甲子園ブラバン応援を語り尽くす!“マニアック過ぎる”同級生対談。

甲子園ブラバン応援を語り尽くす!“マニアック過ぎる”同級生対談。

記念すべき100回目の夏の甲子園が、いよいよ始まる。『高校野球を100倍楽しむブラバン甲子園大研究』の著者で、高校野球ブラバン応援研究家の梅津有希子と、幼少の頃から甲子園に通い、新聞業界随一の応援好きとして知られる朝日新聞スポーツ部・山下弘展記者は、ともに1976年生まれ。元ブラバン少女と元野球少年という違う世界で育ってきた2人が、甲子園という聖地でクロスし、マニアックすぎる応援談義を繰り広げた――。

梅津「山下さんは、わたしの知っている新聞記者の中でも相当な応援マニアですが、いつからブラバン応援を聴いていたんですか?」

山下「夏の甲子園は幼稚園の頃から野球好きな親に連れられて毎年観に行っていて、その頃から音楽とセットで試合を観ていました。岡山生まれですが、まだ小さい頃に甲子園に近い西宮市に引っ越してたので、甲子園はとても身近な存在だったんです」

梅津「今年から有料になりましたけど、外野席が無料でしたもんね」

山下「夏休みに、金のかからない最高のレジャーだったんですよ(笑)。近所の人たちは、自転車に乗って“5号スパン(甲子園近くの高架下)”に停めて試合を観る、みたいな感じでした。今は停められなくなってしまいましたけど」

梅津「野球はいつから始めたんですか?」

山下「小2から高校までやっていました。大学時代はアメフト。高校野球の取材がしたくて、朝日新聞を受けたんです」

「天理の応援は今も変わっていません!」

梅津「子どもの頃、印象に残っている応援はありますか?」

山下「天理が好きでした。天理の応援は今でもまったく変わっていません。点が入った時の『ファンファーレ』に『ワッショイ!』。あとは3曲をローテーションで演奏する。曲数が少なくて覚えやすいのもよかったです」

梅津「『オブラディ・オブラダ』、『オーラ・リー』、『Our boys will shine tonight』(『セントポール』と呼ばれることも多い)のローテーションですよね」

山下「どれも子ども心に聴いたことのあるなじみ深い曲ばかりで、シンプルで好きでした。記者になってから、曲数が少ないことに意味があることを知って。『吹奏楽コンクールと時期が重なって、現役生が来られずOBに頼むことも多いから』と聞き、なるほどと思いましたね」

梅津「夏の甲子園とコンクールって、時期が完全にかぶるんです。試合とコンクールが同じ日になることも少なくなく、吹奏楽部は苦労しながらアルプススタンドに駆けつけています」

天理は吹奏楽界のレジェンド的存在。

山下「梅津さんはいつから吹奏楽を始めたんですか」

梅津「中学校からです。当時から天理の演奏が大好きで、ラジカセで天理の演奏を聴いてから寝るような子どもでした。天理は吹奏楽界のレジェンド的存在で、特にわたしの中高時代は全国大会金賞常連校。全国の吹奏楽部員が憧れの学校だったんです。野球も強いということは知りませんでした(笑)」

山下「梅津さんの母校も全国大会に出てたんですよね」

梅津「はい。札幌白石高校で、天理と一緒に全国に出ていました。天理、習志野、富山商業、常総学院、春日部共栄、愛工大名電、大阪桐蔭など、吹奏楽と野球の両方が強豪という学校がけっこうあって、『彼らは甲子園でどんな応援をしているんだろう』と思ったのが、ブラバン応援にハマッたきっかけのひとつです。わたしの母校は、当時は野球部が強くなく、応援に行った経験が一度もありません。初めて甲子園に行った5年前、『コンクールで忙しいこの時期に、彼らはこんなことをしていたのか……!』と衝撃を受けましたね。わたしはコンクールで金賞を取ることばかり考えていた高校時代だったので」

試合前に応援が記事に……画期的!

山下「白石、今年8年ぶりに南北海道大会出ましたね」

梅津「そうそう、しかも初戦から駒大苫小牧と当たってしまって。駒苫の応援も大好きで、母校と当たるとなれば、これは行かねばと。ちなみに、円山球場行ったの今回が初めてです」

山下「ええ〜!? 行ったことなかったんですか!」

梅津「ないですよ! だって学生時代は野球に興味がなかったので……じゃあ、山下さんは朝日新聞に入るまで、吹奏楽のコンクール観に行ったことありますか?」

山下「ないです(笑)。入社してから取材で初めて行きました(朝日新聞社は全日本吹奏楽コンクールの主催団体)」

梅津「それと一緒ですよ(笑)。白石対駒苫、山下さんが試合前日に『北の大地、ブラバン対決も熱い「札幌白石VS駒大苫小牧」』という記事を書いてくれたんですよね」

山下「組み合わせが決まった瞬間、『キター!!!!』と思いました(笑)。これは記事にせねばと」

梅津「正直、5回コールドでボロ負けすると思っていたんです。そうしたら意外にも大健闘で、2−3で惜敗。吹奏楽部の後輩たちと一緒にスタンドで応援してて、胸がいっぱいになりました」

山下「あれは今夏のハイライトでしたよ! 『駒苫は次の試合で北海にコールド勝ちしたので、実は白石は2、3番目に強かったんじゃないか』とね」

梅津「それにしても、試合前に応援が記事になるって、すごい画期的なことだと思いました。さすが新聞業界随一の応援マニアだなと(笑)」

野球取材しながら、耳だけは応援曲に。

山下「甲子園取材は、いつもバックネット裏の記者席にいるんですけど、試合の取材はもちろん、公式記録担当の時でも、耳は応援を聴いていました。ブラフマンが好きだったので、『SEE OFF』が出てきた時は衝撃的で」

梅津「茨城県の日立一高発ですね」

山下「記録を付けながら、何校演奏しているか正の字で付けたりしてました。僕と同じくブラバン応援が大好きなスポーツ報知の加藤弘士記者と、『今年、『SEE OFF』22校やってたね〜』と共有し合っていました」

梅津「加藤さん、お会いしたことありますけど、山下さんと加藤さんは、新聞業界の応援好き2トップだと思います(笑)」

山下「『SEE OFF』、僕が今いる北海道でも多くの学校が応援に使っているんですけど、どこかの学校が、元祖の日立一高が歌っている歌詞をそのまんま歌っていたんです」

梅津「『さあ 燃えろ 白堊の球児達〜』から始まる替え歌ですね」

山下「そうそう。白堊とは、日立一高の旧校舎が真っ白な洋館で、そのことを表現した言葉なんです。つまり、白堊=日立一高なわけで、『お前らの学校は白堊じゃないだろ!』と憤りながら聴いてました(笑)」

梅津「高校生はそこまで深くは考えないでしょうねぇ……」

「同志がいた!」「この人に会いたい!」

山下「こんな感じで記者席でいつも応援に耳を傾けていたもので、10年以上前、『応援のことを書きたい』とデスクに提案したことがあるんです。でも、『そんな記事誰が読むんだ』『お前の趣味を紙面に持ち込むな!』と一蹴されまして(笑)。今はうちも他紙も応援の記事が増えて、『それ見たことか!』と……(笑)。応援がこんなに注目されるようになったのは、梅津さんの本がきっかけでしょうね」

梅津「今回の文庫は、2年前に出した単行本に大幅加筆したものですが、単行本はどこでみつけてくださったんですか?」

山下「芦屋の書店で平積みされてて、『なんだこれは!?』『すげー細かい!』と衝撃を受けました。そして、『同志がいた!』『この人に会いたい!』と(笑)。僕も甲子園取材の時、記者席で試合を観ながら、気になる曲があると5回のインターバルでアルプススタンドに走り、吹奏楽部の顧問の先生に『さっきやっていたのは何という曲ですか?』『いつからやってるんですか?』といった質問はしていました。でも、梅津さんの本は、アプローチの仕方が全然違った。楽器の編成とか楽曲のルーツとか、吹奏楽経験者じゃないとわからないことばかりで、かゆいところに手が届く本でした。得点時に多くの学校が吹く天理の『ファンファーレ』に原曲があったなんて、考えたこともありませんでしたから」

PLの名物曲は佐久長聖へ……。

梅津「天理の『ファンファーレ』は、『マクシンカッキー序曲』(リチャード・ボウルズ作曲)のワンフレーズがベースです。60年近く前から使い始めて、今では日本中の学校が演奏していますね」

山下「阪神タイガースもやってる」

梅津「あの曲が天理発と知った時は、ほんとうに驚きました。野球に疎いわたしでも知っている曲だったので、『野球の曲』だとばかり思っていました(笑)。それが、まさか天理発祥だったとは。吹奏楽界のレジェンドは、野球応援でもレジェンドだったのかと」

山下「野球少年とブラバン少女の両方が天理に憧れていたって……おもしろいですよね。僕はPL学園も大好きだったんですけど、あの有名な応援曲の『ヴィクトリー』を中学生が作曲したと本で知り、びっくりしました」

梅津「原曲は『ボイジャー』という曲で、もともとエレクトーンの曲なんです。ヤマハが開催する『ジュニアオリジナルコンサート』というコンサートがあって、ヤマハ音楽教室で学ぶ子どもたちが、自ら曲を作って演奏するんですけど、あの曲は中学生の女の子が作った曲なんです。わたしは札幌時代、ヤマハで楽器販売の仕事をしていて、よく店内でこの曲がかかっていたんです。PLの応援動画を見た時、『あれ? エレクトーンの曲だ』と不思議に思っていたんですよ。PL学園の野球部が無くなって『もう甲子園で聴けることはないんだなあ……』と思っていたら、2016年夏、佐久長聖アルプスから『ヴィクトリー』が聴こえてきて……」

山下「僕も最初空耳かと思いましたよ! そして『ああ、藤原(弘介)監督がPL出身だからか』と。継承してくれたんですね」

梅津「まさか甲子園で聴けるとは思っていなかったので、びっくりして涙が出ましたよ……」

100回記念大会の注目応援は?

梅津「山下さんが今回注目している応援はありますか?」

山下「北照のゆるい『北酒場』。一杯ひっかけて帰りたくなるゆるさがいい。試合を見終わったあとに、三宮の森井本店で飲みたくなる(笑)。慶應の応援も大好きで、特に『烈火』は必聴。応援スタイルは慶應大学と同じですが、『烈火』は塾高のために作られた曲なので、神宮球場では聴けません」

梅津「『シリウス』を作った慶應大学OBの弁護士、中谷寛也さんの曲ですね」

山下「花咲徳栄の『オーメンズ・オブ・ラブ』も好きです」

梅津「T-SQUAREの! ファンだったんですか?」

山下「いえ、昔、小泉今日子が歌っていた『ウィンク・キラー』という曲が、『オーメンズ』に歌詞をつけた歌だったんですよ。それが記憶にあったので、中学生の時に吹奏楽部が演奏しているのを聴いて、『キョンキョンやん!』と思ったら、原曲が『オーメンズ』だったという」

梅津「キョンキョン歌ってたの知らなかった! 『オーメンズ』は、吹奏楽の演奏会でも人気の曲で、特に埼玉県の吹奏楽部がよく定期演奏会でやっています』

野球部が考えた歌詞付きのラップも!

山下「愛工大名電は、得点時に演奏する『さくら』。今年は打撃のチームらしいので、さくら乱舞になるかも。星稜の『星稜コンバット』と龍谷大平安の『怪しい曲』は、伝統校の安定感。過去の試合がよみがえります。市立尼崎は、東兵庫大会の決勝で負けた悔しさを、興南の応援で晴らしてほしい」

梅津「どんどん出てくる(笑)。市尼、毎年沖縄代表校の応援を担当していますもんね。甲子園に出て、いつか沖縄代表と当たってほしいです。吹奏楽部の羽地(靖隆)先生が、『部員ようけおるから、その時は2つに分けて母校と沖縄の高校の両方応援する』と言っていました」

山下「それはぜひ観てみたい!」

梅津「5年ぶりに出場する日大三高の『Come on!!』や、浦和学院の『浦学サンバ』も楽しみです。前橋育英の『RUN and GO』もカッコいいですよ。グロッケン(鉄琴)が多いのも特徴です。今年の選抜でフルリニューアルした近江の応援も要注目。洋楽メドレーで、ピットブルの『Fireball』とかやりますよ。野球部が考えたラップの歌詞付きという斬新な応援です」

山下「絶対観たい! 初出場校の応援も気になりますね。白山は吹奏楽部が10人いないようですけど、吹奏楽部は少なくてもいいんです。地元の人がいっぱいアルプスに集まって、選手たちにパワーを届けてほしい。ふるさと大移動、みたいに。アルプスでたくさんの懐かしい再会があるんだろうなと思います。僕は転勤の多い家だったので、故郷がどこなのかいまいちわからないのでうらやましいです」

梅津「さすが新聞記者っぽい視点」

山下「甲子園は、郷土を感じられる数少ない場所でもありますから」

「高校生はやっぱり流行りの曲も……」

梅津「近年の応援曲は、SNSで動画が一気に拡散されて、多くの学校が採用するというケースが大半です。今人気の『アゲアゲホイホイ』や『ダイナミック琉球』がまさにそうで、全国各地の学校の応援が画一化してきている」

山下「湘南乃風の『SHOW TIME』とかもそうですよね。どこも似たような応援になってきているからこそ、天理のようなオリジナリティや郷土色を出してほしいですね」

梅津「この間、天理高校の生徒らしき人から、ツイッターで『天理の応援曲を増やしてほしい。言えるのは梅津さんしかいません!』とダイレクトメッセージが来たんです(笑)」

山下「(大笑)」

梅津「『応援曲は、多ければいいってものじゃない。天理の応援がいかに素晴らしくてファンが多いか』という旨を返信したんですけど、その後返事がありません(笑)」

山下「あの応援のよさは、卒業してから実感するのかもしれませんね。でも高校生はやっぱり流行りの曲もやりたいでしょうしね」

郷土色豊か『ねぶた節』、『ハイサイおじさん』。

梅津「今、郷土色を感じる応援は、青森山田の『ねぶた節』と沖縄代表校の『ハイサイおじさん』と指笛応援くらいですかね」

山下「『ねぶた節』かっこいいですよね。僕も大好きです。野球部の『ラッセーラー ラッセーラー』というかけ声がまたいい。ぜひ、こういった郷土色のある応援が増えてほしいですね」

梅津「吹奏楽部の野球応援は、素晴らしい日本の文化。これからもずっと、末長く続いてほしいです。山下さん、今日はマニアックな話が出来て楽しかったです!」

山下「こちらこそ話が止まらなくてすみません(笑)。また甲子園でお会いしましょう!」

梅津有希子(うめつ・ゆきこ)

北海道出身。編集者・ライター、高校野球ブラバン応援研究家。漫画・映画『青空エール』(河原和音)監修者。中高を吹奏楽の強豪校で過ごし、ファゴットを担当。札幌白石高校時代に「吹奏楽の甲子園」こと普門館で開催された全日本吹奏楽コンクールに出場し、3年間連続金賞を受賞する。ヤマハ勤務(管楽器担当)ののち、FMラジオ局、編集プロダクションなど経て独立。“吹奏楽×応援”というジャンルの可能性と楽しみ方を追求している。

山下弘展(やました・ひろのぶ)

岡山県津山市出身。1999年、朝日新聞社入社。富山、大津総局の後、2004年からスポーツ部。プロ野球・中日、アマチュア野球、高校野球キャップなどを経て、2016年からプロ野球・日本ハムファイターズ担当。定期的に渡米して、エンゼルスに移籍した大谷翔平の取材も続けている。生まれてすぐ兵庫県西宮市に転居したため、3歳のころから高校野球好き。

文=梅津有希子

photograph by Yukiko Umetsu


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