ベルギーの猛攻を守りきり決勝へ。フランスがついに手にした一体感。

ベルギーの猛攻を守りきり決勝へ。フランスがついに手にした一体感。

 オリビエ・ジルーは、まるでDFのように振る舞った。ポール・ポグバは、間違いなく屈強なCBだった。エデン・アザール、ロメル・ルカク、ケビン・デブライネらワールドクラスを揃える赤い悪魔の猛攻を、フランスはまさに11人全員で守り抜き、遂にファイナルの舞台へと駆け上がった。

“事実上の決勝戦”と目されたフランスとベルギーのセミファイナルは、立ち上がりから攻守が目まぐるしく入れ替わるハイテンションな戦いとなった。

 先にチャンスをつかんだのはベルギー。基本布陣は3-4-3ながら、守備時には4-4-2で対応する可変システムが、ブラジル戦に次いで、このフランス戦でもチームに安定感をもたらしていた。

 とりわけ輝きを放ったのがE・アザールだった。3トップの一角を占めながらもまるでウイングバックのような位置取りで左サイドに目一杯に張り出すと、タッチライン際で鋭いドリブルを繰り返し、フランス守備陣を翻弄していく。

 15分にデブライネからのパスをエリア内で受けて決定的シュートを放つと、19分にはカットインから強烈なシュートをお見舞い。悲願の決勝進出に向け、ベルギーの10番は鬼気迫るプレーを見せつけた。

ロリスのスーパーセーブで流れが変わる。

 しかし、潮目が変わったのは、このシュートで得たCKだったかもしれない。ナセル・シャドリのキックをマルアン・フェライニが落とし、トビー・アルデルバイレルトが左足を振り抜く。

 先制点が生まれたかに思われたが、ここで立ちはだかったのが、フランスの守護神ユーゴ・ロリスだった。懸命に両腕を伸ばし、枠に飛んできたボールをかき出すようにゴールの外へと弾き出したのだ。

 このプレーを境に、フランスは徐々に落ち着きを取り戻していく。ポグバ、エンゴロ・カンテを中心に中盤でのボール奪取の機会を増やすと、縦に速い攻撃でベルギーゴールに迫っていく。

アザールが軸となり、グリーズマンが攻勢を導く。

 34分にはアントワン・グリーズマンのフィードに反応したキリアン・ムバッペが右サイドから絶好のクロスを供給。これはジルーが合わせ損なうも、40分には果敢なオーバーラップを敢行したベンジャミン・パバールが、ムバッペのスルーパスに抜け出して決定的なシュートを放つ。

 ティボー・クルトワの好セーブに阻まれゴールはならなかったものの、流れは着実にフランスに傾いていた。

 そうした展開の中、フランスに歓喜をもたらしたのは、ウルグアイ戦と同じセットプレーだった。グリーズマンのキックをサミュエル・ウムティティがニアサイドで合わせる。伏兵の一撃が結果的にこの試合を決定づけた。

 ベルギーの攻撃軸を担ったのがE・アザールなら、フランスの攻勢を導いたのはグリーズマンである。神出鬼没な位置取りで中央、サイドと様々なエリアに顔を出し、中盤と前線のつなぎ役を担う。

 正確なプレースキックもフランスの大きな武器となっており、これで2試合連続のアシストである。2年前のEUROで得点王に輝いたストライカーは、今大会ではムバッペに主役の座を譲りながら、決定的チャンスを生み出す名脇役として、フランスの躍進を牽引している。

ベルギーにトドメを刺し損ねたジルー。

 リードを奪ったフランスは、その後も一気呵成にベルギーを押し込んだ。ムバッペのトリッキーなパスからチャンスを迎えたジルーに決定力が備わっていれば、ベルギーにとどめを刺すことができていただろう。

 九死に一生を得たベルギーは、60分に守備的なムサ・デンベレに代えてドリース・メルテンスを投入。この小柄なアタッカーが右サイドから好機を作り出すと、流れは再びベルギーへと渡っていく。

1人もさぼらず守り続けたフランス。

 ところが、ここからフランスは完全な守備モードへとシフトする。人海戦術でゴール前を固め、赤いユニホームをゴール前に近づけない。ウムティティとラファエル・バランの2人のCBだけなく、ポグバもエリア内でクロスを跳ね返し続ける。

 FWジルーも懸命に自陣深くまで戻って応対し、ベルギーの攻め手を排除した。時折E・アザールの突破に苦しんだものの、「守る」と割り切って築かれたレ・ブルーの堅牢は、最後まで破綻することはなかった。

 ムバッペ、グリーズマン、ポグバと各所にきらりと光る個性を備えながらも、今大会のフランスの躍進の要因は、ひとつの目的に向かって一枚岩となる強固な組織力にある。この試合も、たった1人でも隙を見せれば赤い悪魔の猛攻に飲み込まれる危険性があった。

 しかし、全員がさぼることなく保ち続けた献身こそが、フランスをファイナルへと導く最大の原動力となったのだ。

 20年ぶりの頂点へ――。フランス国民が抱くその夢が、いよいよ現実のものとなりつつある。

ベルギーの戦いもまた勇敢だった。

 一方、ベルギーの健闘も称賛すべきだろう。とりわけ決勝トーナメントに入ってからの戦いは勇敢だった。日本戦での圧巻の逆転勝利、ブラジルに引導を渡した快勝劇と、ワールドクラスを多数擁した彼らは、優勝候補に恥じない戦いを見せつけた。

 もっとも、フランスにはその勢いも通じなかった。頼みのルカクは沈黙し、守りを固める相手に持ち前のカウンターを仕掛けられなかった。日本やブラジル相手にはストロングポイントとなっていた高さの部分でも、同等の体格を備えたフランスには脅威とは成り得なかった。

 黄金世代の集大成と位置付けられたこの大会で、ベルギーの歴史を塗り替えることは叶わなかった。

文=原山裕平

photograph by Getty Images


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