重信慎之介、3年目の開花は巨人の“組織的肉体改造”から。

重信慎之介、3年目の開花は巨人の“組織的肉体改造”から。

「まだまだ本当の成果は分からない。でも狙っていることの一部は出てきていると言えるかもしれないね」

 巨人の鹿取義隆GMは慎重に言葉を選びながらも、手応えを感じていた。

 7月31日のDeNA戦。ベテランの内海哲也投手の4年ぶりの完封劇に沸いた試合だったが、その左腕を援護した打線にちょっと目を引く選手がいたのだ。

 早大からドラフト2位で入団してプロ3年目を迎えた重信慎之介外野手である。

「1番・センター」で先発すると1回の第1打席で中前に抜ける安打を放って2番・吉川尚輝内野手の二塁打で先制のホームを踏むと、2回にも中前安打。8回の右前タイムリーを含めて3安打の猛打賞で今季、そこまでの打率を4割3分5厘へとはね上げた。

 50メートル5秒7という俊足。巨人では2016年限りで引退した鈴木尚広外野手の後継者として期待されての入団だった。ところが昨年は開幕一軍を勝ち取ったものの、早大で同期の楽天・茂木栄五郎内野手の活躍を横目にプロの洗礼に苦しんだ。

 8月6日の中日戦では1死一、二塁から外野フライで一塁走者として二塁を回りながら二塁ベースを踏まずに一塁に戻ってアピールアウトとなるという失態を演じるなど苦い経験をした。

栄養管理士導入でチームごと肉体改造。

 大学の先輩でもあるヤクルト・青木宣親外野手の打撃スタイルを目標に掲げてスタートした今季は、故障などもあって開幕は二軍スタートだった。

 そうして6月14日にようやく一軍昇格を果たしたとき、去年とは見違える肉体で周囲を驚かせたのである。

「体重は6キロ増えました。ただ体脂肪は逆に少なくなっています」

 実は今年から巨人は選手のパフォーマンス向上を狙ってコンディショニングと肉体改造のために本格的な管理栄養学を導入。昨年までは月に2、3度ほど食生活についてのアドバイスを行なっていた管理栄養士を常時帯同して栄養バランスのチェックと栄養学に基づいた選手の肉体改造に取り組んでいるのだ。

楽天ではすでに成功事例が。

 管理栄養学による選手の食事管理は、数年前からすでに楽天など数球団が導入。楽天ではモデル選手として島内宏明外野手などが取り組み筋肉量の目安となる除脂肪体重を大幅にアップ。一昨年のドラフト1位・オコエ瑠偉外野手も、入団1年で大きく肉体改造に成功するなどの成果を見せていた。

 巨人では今年からジャイアンツ寮やジャイアンツ球場などの二軍施設だけでなく、一軍も遠征先の食事はもちろん東京ドームでの試合前後の食事メニューなどもタンパク質の摂取量を多くした内容に全面的に改革。

 試合終了後には疲労回復を助けるミネラルやビタミンを豊富に含んだ内容の食事を用意し、寮生や1人暮らしの若手選手ばかりか、単身赴任中の上原浩治投手らも、球場で食事を済ませて帰宅するようになっている。

目指すは「身体を大きくすること」。

 この食生活の改善と計画的なトレーニングメニューで狙っているのは、簡単に言えば身体を大きくすることだ。

 しかも脂肪ではなくバットを振ったり体幹を支える筋肉量を増やすための食事とトレーニングメニューが中心になるわけだ。

 ただ、入団時のサイズが173センチ、70キロと一般人並み、野球選手としては痩せ型だった重信が意識的に行ったのは、とにかくまず体重を増やすことだったのだという。

「そのために無理して丼でご飯を3杯食べています。最初の頃は3杯目がなかなか食べられなかったんですけど、最後に卵かけご飯にして流し込むと意外と食べられることがわかったんで、しっかり食べきっています」

 その成果が6キロ増えた体重だったのだ。

 その上で並行して筋トレを徹底して行った結果、全体で6キロ増量のうち、除脂肪体重の増加量が4キロとしっかり筋肉質の身体にモデルチェンジは進行している。

 その成果がグラウンドでも出始めているということなのである。

「体幹が強くなったという実感」

「とにかく軸がしっかりして、インパクトが強くなったのが、重信のバッティングの一番変わったところ」

 こう評したのは吉村禎章打撃総合コーチだ。

「体幹が強くなったという実感はあるので、それが軸の強さにつながっているのではないかと思います」

 本人も手応えを口にする。

 重信のようなタイプの選手が筋肉量を増やして体重を重くすると、しなやかさを失い肝心のスピードが落ちてマイナスが出るのではないかという指摘もある。しかし、重信の場合はそういう弊害もなくスピードを維持しながらのパワーアップに成功した。チームとして取り組んでいるパフォーマンス向上の好例となりそうだ。

高橋監督も喜ぶ若い1、2番の活躍。

「パワーをつけたからスピードが失われるということはない」

 改めてこう指摘するのは鹿取GMだ。

「それ以上に筋肉量が増えることでいろんなパフォーマンスの向上が期待できる。軸がしっかりしてインパクトが強くなることで打球速度が速くなるというデータもある。そこも狙いの1つで、もちろん本人の努力が一番。ただ、彼の活躍はチームとして取り組んでいることの1つの成果と言えるかもしれない」

 このDeNA戦では2番の吉川も3ランを含む3安打の猛打賞と若い1、2番コンビで6安打6打点の大活躍。

「若い2人で今日みたいな持ち味を出したというか、そういった活躍、結果を残してくれて本当にチームとして嬉しいね。(重信は)ここのところどちら(の方向)にもしっかりコンタクトできているというかね。状態がいいのかなという感じはある」

 試合後の高橋由伸監督はこう目を細めた。

攻撃的「2番」が巨人の切り札に!?

 ちょうど1年前。

 このコラムで「重信が2番に定着すれば巨人の野球に革命が起こるかもしれない」というある球団関係者の証言を書いた。

 結局、去年は力不足で2番は最終的にはケーシー・マギー内野手が座ることになったが、吉川が8月2日のDeNA戦で左手首を骨折して戦線離脱したことで、坂本勇人内野手が復帰すれば1番・坂本、2番・重信というオーダーが現実味を増してくる。

 俊足を生かしてバントではない攻撃的な2番像は、Aクラスサバイバル戦となりつつあるセ・リーグ後半戦の巨人の切り札になるかもしれない。

文=鷲田康

photograph by Kyodo News


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