「Vリーグは存亡危機」と警鐘も。新方式に選手はどう向き合うべき?

「Vリーグは存亡危機」と警鐘も。新方式に選手はどう向き合うべき?

 会場のモニターに試合の様子が映し出される。昨シーズンのV・プレミアリーグ女子大会、ファイナルのVTRだ。コート上で繰り広げられる熱戦とは裏腹に、観客席には空席が目立った。カメラがターンしても、その風景はさほど変わらない。

 司会者は言った。

「Vリーグは存亡の危機にあると考えてください」

 6月9日、都内で『プレーヤーズミーティング・若手研修会』が開催された。その時間内に設けられたバレーボール・新リーグの説明会はこんな一言からスタートした。

 説明会に参加したのはV1(1部)からV3(3部)までに参戦するカテゴリーの各チームを代表した1チーム2〜4名。ライセンス条件の内容や新リーグの試合方式など、概要と変更した点が説明されると、参加選手は一様に真剣な表情でメモを取っていた。

「川崎にバレーチームがあったの?」

 冒頭で見せられた観客の少ない映像は女子の試合だった。NECレッドロケッツを代表して参加していた主将の柳田光綺はどう感じたのだろうか。

「昨シーズンは特に、地方に行ったときなどは応援団席しか埋まっていない状況を目の当たりにしていました。幸い、NECのホームゲームは会社の人やファンの方のおかげで、埋まっていることが多かったのですが、場所によっては応援団席以外はガラガラという会場を見ていましたので、試合を見に来る人が少ないんだなという印象は昨シーズンから強かったです」

 ホームゲームを増やすことが決定している新リーグにとって、重要となるであろう本拠地での認知度もまだまだだと柳田は言う。

「今まであまり積極的に宣伝してこなかった分、今後、どうやって地域の人にレッドロケッツを知ってもらえばいいのか悩みは大きいです。特にNECの拠点である川崎にはいろいろなスポーツのチームがあって、真っ先に思い浮かぶのはサッカーのフロンターレやバスケット、アメフトです。

 ではわたしたちバレーボールのチームがあることはどれくらい知ってもらえているのか……。『バレーボールのチームがあったの?』と言われてショックを受けたこともありました」

見たことがない人に見てもらう。

 NECレッドロケッツは地道に川崎市内の小学校を回ってバレーボール教室などを開催しているものの、まだ活動の認知度は低い。柳田は続ける。

「今まで選手はプレーとか、バレーボールだけに集中して、取り組むことが大事だと教えられてきました。そうして試合に勝つことができればよかったのですが、これからはそれだけではなくて、バレーボールを見たことがない人に、バレーボールを見てもらえるような活動をしていく必要があると思っています」

 2016/2017シーズンのV・プレミアリーグにおいてNECは優勝したが、「元々バレーを知っている人や、バレーに興味を持っていた人しか優勝したという結果を知りませんでした。それじゃだめだという強い危機感はあります」と柳田は話す。

スポーツに理解がある企業でも。

 NECにはレッドロケッツのほかにブルーロケッツという男子チームがかつて存在していた。折からの不況で運動部を縮小しなければならなくなり、2009年、男子バレーボール部のブルーロケッツが休部となった。

「今、レッドロケッツを率いている金子隆行監督が元ブルーロケッツの選手なので、男子チームが昔、あったことは聞いています。細かい事情まではわかりませんが、休部の原因には少なからず成績が関係していたと聞いています。ですから、わたしたちは、おそらく他のチームより危機感は強いと思います」

 また、いつ不況の波が襲ってくるかわからない。

「NECはスポーツに理解があって、協力的な会社だと感じていますけど、会社の中には『自分たちが働いているのにスポーツだけやっている』という見方をする人も当然、いると思う。そういう人たちに、どうしたらわたしたちがやっていることをプラスに感じてもらえるのか、これからも考えていきたいです」

 同じくプレーヤーズミーティングに参加していたサントリーサンバーズの星谷健太朗は言う。サントリーはいち早くナイトゲームを企画するなど、集客に関して積極的に取り組んでいる印象が強いチームだ。

「今日参加して説明を聞いて、想像していたよりはVリーグ機構側にはしっかりとした展望があるんだなと感じました。僕は以前から不思議だったんですよ」

「どの立場でも意見が言えるように」

 星谷が疑問を抱いていたのはチケットの価格設定だという。通常、試合の開催される会場にはコートサイドの四方にスタンド席が作られているが、中には記者席の後ろに設置された観客席もある。

「あの席も、ほかのアリーナ最前列の席と同じ値段だったとしたら、それはないんじゃないかなって思っていたんですよね」

 改善できるのであれば改善したいと語った。

「今日、説明会でいろいろな話を聞いて、僕らが当事者であることをもっとみんなが認識しなければいけないと痛感しました。そして、そういう環境を作っていこうというVリーグ機構の意思もわかりました。選手にできるのは、どんな立場の人でも意見が言えることだと僕は思います。“言える”というのは、組織の中で臆することなく発言できるということ以上に、自分の考えを持っているか、その考えを言葉にして伝えることができるか……。

 バレー選手って毎日の練習と、試合に勝つことに精いっぱいだったから、自分がなぜバレーをしているのか、この先どうしたいのかを考えていない人がすごく多いと僕は感じています。そういう人が減るよう、これまでも周囲の選手とは話してきたし、これからももっと話していきたいと思います」

 語気を強めてきっぱりと語った。

「言われなきゃ一生やらない人も」

 今回のミーティングには参加していなかったが、2000年に地域密着型スポーツクラブとしてビジネス化の先駆者となった堺ブレイザーズの千々木駿介にも別の機会に話を聞いた。千々木には毎試合前、観客席を見上げる習慣がついている。客の入りを確認するためだ。

「そりゃあ気になりますよ。切実です。入団した当初からよく同期の伊藤(康貴・2018年5月に引退)と話したのは『自分らがブレイザーズに貢献するためには、バレーボールだけやっていちゃだめだ』ということ。こういうサービスをやろうとか、サポーターの皆さんに向けてこういう振る舞いをしようとか、よく話し合っていました。

 僕は、そういうのは自分で考えてやるものだとずっと思っていたんですが、でも、言われなきゃ一生、やらない人もいるんですよね。全員が同じような高い意識を持ってできるかと聞かれると、こればかりは何とも言えません」

事情の違うチームがリーグ戦に臨む。

 新リーグはビジネス化を謳ってはいるが、選手や企業がすべてプロ化するわけではない。黙っていても年間10億円近いと言われる予算を捻出できるチームが存在するのも現実だ。一方で、週5日働きながら練習を続けトップリーグに臨むチームもある。それぞれ事情の違うチームがリーグ戦を進行しなければならない。

 千々木は続ける。

「野球のように1試合に数万人が集まって、年間約140試合を戦うスポーツとは観客数もキャパシティも違います。だから他の競技とは違う、バレーボール独自のプロリーグを発展させていけるのかを考える必要があります。

 もっといろいろな分野で事業を展開できると思うし、明確に目標を立ててゴールを思い描いてやっていくべきだと思います。ブレイザーズは今年で19年目ですからね。周りのチームは今年からですよね。でも、何年かかってでも、やっていくべきなんじゃないかなって僕は思います」

 ここで紹介したのはほんの一部の選手の意見である。選手の数だけ言葉があり、反論もあるだろう。しかし星谷が指摘した通り、それぞれの選手が当事者意識を持って、意見を言い合える空気を作ることが、まずは重要なのではないか。

 7月22日、新V.LEAGUE(1部)の開幕日が発表された。女子は11月3日から3会場で、男子は10月26日のナイトゲームでスタートを切る。

 開幕まで残された時間は少ない。

文=市川忍

photograph by Japan Volleyball League Organization


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