トーレスがヤフオクドーム始球式も?ホークスとサガン鳥栖と鷹の祭典。

トーレスがヤフオクドーム始球式も?ホークスとサガン鳥栖と鷹の祭典。

 最初に断わっておくが、これは『野球のぼせもん』の連載である。

 ついに“神の子”がJリーグのピッチに降り立った。この夏にサガン鳥栖に新加入した元スペイン代表FWのフェルナンド・トーレスだ。7月22日、ホームのベストアメニティスタジアム(以下ベアスタ)で行われたベガルタ仙台戦で後半5分から出場してJデビューを果たした。

 いきなりの初ゴールとはならなかったが、随所に光るプレーを見せた。打点の高いヘディングもそうだが、なかでも後半26分に相手ディフェンダーを引きつけながら細かな動きの切り返しから鋭いシュートを放ったシーンは、日本人Jリーガーに足りないバランス感覚や体幹の強さのようなものを感じた。

 ところで本題だ。この試合でトーレスが着用していたユニフォームについて、である。

「鷹の祭典」とのコラボユニ。

 事前に情報を得ていたコアなサガン鳥栖サポーターはともかく、ライトなサッカーファンは「あれ?」と思ったのではなかろうか? サガン鳥栖のチームカラーは鮮やかなブルーとピンクだ。主にホームで着用する1stユニフォームは「チームの象徴カラーであるサガンブルーをベースに、サガンピンクの鋭角な斜めピンストライプを重ね、加速力を表現しています」(クラブ公式サイトより)。

 しかし、この日のユニフォームは白がベースとなっており、黄金のストライプ模様がデザインされているものだった。サッカーも好きな野球ファンは「これは……!」とポンと膝を打ったのではなかろうか。ホークスの毎年恒例となっている人気イベント「鷹の祭典」のデザインそのものだったからだ。

 じつは、このサガン鳥栖の試合は「鷹の祭典2018コラボスペシャルマッチ」と銘打って行われたのだ。

ホークスとサガンのタッグは5年目。

 ホークスとサガン鳥栖が手を組んで、もう5年目になる。

 '14年に両チームは「より多くの子どもたちに、スポーツの持つ楽しさ、面白さ、感動を味わってもらいたい」との共通理念から「サガン鳥栖×福岡ソフトバンクホークス スポーツキッズプロジェクト」を設立した。お互いが協力してスポーツ教室を行ったり、ホークスの試合時に野球だけでなくキックターゲットなどサッカーが体験できるイベントを行ったり、逆にベアスタで「ストラックアウト」を楽しむコーナーがあったりもする。

 この手の話を書くと、「福岡にもJのクラブがあるのになぜ?」との声が上がるが、今夏の補強を見ても分かるようにサガン鳥栖というクラブは積極果敢に物事を進めるクラブだ。

 ホークス側の担当者は「共通のチームスポンサーからの紹介で、サガン鳥栖さんと交流を持つようになりました。それで『スポーツキッズプロジェクト』が立ち上がったのですが、『鷹の祭典』でまでコラボをするようになって。最初は驚きました」と語る。

鳥栖の竹原社長が話していたこと。

 3年前だが、サガン鳥栖の竹原稔社長にインタビューを行ったこともある。当時このような話をしていた。

「九州でトップクラスの、日本でも有数のマーケティングやマーチャンダイジングを行っているプロ野球の、ホークスさんとコラボを出来るのは、我々としても魅力的な事です。しかし、最初から営業的なつながりを持つのではなく、スポーツキッズプロジェクトという形でスタートをしました。

 九州の子どもたちに夢や元気を与えるきっかけを作りたかった。そこを太くしながら前に進まないと、このいい関係が長続きしないと思ったからです。安易なチケット交流とかに走らずに」

 信頼関係を築き、それを深めていく中で実現した「鷹の祭典」コラボマッチ。毎年、ホークスが発表したデザインに合わせたユニフォームをサガン鳥栖の選手たちも特別に着用してプレーし、さらに来場者にはレプリカユニフォームが無料で配布される。

サッカーファンは“色”を大切にする。

 これがサッカーのサポーターの心も掴んだようで、初開催だった'14年7月23日(川崎フロンターレ戦)ではベアスタ史上最多の2万3277人の動員を記録。今年は1万7537人にとどまったが、悪天候だったことと、JR博多駅での落雷により鉄道がストップし観戦を断念せざるを得なかったファンが多数出たことが予想される(なおサガン鳥栖は、鉄道トラブルにより観戦できなかったファンのため返金、ユニフォーム引換を後日告知した)。

 それでも、前のホーム試合(5月20日、FC東京戦)の1万2163人を大きく上回る動員に成功した。

 ただ、サッカーは野球以上に、ファンがチームのカラーを大切にしている印象が強い。ブルーやピンクではないユニフォームを選手が着用すること、スタンドがその色で埋まることに対する挑戦的な試みだったといえる。

「大観衆が作り出すホーム感。歓声やどよめき、雰囲気、感動がスタジアムに連鎖するんです。我々としてもそのトライアルが最初は怖いところでしたが、そのポジティブな要素が、ネガティブを上回ったのではないかと感じています」(鳥栖・竹原社長)

背中にもビジネスチャンスが。

 また、レプリカユニフォームを来場客に配布するという企画は、Jの他クラブにも広がりを見せた。ただ、あるクラブでは「背番号12」を背面にプリントしたのだが、ビジネスの観点でいえば、これは大失敗。ホークスの場合、背面は無地のままだ。

 ユニフォームを貰ったファンは「タダで手に入ったし」とお気に入りの選手の背番号や背ネームを入れるために、その素材をグッズショップで購入し加工コーナーに並ぶ。「世界で自分だけのものを」とデコレーションを施すファンも多い。

 一方でサガン鳥栖は5社のスポンサーロゴを並べている。この方法もプロスポーツビジネスの一例だといえる。

 ホークスとしては、ヤフオクドームで開催する年間主催公式戦数は65試合程度であり、その数が劇的に増えることは考えにくい。ならばプロ野球の枠組みを超えたところで新しい分野に挑戦していかなくては、ビジネスは成長しないと考えている。

日本のスポーツ界を刺激するフックに。

 22日の試合を視察したJリーグの村井満チェアマンも「レプリカユニフォームもそうですし、両チームのキャラクターがピッチサイドでコラボしたりして、ホームタウンで楽しんでいる様子がよく分かりますね。サッカーとか野球とかの問題じゃなくて、スポーツをともに盛り上げていく風景を見たような思いでした」と語った。

 この良好な関係が末永く続くことを期待するとともに、地方で生まれたこの取り組みが日本のプロスポーツ界を刺激するフックとなれば面白い。

 また、サガン鳥栖の選手は、毎年ヤフオクドームに始球式に訪れている。フェルナンド・トーレスがヤフオクドームのマウンドから投げる姿をぜひ見てみたい。

文=田尻耕太郎

photograph by Yusuke Nakanishi / AFLO Sports


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