 松岡さんが歓喜のあまりラケットを放り投げてコートの中を走り回ったシーンは有名だが、元トップ10プレーヤーのエルネスツ・グルビスを4−6、7−6(5)、 7−6(10)、 6−1で退けた錦織はファミリーボックスを見上げて拳を強く握り、壁を1つ超えた喜びを静かに噛みしめた。

「優勝するためには安心してられない」

「優勝するためにはここからタフな戦いがまだ続くので、安心もしていられない」

 苦手意識のあった芝、グランドスラムで唯一4回戦を突破したことがなかったウィンブルドンで、優勝まで見据えた言葉をさらっと言ったことに驚かされた。錦織のキャリアを冷静に考えてみれば決して不思議なことではないのだが、数日前には錦織自身も、「復帰してからなかなか思うようにプレーできなくて、『前だったらこういうプレーができてたのに』とかネガティブな考えをすることも多かった。正直、楽しくなかったり、難しいところもある」と復帰途上のもどかしさを語っていた。

 まだ完全復活とまでは言いきれないこの段階で、また1つ壁を破ることを心から信じていた者は、錦織を支えるチーム以外にそう多くはなかっただろう。

 ふと思い出したのが、23年前の松岡さんの記者会見だ。たったひとつだけ覚えている記者とのやり取りがある。

「松岡はもう潮時」という風潮だった。

「松岡はもう潮時だと書いた記者のことをどう思いますか」というような内容の質問だった。恐らく聞いた本人が、その記者だったはずだ。

 当時27歳だった松岡さんは「当然のことです。僕が記者でもそう書きました」とまっすぐに答えた。'92年にキャリアハイの46位までいったものの、もう丸2年トップ100外に低迷していた中で到達したグランドスラム自己最高のベスト8だったのだ。

 錦織は手首のケガで休んでいる間もランキングを40位以下に落とさなかったが、この間には、若い強烈なハードヒッターが次々と出現し、テニス界はさらに層が分厚くなっていた。

 30代のグランドスラム出場者数が20数年前に比べると4倍にもなっている現在、27歳や28歳で「潮時」とはまだ言われないかもしれないが、右手首というデリケートな部位に不安を抱える錦織がまたトップに戻れる日が来るのかと疑う意見は当然あった。

 錦織自身もそれを目にするなり耳に入るなりしただろう。今はメディアだけでなくSNSなどで世論もダイレクトに目に入ってくる時代だ。クサりもするだろうし、反発心も生まれるに違いない。

「1回もつまんないと思ったことはない」

 今大会の2回戦で対戦したバーナード・トミックなどは、そうした声に過剰に反応しすぎて、「テニスを好きだと思ったことなんかないし、だいたい平均して50パーセントくらいの力しか出していない。それに、もう飽きた」などと発言して世界中から非難を浴びた。これを受けて錦織は、18歳でウィンブルドンの予選からベスト8に進出したトミックの苦悩に少しの同情を寄せながらも、こう話した。

「もちろんメンタルが疲れることはありますけど、僕はテニスをやめたいとかつまんないとか思ったことは、1回もないですね。でもバーンアウトする気持ちはなんとなくわかるし、人それぞれかなと思います」

 結局、メンタルの強さとは、そうしたピュアな原動力でもあるのだろうか。

ジョコビッチ「ケイは誰だって倒せる」。

 準々決勝で対戦するノバク・ジョコビッチは、「ケイは彼らしいメンタルの強さを示した。彼はすでにトッププレーヤーとして出来上がっているから、体調さえ良ければ誰だって倒せる」と評する。

 確かに、グルビスとの2つのタイブレーク、ニック・キリオスとの3回戦の日没迫る中でのストレート勝利など、今大会は錦織の勝負強さ、集中力が光っている。そしてそれは、昨年調子を落としていたときの錦織に欠けていると指摘されていたものだ。

 そんな評価はこの準々決勝で完全に覆してほしい。

 ジョコビッチもまた、肘のケガを治すために昨年の後半は完全にツアーを離脱。今季の復帰後、かつて無敵と恐れられ、強靭なメンタルを誇った王者の姿を見ることはできなかった。

 だが今大会のここまでの戦いぶりを見る限り、ようやく、本当にようやく、「ジョコビッチ」が戻って来たと言っていいのかもしれない。対戦成績はジョコビッチの13勝2敗。どちらが本物の復活を証明してみせるだろうか。2018年シーズン後半を大いに刺激する一戦になりそうだ。

文=山口奈緒美

photograph by Getty Images


関連ニュースをもっと見る

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索