オリ増井浩俊は見た目以上に貪欲。「僕は記憶より記録で残すタイプ」

オリ増井浩俊は見た目以上に貪欲。「僕は記憶より記録で残すタイプ」

 6月29日、オリックスの守護神・増井浩俊は、昨年まで慣れ親しんだ札幌ドームのマウンドに、史上4人目の記録をかけてあがった。

 過去に江夏豊、マーク・クルーン、デニス・サファテの3人しか達成したことのない“12球団からのセーブ”である。

 昨年まで北海道日本ハムで守護神を務めていた増井は、そこで11球団からセーブを挙げており、残るは古巣からのセーブのみとなっていた。

 オリックスが2−1とリードして迎えた9回裏に増井がマウンドに上がると、オリックスファンだけでなく、日本ハムのファンからも拍手が送られた。自分たちが応援するチームがリードされているにも関わらずだ。

「ビジターだったのに拍手をもらって……。『あったかいなー』って、札幌ドームの雰囲気になんかちょっと感動というかね。いやぁありがたかったですね」

 そうした感慨もすぐに胸の内に封じ込め、増井は口をへの字にギュッと結ぶと、いつものように冷静に、14球で3つのアウトを奪って締めた。その瞬間、ようやく安堵の笑顔を浮かべた。

セーブ、タイトルへのこだわりは明言する。

 日本人としては37年ぶり2人目の快挙。ヒーローインタビューでは、喜びを噛みしめるように語った。

「まさか自分がこういう記録を達成できるとは思わなかったので、ここまで育ててくださった皆さんに感謝したいと思います。リリーフに転向してからずっと武田久さんの背中を追いかけて、クローザーを目指してやってきたので、今こうやってクローザーとして記録を作れていることは本当に嬉しく思います」

 12球団セーブへの意欲は、今シーズン開幕時から口にしていた。

 マウンドでは常に表情を変えることなく淡々と投げ、派手なガッツポーズもしない。普段から穏やかで、一見、あまり欲がなさそうに見える。しかし実はセーブへのこだわりや、タイトルへの欲をハッキリと口にする。

「やっぱりセーブは特別ですね。抑えって各チーム1人ですし、一番、頼られるピッチャーが1人、最後に投げさせてもらえるので、そこをどれだけできるかというのが、今の自分の目標でもあります」

チーム第一でも、タイトルは貪欲に狙う。

 日本ハムでは2012年に最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得し、その後クローザーを任された。'16年はチーム事情で先発を務め10勝を挙げたが、昨年は再びクローザーに。そして昨年オフ、FAでオリックスに移籍した。先発ではなく抑えとして望まれたことがオリックスを選んだ理由の1つだった。

 オリックスでは、メジャーリーグ・ダイヤモンドバックスに移籍した平野佳寿のあとを引き継ぎ、今季開幕から守護神として、防御率1.56の安定した投球でセーブを積み上げている。

 ただ4−2で勝利した5月1日の埼玉西武戦は、9回のマウンドに山本由伸が上がり、山本にプロ初のセーブがついた。増井はそれまで3連投していたため、その日は休養に当てられたせいだが、悔しそうにこう振り返った。

「ああいう試合は(セーブがつかない)大差で勝ってほしいなと思いますね。もったいなかった(笑)。でも翌日にもセーブシチュエーションがきて、そこではセーブを取れたので、『1日休んどいてよかったな』と思いましたけどね」

 もちろんいつもチームのためを第一に考えて戦っている。それが伝わるから北海道のファンにも愛されたのだろう。ただその中で、狙えるタイトルは貪欲に狙う。それがモチベーションにもなっている。

交流戦最終戦、MVPをかけてマウンドへ。

 交流戦では、可能性のあったMVPを逃しておおいに悔しがった。

 今年の交流戦の最高勝率球団は東京ヤクルトだったが、MVPは通算勝利数で勝ち越したパ・リーグの中で勝率1位だったオリックスから選ばれた。交流戦最後の6月21日の阪神戦を前に、それまで6セーブ2ホールドで防御率0.00だった増井や、吉田正尚、山本といった名前が候補に挙がっていた。

 その阪神戦で、増井は3−2と1点リードの9回裏にマウンドに上がったのだが、糸井嘉男に手痛い本塁打を浴び追いつかれてしまった。結局、MVPは吉田正が受賞した。

「セーブシチュエーションでうまく回ってきたので、これ(セーブを)取れたらあるかも、という意識はちょっとありましたけど、糸井さんがやってくれましたね。

 まあでも正尚が獲ったんで。やっぱりね、そういうスター選手が獲るようになってるんだな! と(笑)。そういう選手なんだなと思いましたね。

 あの最終戦も正尚は2安打して打点も挙げていましたから。正尚がタコってたらあったかもしれないですけど、打っていたので『あ、これはもう決まりだな』と思ってました(笑)。

 そりゃあ欲しかったですよ。だって交流戦のMVPなんてそうそう獲れないっすもん。12球団の中で1人ですから」

意外にも低い自己評価?

「結果やタイトルはあとからついてくるものなので」といった発言をする選手も多い中、ここまで数字やタイトルへの意欲を口に出す選手はめずらしい。しかもそれがギラギラしたオーラをまとった選手ではなく、“静”のイメージのある増井だから面白い。

「みんな思いは同じだと思いますけど、僕はそれを普通に言っちゃうんですよね(笑)。やっぱり欲しいですもん。

 僕は“記憶に残る”というよりは、“記録で残す”タイプの選手だと思うので。そんなに人気選手ではないし、目立つタイプじゃないから。だからしっかり記録で、プロ野球界にいたことを残せたらなーと思っているんです」

 この言葉には驚いた。

 確かに派手なパフォーマンスで目立つタイプではない。しかし12球団セーブを達成した日の日本ハムファンからの温かい拍手や、オリックス1年目にして、オールスターのファン投票でパ・リーグの投手でトップの44万3580票を獲得して選出されたことを考えても、「そんなに人気選手ではない」というのはあまりに自己評価が低すぎるだろう。

 7月10日現在、増井はリーグトップの22セーブを挙げている。自身初のセーブ王のタイトルへ、後半戦もひた走る。

文=米虫紀子

photograph by Kyodo News


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