錦織圭、珍しいサーブ権選択の根拠。芝コートの先サービスでは12勝2敗!

錦織圭、珍しいサーブ権選択の根拠。芝コートの先サービスでは12勝2敗!

 最近の錦織圭にはポジティブな“変更点”がたくさん見られる。

 28歳を迎え、これまでの一般的なテニス選手であれば全盛期にあるかピークを過ぎてもおかしくない年齢となった。長いキャリアで培ってきたスケジューリングやルーティーンをいまさら変えることはリスクの高い選択だろう。

 しかし、マスターズ、さらにはグランドスラムであと一歩が届かない現状を鑑みると、なにかしらの変更が、最後のピースとなる可能性がある。

変化が実ったウィンブルドン。

 先日、12月のオフシーズンに錦織がハワイでのエキシビションに参加することが発表された。これまでの彼は12月にマイケル・チャンコーチの指導の下でトレーニングを積み、翌シーズンへの準備を整えることがほとんどだった。

 2013年の年末にコーチに就任し、このオフシーズンには基礎基本を徹底的に仕込むトレーニングを講じた。これが2014年に「トップ10の壁」を破る大きなきっかけとなったことを考えると、ハワイの件はかなり大きな変化と言えそうだ。

 2020年に1月のATPツアースケジュールが大幅に変更になる可能性があり、それを先回りした形だが、2019年の全豪オープンでどのような成果が見えるか今から楽しみだ。

 そして早速、錦織の変化は先日行われたウィンブルドンで好結果をもたらした。ここで自身初となるベスト8。試合内容も、18歳でウィンブルドンベスト8経験のあるバーナード・トミック(オーストラリア)、かつてウィンブルドンでナダルを破ったニック・キリオス(オーストラリア)という厳しい相手に連勝した。復活優勝を遂げたノバク・ジョコビッチ(セルビア)にも途中まで五分の戦いを演じるという素晴らしいものだった。

 このウィンブルドンで錦織は2つのルーティーンを変えていたのだ。

1ゲーム目のサーブ権を選ぶ意味。

 1つ目が、ポイント前にボールを1球しか持たず、セカンドサーブを打つ前にボールをもらうというもの。

 2つ目が、試合前のコイントスに勝った場合、1ゲーム目のサーブ権を選ぶというものだ。

 まず1つ目の変更は、セカンドサーブのボールをもらうのが面倒という状況を作り、ファーストサーブにより集中できるようにするためという、天才肌の錦織らしいアイデアだ。

 そして2つ目。錦織はこれまで1ゲーム目からサービスキープのプレッシャーを背負いたくないという理由から、コイントスに勝っても得意のリターンを選択することが多かった。実は錦織のキャリアを振り返ると、初期の頃はサービスから始めることが多く、10試合以上連続でサービスゲームから始まることもあった。

 だがトップ選手になってからはリターン選択の割合が大幅に上昇。通常はコイントスに勝った選手はサーブを選ぶことが多いため、2014年以降、錦織の試合開始1ゲーム目がリターンゲームになる試合の割合はなんと73%にのぼっている。

 もちろんリターン選択は錦織本人の考えがあってこそだが、このスタイルにはある落とし穴がある。

サービス側のキープが続いたら……。

 改めて整理しよう。相手のサービスゲームから始まって、9ゲーム目まですべてサービス側がキープした場合、ゲームカウントは自分から見て4−5になる。すると次のゲーム、自分がサービスを落とせば即セットを落とす。

 一方、先にサーブを打つ選手から見ると、例えば5−5の11ゲーム目でサービスを落としても、わずかだがその後にブレークバックできる可能性があり、即セット終了とはならない。

 テニスはサーブやコートなどを交互に変えていき、一見するとすべての面で平等なように見えるが、上の例で示すように、メンタル的には先にサーブを打つ方がわずかに有利な部分がある。

 そしてこのわずかな差を見逃してくれないのがBIG4だ。

ナダル、ジョコの驚異的な粘り腰。

 2016年バルセロナ大会決勝では、ラファエル・ナダル(スペイン)がこの「サーブを落とせば即セット終了」という場面で錦織から2セット連続でブレークに成功し試合を決めた。今年のマドリードマスターズでも、ジョコビッチが同じ場面で2セット連続ブレークに成功している。

 では、サーブ権を取るか否かというわずかな違いが、試合結果に影響を与えるのだろうか。結論から言うと、無視できない差があると言えそうだ。

 2014年以降、錦織がリターンゲームから試合を始めた場合の勝率は71.2%である。そして、サービスゲームから試合を始めた場合の勝率は78.2%。これだけでなんと7%も勝率に差がついている。

 特に1つのブレークが命取りとなる芝コートではさらに顕著で、サービスゲームから試合を始めた場合なんと12勝2敗(うち1敗は途中棄権負け)という極めて高い勝率を誇っている。

 今年の芝シーズンでの錦織のサーブ選択は、あくまで一時的なものかもしれない。しかし筆者としては、これからもコイントスに勝ったらサーブを選択することを期待したい。特にBIG4相手に臆せずサービスゲームから始めるようになれば、足りなかった何かをつかみ取れるチャンスが待っているのかもしれない。

文=今田望未

photograph by Getty Images


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