バレー柳田将洋は強気で気負わず。サッカー日本代表から学ぶ主将像。

バレー柳田将洋は強気で気負わず。サッカー日本代表から学ぶ主将像。

 ロシアW杯におけるサッカー日本代表の戦いは、ファンやサポーターを始め、普段サッカー観戦をしない人々まで、見るものの多くを虜にした。

 もちろん、トップアスリートたちだって例外ではない。バレーボール全日本男子の主将・柳田将洋もその1人だ。

「W杯ですか? 日本戦はほとんど見ていましたよ」

 声のトーンが一段上がり、どれだけ熱を帯びて観戦していたかが伝わる。

 ただ、当然ながらその見方、感じ方は一般人と同じではない。自身のSNSでも複数回にわたり発信しているが、9月に世界選手権を控えた日本代表として、そして就任してまだ数カ月の全日本男子の主将として、テレビ越しにロシアでの戦いを見つめた。

「しがみついていく」気持ちに共感。

 まず、多くを感じたのはグループリーグ第3戦のポーランド戦だったと言う。他会場と自分たちの状況から0−1の敗戦を選択した、物議をかもしたあの試合だ。

「自分たちは東京五輪を2年後に控えているんですが、彼らは4年前のブラジルW杯でグループリーグ敗退という結果を踏まえて、経験を積み重ねてきている。その時間の重みを考えると、ベスト16までもう少しという状況でのあの選択っていうのは、どれほどの覚悟だったのかと思いました。

 前回大会だけでなく、ベスト16から8に進めなかった前々回(2010年南アフリカW杯)からの流れがあると考えると、あの選択を“仕方ない”という言い方は意味が少しずれる気がします。それくらい(突破することに対して)必死で、誰に何を言われても、チームが1つになって進もうとしている姿を、僕はリスペクトして見ていました。なんとか先に行って欲しいと思っていました」

 4年前の悔しさを抱えて、それを乗り越えるべく戦うサッカー日本代表に時間の重みと選択の難しさを感じた。同時に、彼らが戦う姿を東京五輪を2年後に控えた自分たちに置き換えて考えずにはいられなかった。だからこそ、たとえ見苦しくても勝ち上がることを選択した彼らに、柳田は深く感じるものがあった。

「競技は違いますけど同じ日本代表として、ああいう展開でもしがみついて(突破する)というのはすごく(気持ちが)伝わってくるし、試合後のコメントを聞いてもすごく気持ちが伝わってきて。やはりそこが一番大事なんだなと思いました」

4年ではなく一生に一度の大舞台。

 サッカーにおいてはW杯、バレーボールにおいては五輪など、大舞台は4年に1度やってくる。だが、選手にとっては単に、4年に一度コンスタントにやってくる大会というだけではない。

「僕は今26歳で、28歳で東京五輪を迎えます。その次のパリ五輪が32歳で、ロサンゼルス五輪が36歳と考えたら、時間は有限だし、どんどん(引退の時期が)迫ってくるじゃないですか。僕らにとって五輪は単に4年に一度来るものではなくて、一生に1度のものだと思うんです。

 つまり、“4年に一度”とはいっても、一生の間に常に4年に一度ずつというわけにいかない。ましてや日本代表までたどり着いて、4年に一度の大会にピークを合わせるとなると、一生に一度チャンスがあるかないかだと思います」

主将だからと気負いすぎずに。

 だからこそ、W杯の日本代表の戦いに共感したのだ。

「ベスト16に進めるかもしれないという状況で、自分だったらそこでどう考えるのかなと思いました。僕は何が何でも突破したいと考えると思います。4年に一度のサイクルの中であるW杯だからこそ、いろんなことを考えながら見ていました。もちろん、自分がプレーする上でのいいモチベーションにもなりました」

 4年という長い準備期間に対し、晴れ舞台はほんの一瞬にすぎない。一瞬だからこそ、積み重ねた時間や思いがひとつひとつのプレーに反映されてくる。そんなことをひしひしと感じたようだ。

 柳田は今年度、全日本の主将を務めている。始動して約3カ月が経過しようとしているが、心がけているのは、「全員がコミュニケーションを取れるような状況を作る」のを意識することだという。世界各地で行われたネーションズリーグや国内合宿、韓国との親善試合などを経たことで、主将という大役も、特別肩に力が入ることなく務めているようだ。

「代表には自分より上手い人もいっぱいいて、そういう意味では勉強しながらやっていくという部分もありますね。主将だからすべてを引っ張らなくてはいけないわけではないと思いながらやっています。周りの人のおかげで、あまり気負いすぎずやれているなとは思います」

「ベスト8からが勝負かなと」

 取材での印象から、柳田はマイペースかつ軽やかに、飄々と重責をこなしているようにも見える。気負いとは無縁に見えるが、と伝えると笑いながらこう答えた。

「責任は感じてやらないといけないですけど、気負ってというのはあんまりないかもしれないですね。マイペース? そうかもしれません。人の話をあんまり聞かないですし(笑)」

 目下、最大の目標は9月にイタリア・ブルガリアで開催される世界選手権だ。全日本男子として同大会は2010年以来、2大会ぶりの出場となる。経験を重ねることがテーマだったネーションズリーグとは違い、少しでも上位に食い込むこと、結果を出すことを求めて戦う。

「(中垣内祐一)監督はベスト8とおっしゃっていますが、僕はそこからが勝負かなと。もうひとつ上の、ベスト4あたりを目標にしておかないといけないかなとも思います。目標は高い方がいいですし、優勝と言っても全然いいと思うんです。メダルを取りに行くという意味でも、もっと高い目標を掲げてチャレンジしていきたいですね」

 強気な意気込みをさらっと口にする。

 この秋、柳田は、主将として初めて勝負をかけた舞台に臨む。

文=了戒美子

photograph by Kiichi Matsumoto


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